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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

[速報!]  大川小 最高裁 決定(2)

2019年11月03日 | 大川小学校(訴訟)

大川小訴訟 最高裁決定の意味

決定は言うまでもなく大川小学校犠牲児童の損害賠償訴訟であり、避難準備の懈怠を理由に原告勝訴とした仙台高等裁判所の判決を是として石巻市と宮城県の上告を退けたものである。しかし、長期にわたる訴訟の結審から得られるものは学校現場の避難問題に停まらない。

 

 

命(いのち)のあり方、避難準備のあり方、防潮堤の意味

二審判決のポイントを詳細に見れば、学校に限らない津波防災の一般的な事前準備のあり方が明確に示されているのである。それは津波防災に於ける国、行政、一般市民の規範とするべき対象津波の規定であるといえよう。すなわち「過去最大規模の津波」が津波防災の基準になる(べき)という事である。大川小訴訟においては被告の東日本津波以来のはやり言葉「想定外」がその弁明であったが、第二審においては裁判長はそのイージーさを叱りつける形で学校側、石巻市、宮城県の自治体行政の懈怠(けたい=怠慢)として明確に判決に述べた。その時の具体的根拠になったものは宮城県沖地震の想定津波(2004年策定)であったが、それは「想定」であっても、現に生きて広く警告を発していた「過去最大規模」の津波であったのである。あたかも南海トラフ津波の警告のようなものであった。それに備えるべきであった。大川小訴訟決定判決のいかにも厳しい、それだけに、一般的に巾の広い意味を持っている第二審判決の見解と言える。

 

前ページ(1)から繰り返し引用する次の第二審の判決の文言の一般的な意味をよくよく理解してほしい。将来長く津波災害の損害賠償事案の判例になるものです。

河北新報(2018.5.8)

 

ここで、予見すべきだったのは「東日本大震災」の津波ではなく、となっているが、それは未来は予め予見する事ができない事の意味と、その事を逆手に一貫してエクスキューズを求める行政側の主張を厳しく突き放し糾弾している。同時に事前準備するべき対象基準津波は、具体的な過去(に公表され想定されていた)最大級の「宮城県沖地震」で発生する津波としている。

まさに(今後の事として)、東日本大震災以降の未来の津波予見または津波防災対策は、過去最大規模の東日本大震災津波、また、すでに公表されている南海トラフ地震津波、北方圏震源最大クラス津波等が、対象基準津波となる。防災対策のためのスタンダード津波という事だ。現行防潮堤の対象基準とされてきた明治、昭和津波(L1レベル)は、将来の防災の基準にはなり得ない。

国、および沿岸自治体にとって、今回の最高裁判所の大川小訴訟の決定は、これまでの地震、津波対策を見直す、というより、特に東北の大震災被災自治体にとっては、すべて振り出しに戻して最初からやり直すほどの司法的インパクトを与えている。気づいていない向きもあろうが、まさしく画期的事態なのである。今後の研鑽が大事になる。

 

 

 

<参考記事>

 

 

大川小の津波訴訟 石巻市と宮城県の上告棄却 最高裁

 

東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童23人の遺族が訴えた裁判で、最高裁判所は石巻市と宮城県の上告を退ける決定をし、14億円余りの賠償を命じた判決が確定しました。

最高裁は、震災前の学校と行政の防災対策に過失があったと認めた判断を維持し、今後、全国の教育現場の防災対策に影響を与えるとみられます。

宮城県石巻市にあった大川小学校では、74人の児童が津波の犠牲になり、このうち、児童23人の遺族が石巻市と宮城県に対し、22億6000万円余りの賠償を求めました。

1審の仙台地方裁判所は、「広報車の避難の呼びかけを聞いた段階で、津波が来ることを予測できた。教諭らの避難誘導に過失があった」として、市と県に賠償を命じました。

一方、2審の仙台高等裁判所は、「学校は事前に避難場所や経路などを定める義務を怠った」として、1審よりもおよそ1000万円多い、14億3000万円余りの賠償を命じました。

津波で犠牲になった人の遺族が自治体などを訴えた裁判で、震災前の防災対策の不備を理由に賠償を命じた判決は初めてでした。

これについて、市と県が上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は、11日までに上告を退ける決定をし、市と県に賠償を命じた判決が確定しました。

決定は上告理由に当たらないとし、5人の裁判官の全員一致の意見となっています。


最高裁が震災前の学校と行政の防災対策に過失があったと認めた2審の判断を維持したことで、今後、全国の教育現場の防災対策に影響を与えるとみられます。

 

「事前防災」 全国に影響か

今回、最高裁の判断が全国の教育現場の防災対策に影響を与える可能性があるとして注目されていたのは、2審の判決が、学校や行政に対して、ふだんから高いレベルの防災対策に取り組む義務があるとしたからです。津波からの避難をめぐり、遺族が学校や勤務先などに賠償を求めた裁判で、大川小学校の裁判の2審判決はほかのどの判断とも異なり、注目されました。

【2審判決の特徴1 事前防災】

2審判決の1つ目の特徴は、「震災前の防災対策に過失があった」と判断したことです。大川小学校をめぐる裁判の1審判決や、そのほかの津波の避難をめぐる裁判の判決では、「地震が起きてから津波が来るまでの対応」に過失があるかどうかによって、賠償責任が判断されてきました。一方、2審判決は、震災前に、津波の予測や小学校の立地を詳細に検討すれば津波の危険性を予測するのは十分可能だったとしました。そのうえで、震災前に危機管理マニュアルで、避難の経路や避難方法を定めておくべきだったのに怠ったと指摘しました。

【2審判決の特徴2 児童の安全確保義務】

このように、学校側に高いレベルの防災対策を求める前提としたのが、学校には、「学校保健安全法」によって児童の安全を確保する義務があると、明確に判断したことです。これが2つ目の特徴です。校長や教頭らは、義務教育で児童を預かる以上、一般の住民よりも防災に対してはるかに高い知識や経験が必要だとしました。大川小学校が津波ハザードマップで浸水予想区域に含まれていなかったことについて「児童の安全に直接関わるため、独自の立場から信頼性を検討すべきだった」などと指摘しています。

【2審の特徴3 行政にも責任】

3つ目の特徴は、校長など教育現場だけにとどめず、教育委員会や行政の防災担当部局の関与にまで踏み込み、「市の教育委員会は学校の対策に不備があれば指導すべき義務があるのに怠った」と指摘したことです。

【全国の学校現場に影響か】

こうした2審の判断を最高裁が維持したことで、学校側の事前の防災対策が足りないと、災害で被害が出たときに賠償責任を負うケースがあることが明確になったと言えます。今後、全国の教育現場に影響を与える可能性があります。児童や保護者にとっては子どもたちの安全確保に重きを置いた司法判断で、学校や行政がどのように受け止め、対策が進められるかが注目されます。
 
 

ほかにも「津波避難訴訟」相次ぐ

(以下略)

2019年10月11日 17時00分

 

 

 

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