GITANESは必ず礼服のポケットにも入れていた。
それとは無関係に・・・。
フォーマルスーツ、普通に暮らしている普通の人の場合、
つまり私もそうなのだが、フォーマルスーツというと
略礼服のことを指している。
普通でない人の場合、それこそたまに宮廷に呼ばれたり
侯爵邸に出向くという身分の人にとってはフォーマルウェアと
いうと、シーンに応じてかなりのバリエーションがある。
まあ我々はそんなこと考えなくてもいい身分だから
気楽なもんである。
黒い略礼服には、スーツコーナーに並んでいるブラックスーツ
とは異なる生地が使われている。専ら礼服用の黒い生地という
ものがある。
だから、黒いスーツであっても略礼服を着て会社に出勤する
のはおかしい。
逆に、スーツとして普段使用しているスーツ(礼服用の生地
ではないもの)で葬儀に参列してもおかしくはない。
ルール違反でもない。おかしくはないものの、大勢の略礼服を
着た人の中に普段の黒スーツを着て紛れ込んだら、かなりの
確率で目立つ。悪目立ちする。
それでも平気なら問題ない。
大体普段のビジネスで黒スーツを着ている方がおかしいので
あって、チャコールグレーやダークブルー(一般的にはネイビー
とか紺などと呼ぶ)を着た方がいい。絶対的にカッコイイ。
そして冠婚葬祭、特に葬儀関係のために1着略礼服を仕立てて
おけばオトナとして大丈夫である。
就職のときのスーツ選びで服屋さんに「この黒いスーツは
いかがでしょうか。これ一着あればビジネスも冠婚葬祭もOK
ですから便利ですよ」と言われた経験があるかもしれないが
それは嘘だ。そう言えば確実に売れるから手っ取り早い。
接客が面倒だったのかも知れない(それで礼服一着売り損ねる
ことになるのだが)。
また黒スーツをそのように売りさばいていれば、もともと
不良在庫化しにくい商品なので、服屋チェーン店が一斉に
右に倣えでプッシュし始めたのだろう。現在ではリクルート
スーツの主流は黒だという。
そうなったのは服屋の怠慢か服屋の戦略である。
さて、男女問わず礼服を久しぶりに着る際に
「あ、キツイ!」と感じることが多いだろう。
当然衣服が年々小さくなる訳がないのだから、貴方が年々
大きくなっているだけのことだ。
洋服がクローゼットの中で勝手に縮むことなどない。
10日で0.5mm、ウェストや胸囲が大きくなるとして
年間で1.8センチ大きくなる。例えば3年ぶりに着る礼服は
3年前の貴方より5センチほども小さく感じる。
5センチともなると1サイズ以上の変化だ。
そりゃキツイだろう。
さて、色々書いている私も洋服屋の人間である。
階下にはオーダーメイドのサロンもある。
カツカツと階段を下りて行ってサロンに座り、たくさんある
前寸表(過去に作った服の設計図)をもとにフィッターと
話をしながら採寸しデザインを検討する。所要時間は
30分~1時間程度。
慣れているからその時間で済むのか、いろいろ拘るから
そんなにかかってしまうのか分からないが、まあそれぐらい
時間をかける方がいいとは思う。
オーダーメイドに慣れていない人は「採寸たったの5分」
などと喧伝する洋服屋に魅力を感じることもあろうが
ロクなことにはならないから、やめたほうがいい。
階下に降りていき、今回は20分程度で済んだ。
生地選びの時間がほぼなかったからである。
なぜかというと、略礼服の注文だからだ。
なぜ略礼服の注文をしたのかというと、
知らぬ間に「服が勝手に縮んだ!」からである。