the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 



GITANESを吸う場面はそれなりに覚えている。
それとは無関係に・・・。

夕方、というか夜の入り口。
今から夏のシーズンで
もう太陽は沈みかけこれからマジックアワーに
突入か、というような明るさ。
先日そのような時間帯にクルマで走っていたら
突然、
「風呂上りでまだ汗も引かない状態で、この時間帯
外をぶらぶらと歩いたらこれ以上ないほど気持ち
いいよな」と思いついた。
緩い服装で靴下ももちろん履かずサンダルの足元で
それほど涼風も吹いていないが、熱い身体を少しずつ
少しずつ冷ますほどの気温で、まだまだ明るくて
そういう状態で屋外のどこかに腰かけて
決してスマホではなくて少し本を読む。
下手をすると散歩で汗をかいてまたシャワーを
なんてことにもなる可能性もあるが、そんなこと気にせず
少しの散歩をする。
往復でも1キロ未満の散歩である。

これが「気持ちよかろう」と感じるのは、どこかに
そのような記憶があるんだろうか、と考えたが
高校一年までは銭湯通いをしていたから、その帰りの
記憶なのか、稀に行った旅行先での経験がもとに
なっているのか。
銭湯といっても、そんなに明るい時間帯には行ってない
はずだが、オヤジや兄と連れだって銭湯まで歩いていた
ずっと子供の頃ならあったような気がする。
と書いていたら、そうだそうに違いないと思えてきた。

あまり早足で歩くとまた汗をかくからと、ゆっくりゆっくり
歩くようにオヤジに言われ、カサカサとサンダルを鳴らしながら
歩く。
その地域では比較的大きい寺の門前を曲がり、
お茶屋(茶葉を売っている店)の角も曲がる。
そこからはちょっとした商店街になっていて、薬店、
帽子屋、おもちゃ屋、金物屋の前を通過する。
生地屋、うどん屋、文房具屋も通り過ぎる。
鉄砲・火薬店というのもあった。洋品店も2,3。
粉屋と呼ばれる食材屋は米も売っていた。
散髪屋が二軒。洗剤だけ売っている店、和菓子店、
家電店(パナショップ)があって、洋菓子店もあった。
パン屋も布団屋も通り過ぎる。
小さい小さい靴屋があって、小さい小さい靴屋だが
店主は大きい大きい男だったが、とにかくその靴屋を
左に曲がる。
家はもうすぐそこだった。

うまくゆっくり歩けたから汗はひいた。
でも素足にサンダルだったから足はもう汚れていた。
「コラ!ちゃんと足を拭きなさい!」と母に怒鳴られるが、
そんなことはもう慣れっこになっているから
適当にいなす。
そんなことよりも冷蔵庫を開け、麦茶を一杯
一気に飲む。

そのころのオヤジも母も、今の私よりずっと年下だったのに
今でも自分の方が若いと思ってしまうのはどういう訳か。


後に少し離れたところにショッピングセンターができ、
小さい商店街からもそっちへ何軒かの店が移っていった。
そしてそのショッピングセンター自体も、自分が大人になり
その町を離れてしばらくしてから撤退した。
商店街はそれよりもずっと前にみな 店じまいして
今では普通の路地があるばかりである。

汗をかかないようにゆっくりと歩いていた頃は
もちろんマジックアワーなどという言葉も知らなかった。
そんなものより銭湯で売っているジュースを飲みたいのに
それを我慢して歩き、小さい自宅の小さい冷蔵庫を開けて
急いで飲む麦茶が世界でいちばんうまい飲み物だった。

そんなに冷えていなかったけど、美味かった。











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