GITANESのパッケージの彼女が踊っているのは
絶望したからである。
それとは無関係に・・・。
イシカワ「ではそのようにさせていただきますので、
今後ともよろしくお願い申し上げます」
私「こちらこそ、よろしく。お手数おかけして申し訳ないです」
電話を切った。
こちらの言い分が100%聞き入れられたことでもわかるように、
やはり最初の先方の提案がそもそもおかしかったのだ。
それにしてもNTTなんとかサービスセンターの担当者の
対応はかなりいい感じだった。
やるではないかイシカワさん。謝るべきところをまず謝り、
その後すぐにどうするのかを提案する。
その提案も痒いところに手が届くような内容で、
まったく立派なものだ。
やっぱり天下の大企業はちょっと違うのだ。さすがだ。
おっと、一つ言い忘れた。
すぐに電話をかける。フリーダイヤルだから気楽なもんだ。
すぐにつながるNTT。さすがだ。
担当「はい、NTTなんとかセンターの○○です」
私「今、イシカワさんと話していたSGCと申しますが、イシカワさんは
電話に出られますか?言い忘れたことがありまして。」
担当「申し訳ございません。イシカワはただいま他の電話に対応中と
なっておりまして。差し支えなければイシカワの電話が終わり次第
こちらから電話させていただきますが、よろしいでしょうか?」
私「はい。ではよろしくお願いします」
と言ったのが14:00だった。
19:30になった。
電話は鳴らない。
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やはり言っておいたほうがいい。
でなければ、先方の手間が増える。
結局向こうからの電話はかかってこないのだから
こちらから電話するだけである。
それにしても「折り返し電話させます」という返事から
5時間半経過している。
イシカワ氏は非常に忙しいらしい。あるいは電話を受けた
人が放置しているのかも知れない(絶対後者だけど)。
係りの女性「はい、NTTなんとかセンターの○○です」
私「すみません。イシカワさんから電話を頂戴することに
なっているんですが、ちょっと遅いもので・・・。」
女性「左様でございますか。申し訳ございません。ただイシカワ
という者が何名か在籍しておりまして・・・」
私「あ、では今日の午後2時ごろにSGCというヤツに
電話をいただいた、男性のイシカワさんです。番号は***」
女性「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
そうか、別に特殊な苗字でもないし、イシカワさんだけでは
わかりにくいだろうなあ。そう言えばスワローズの石川も
やっぱりなかなか手ごわい相手だ。豪速球じゃないものの
やっぱりキレがあるというかなんというか、
男性「はい?NTTなんとかセンターのYです」
ん?この声はイシカワさんではない。
保留の電話を取ってしまったのか?
私「あ、すみません。いまちょっとイシカワさんを呼び出して
もらってまして、保留中でした」
男性Y「そうでしたか。大変失礼致しました。保留させていただきます」
私「はい」
男性Y『ええと、これってどうやるんだぁ?』
声は多少遠くはなったが、完全に聞こえているぞYさん。
ガチャン。
電話は切れた。保留に戻せずに切ってしまったのだろう。
NTTの人が。
なのに。
電話機をうまく操作できないNTTの人。
歌を忘れたカナリアと同じではないか。
飛べない鳥と同じではないか。
短い蛇と同じではないか。
身体に悪い青汁と同じではないか。
と際限なく喩えは思い浮かんだが、悉く適切な喩えではなかった。
もう一度電話する。
係り「NTTなんとかセンターの●●です」
名前は聞き取れなかったが、Y氏の声だ。
私「さっき、電話切った?」
係り「はい?」
私「いや、いいです。イシカワさんから電話頂戴することに
なっているSGCと申しますが、イシカワさんお願いします」
係り「あ、イシカワでございますね。」
あ、と言ったということは、やっぱり貴方は電話を切ったYさんか。
係り「申し訳ございませんが、イシカワという者が二人おりまして」
私「はいなるほど。」
係り「どんな声でございましたでしょうか?」
私「物真似するんですか?結構いろいろできますが、イシカワさんの
物真似はできません。」
ここまで来ると、私も真面目に会話するのに疲れていた。
私「デニーロが道を尋ねるところのマネなどは秀逸ですが。」
係り「いや、申し訳ございません。ええと、年配っぽい感じで
ございましたか?」
私「年配っぽいの『ぽい』がどんなものだか、ちょっと・・・」
係り「左様でございますねえ・・・」
私「年配じゃなかったと思いますけど。」
係り「あ、左様でございますか。それでは若い方のイシカワだと
思われます。もう一人のイシカワは明らかに年配ですので」
私「そうですか、明らかですか。」
係り「ええと、そのイシカワなんですが、ただいま他の電話に対応中
でございまして、私、代わりにご用件を伺いますがいかがで
しょうか?」
私「あ、それならお願いします。別にイシカワさんにこだわっている
訳ではありませんので。」
係り「かしこまりました。それではまず契約していただいております
電話番号をお教えいただけますか?」
私「はい、0**の***-***4です」
係り「はい・・・0**の・・・・」
係り「ええと、市外局番ですが、0***の4桁ではございません
でしょうか?」
私「はあ?」
係り「今おっしゃった3桁の市外局番はありませんので。
0***では?」
今あなたは、数十万人の存在を否定してしまった。
私「ありませんって・・・。じゃあ何年も使っているあの市外局番は
夢まぼろしか?」
係り「ええと、そうしましたら、イシカワが電話対応を終えましたら
こちらからすぐに電話させるように致しましょうか?」
あきらめやがった。
市外局番存在証明の件はどうするのだ?NTTよ。
私「はい、もうこうなったらイシカワさんからの電話を是非いただき
たいのですが、もう電話を待って5時間ぐらい経ってます。本当に
電話いただけるんでしょうか。」
係り「もちろんです。イシカワは私の後ろに座っておりますので。」
その男は、座席の位置がものすごく重要であるような言い方をした。
そうか、後ろに座っているのか。じゃあ大丈夫だ。
って誰か安心するのか?
30分後着信。フリーダイヤルから。
私「もしもし?」
イシカワ「私、NTTなんとかセンターのイシカワと申しますが」
待ち焦がれた人物からの電話だった。
私「ああ、イシカワさん。アンタと話するのはちょっとした
アドベンチャーだね」
イシカワ「は?・・・と、仰いますと・・・なにか不都合が・・・」
私「いやそれはあとでゆっくり教えてあげる。」
イシカワ「申し訳ございません・・・」
念のため・確認のための本来の用件は1分で済んだ。
やはりイシカワさんと直接通話ができて良かった。
イシカワ「あのう、・・・ところで先ほどの・・・」
私「ああ、あれね。さっき電話したときは代わりの人が
電話機の保留を操作できずに、通話を切られたよ。」
イシカワ「ああ、申し訳ございません・・・」
私「いやいや、まったく怒ってないから。ちょっと面白いし。」
イシカワ「そう言っていただけると助かります・・・」
私「でももし『電話機の操作を間違ってはいけない企業ランキング』が
あるとしたら、NTTは1位でしょうに。」
イシカワ「仰るとおりでございます」
私「それと、私が住んでるあたりの市外局番を言ったら、そんな番号は
存在しないって言われたけど。」
イシカワ「あのう、多分端末の操作ミスかと・・・」
私「ひょっとして、イシカワさんところはNTTと無関係?」
イシカワ「いえ、NTTグループ内の会社の部署でございます。
それもサポートセンターですから、あのう・・・何と
申し上げていいか・・・」
私「ん・・・私も何て言っていいかわからんけど、多分あの男性は
NTTに向いてないような気が・・・」
イシカワ「大変申し訳ございません。」
私「いやイシカワさん、あんたのせいじゃない。」
終
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