小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

原武史 『滝山コミューン 一九七四』

2007-11-04 22:49:26 | 読書
本書においては、1970年代、東京郊外(東久留米市)の滝山団地にある小学校で、著者(1962年生まれ)が生徒として巻き込まれた「学級集団づくり」にまつわる息苦しい経験を、当事者への取材も行いながら検証しています。

この運動を提唱したのは、「全国生活指導研究集会」で、集団主義教育が強調されていました。これが、先生・生徒ばかりでなく、保護者をも巻き込んで「コミューン」を形成していくことになったということです。

特に、班活動が重要で、クラスを班に分けて競争をさせ、最下位の班を「ボロ班」として晒し者のようにしていました。
その実際の様子は、本書を読めばわかるのですが、小学校という、教師と生徒に絶対的な力の差がある場で、まだ十分に判断力があるとはいえない子供たちに、自主的活動と錯覚させて、こんなことをさせていたのかと思うと恐ろしいです。
そのような状況中で、批判力のあった著者が、どんなに苦悩していたかが、ひしひしと伝わってきます。(実は、積極的に活動していた生徒も苦しんでいたことが後にわかったりします。)
「追求」(「追及」なのにそう表記しないところがまたコワイです。)の場面など、身の毛がよだちます。

時おり、著者の鉄道マニアぶりが披露されていたりして(鉄道にも政治のニオイを敏感にとらえたりしますが)、本題からはずれて緊張をほぐしてくれたりします。

「滝山コミューン」はなくなりましたが、集団主義的抑圧は様々な場で起こりうるもので、気づかずに抑圧する側になっていたりすることもありますから、よくよく自戒しなければならないと感じました。
そういう意味でも、本書を読んで、それほど遠くない過去にこのようなことがあったのだということを知るのは大切だと思います。

滝山コミューン一九七四
原 武史
講談社

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