ノモンハンの夏 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |
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国家の罠の記事で”ごきちゃん”からコメントをいただきながら,そのままになっていた。無精者である。(お許しあれ。)
〔ごきちゃんのコメント〕
太平洋戦争でも,やる気満々の作戦参謀たちがどんどん勝手に戦争を拡げていった。能力が無いのに能力があると思い込みやる気は満々。確かに害があるかも。でも,その暴走を止められない上層部にも問題があるのでは。このところ自分の能力の無さを再認識した私はまだましってことですかね。
との,ごきちゃんのコメントで半藤一利の『ノモンハンの夏』を思い出した。関東軍参謀,辻政信は,ノモンハンの夏の時,38歳であった。無能なのにやる気満々で多くの人を死地に追いやった。
にもかかわらず,戦後,ぬけぬけと国会議員になる。『はだしのゲン』が助けた町内会長と一緒である。ゲンの父親を非国民となじりゲンの家族をいじめながらも,原爆投下時には,ちゃっかりゲンに助けられている。この町内会長も,戦後,ぬけぬけと県会議員に,そして国会議員になる。恥を知れ!
アマゾンの書評で,守屋敦氏も「独り善がりな参謀やトップのために一般の兵士が犬死していくという図式は,多くの敗け戦に見られるが,その最も顕著な例の一つ<ノモンハン戦>を迫真の筆致で描く。著者はこの戦闘の実質の責任者であり,さらに日本を太平洋戦争に引きずり込むのにも加担した人物と戦後会うのだが(何と国会議員!)それを述懐して,<絶対悪>と吐き捨てるように書いている。」と本書を紹介されている。
ちなみに,辻の暴走をとめられなかった大本営参謀は,戦後,シベリア抑留をへて商社に務め,やがては,天下国家のご意見番にまでなる。人事,財政,企画機能を統合し,所属する商社を一流の商社にのし上げた経営手腕は特筆に価するが,現場の暴走を止められず多大な犠牲を被ることになった参謀としての責任論からは逃れられないのではないか,という気がする。『不毛地帯』はやはり不毛の大地であった。
己の力の限界を知り誠実に生きる人が一番素晴らしい。誠実な生き方ができること。これが何よりも必要な能力だと思う。ちなみに,ノモンハン事件は,村上春樹の小説の題材にもなっている。情報将校がソ連軍のモンゴル兵士につかまって,皮剥の拷問を受けるあの小説である。 blog Ranking へ
「わが国では長らく、新卒のトップレベルの多くが都市銀行に就職した。高度成長期に果たした銀行の役割は十分に評価しつつも、商業銀行業務には元来それほどのクオリティーは要らない。限られたポストに対し、必要以上の能力・人材が集まるとどうなるか――。あふれる知性は外に向けられるのではなく、内に向かう。それが実はメガバンクの蹉跌(さてつ)の一因ではなかったのか。財務危機が過ぎ去った今、また歴史は繰り返されるのであろうか? 」
辻はん(この人はどこへ行っても悪く言われますなあ。)や某商社のご意見番さんは,陸士・陸大天保銭ですねえ。まさしく当時のベスト・アンド・ブライテスト。うーーん,歴史は繰り返す?それとも官僚組織の病弊ですか?
もって他山の石ですね。