こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

アンドリュー・ワイルズの偉業

2005年12月26日 | 読書ノート

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 イギリスの数学者,アンドリュー・ワイズの偉業と言えば,17世紀後半,数学好きの法律家がだした「フェルマー予想」の証明である。(『天才の栄光と挫折』記事の続編)

フェルマー予想とは,

「 nを3以上の整数とするとき
  Xn + Yn = Zn   を満たす正の整数 X,Y,Zは存在しない。 
(それぞれn乗と読み替えてください。本当はnの字をX,Y,Zの右上に小さくそえるべきですが,やり方がわかりません。とほほ・・・。)               」                                                 
 という問題。フェルマーの出題後300年近く解けない難問中の難問の一つだった。それを解いたのがアンドリュー・ワイルズで,解けた時期は1993年。1953年生まれの彼が40歳前後にさしかかった頃だった。

アンドリュー・ワイルズの話が良いのは,

 第1に, 「フェルマー予想」を解くことはアンドリュー少年が10歳頃から抱き続けた夢の実現であったこと。証明までにその後30年近くたっているので,夢の実現というのにふさわしい所作であること。(少年の頃の夢を実現するなんてロマンチックではありませんか。)

 第2に,証明を開始してから7年間,この問題に取り組んでいることを秘匿していたということ。他人に潰されないために自分を守る超高度なセルフコントロールが必要であり,7時間と持たない私には想像もできない類まれな忍耐力である。ただただ尊敬の一字であり,この忍耐力なくしては偉業も達成されなかったこと。

 第3に,アンドリュー・ワイルズの偉業を可能にしたが,日本の数学者たちの業績の賜物ということである。架け橋は「谷山=志村予想」。そして,証明が破綻しそうなときその綻びを埋めたのが「岩澤理論」。日本人によるこの2つの理論なくしては,アンドリュー・ワイルズは栄光の切符を手にできなかったこと。・・・などである。
「東京・日光の会議からちょうど40年たっていた。谷山と志村がいなかったら,少なくともあと50年はかかっただろう。岩澤がいなくても何十年かは遅れていたであろう。他の日本人数学者の業績も証明のあちこちで本質的に用いられている。20世紀数学最大のドラマは,日本人の目覚しい独創性なしにはあり得なかったのである。(『天才の栄光と挫折』P248)」

 当世一流の数学者6人が1年がかりで評定するという大作業。素人にはこれだけでも脅威だが,それくらい数学の世界は美しく征服の爽快感は,また,格別なものなのだろうなと思った。それにしても,なかなかやるではないか日本人。  blog Ranking へ


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