阿片王 満州の夜と霧 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
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大著である。さっとは読めない。ちょっとずつ読み進めている。ちょっと東京裁判あたりのことを書いた本に手を伸ばしを読めば,すぐにわかる周知の事実なのだろうが,阿片ビジネスが関東軍の資金源になっていたこと,蒋介石の国民軍とも阿片利権を巡る争いがあったことなど,何分浅学のため承知していなかった。
「軍部を無謀な日中戦争に踏み切らせた心理的理由の一つとして,中国の軍閥たちが独占するアヘン利権を武力で収奪することにあったことは確かだった。(P138)」「アヘンを制する者がシナを支配する。関東軍も国民党軍も,まさに真剣にそう考えていたのである。(P146)」
歴史の事実というものは過酷なものだ,と感じた。いかなる大儀も利権も前にひれ伏してしまうのだろうか。「満州国建設が壮大な社会実験であり,満州に建設されたハード・ソフトのインフラが,この地域のその後の発展の礎になった。その意味においては,日本は侵略国ではなく,地域の振興プランナーだった。」という論調の主張があるが,この圧倒的な現実の前では沈黙せざるを得ないかもしれない。
「アヘン中毒者は共通して,果物が猛烈に欲しくなるという。アヘンが厄介なのは,性欲という人間の本能と分かちがたく結びついているからである。アヘン常用者の性交時間を調査したところ,最高で17時間も陶酔感にひたっていたという記録もある。その結果,男は精力を使い果たして腹上死する例が多く,娯楽らしい娯楽のない満州の貧民の間では,腹上死が出ると,部落総出で祝福のお祭りまでしたという。(P134)」
「この特務機関員は,「アヘンは苦を忘れ,一時的に活力を与えられるだけでなく,性の快楽に心身をひきずりこむから,金銭より特務の役に立ちました」とも述べている。(P140)」
阿片戦争をしかけられアヘンとのバーターで流出する銀に歯止めをかけるため,自国内でケシを栽培し公営の吸引所を設けるなど,アヘンを公認せざるを得なかった清国。その国情につけこみ,漸減主義などと体の良い看板をかかげ,しっかりと阿片ルートを押さえアヘン利権を貪る軍部。日中戦争というものがそんな利権に引きずられて起こされ,幾多あまたの尊い命を失うきっかけがアヘン利権にあったとしたら,やはり,悲しむべき事実というものだろう。利権を貪った人たちの行為はまさに噴飯ものである。
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おもしろいっす
何でも,満洲國は自分の作品だと豪語したとか
満州阿片関係もちょろっと・・・
そうそう,東條英機総理のもとで,岸は
大臣だったんですけど,この二人も満州つながり
なんだそうです
さっそく,本屋で,満州進出時の部分を斜め読みしました。里見何某,甘粕,東条との仲や,阿片ビジネスとの関わりが岩波の「岸信介」でもとりあげられていますね。
佐野さんの本では,里見甫が岸の選挙資金を融通したこと。その金の運び屋を弟の佐藤栄作が務めたことが書かれています。幻滅ですね。
ただ,岸の日米安保条約締結を評価する論評もあります。(田原総一郎『日本の戦後』上)