こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに,怪我をされた方の1日も早いご回復をお祈りします

2005年04月25日 | 読書ノート
 痛ましい事故が起こった。JR宝塚線の事故だ。 電車脱線、50人死亡 417人けが 兵庫のJR宝塚線 (朝日新聞) - goo ニュース 心より,犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに,怪我をされた方の1日も早いご回復をお祈りしたい。

 この報を聞いて思い出した本がある。この前読んでブログにも書いた 日本経済新聞社編 『働くということ』 である。働き手の紹介の中に,電車の運転手さんが登場される箇所がある。その中で,ベテラン職員の方が,若い人への運転技術の伝承が思うように進まないこと嘆かれるシーンがでてくる。合理化なり,伝承手法の風化なり,若者の意識の変化なりが,技術の円滑な伝承の妨げになっているとの指摘であった。

 もちろん,事故の原因は,置石かも知れないしレールなどの老朽化かもしれない。時刻の遅れを取り戻すためのスピードの出しすぎが原因という見方もある。いずれにしても,その原因は,今後,あらゆる角度から分析され,再発防止策がとられることと思う。が,『働くということ』における,ベテラン職員の指摘が頭から離れない。社会全体の規範力の低下が招いた悲劇なのではないか,という疑念が拭い去れないのである。

 零細・兼業農家に育った。土・日は,みかんの収穫・搬送に追われた。「おいこ」という道具を使って,みかん箱を背中に背負い段々畑を何往復もした。収穫の二度もぎは当たり前のこと,おいこを使った搬出作業や予防には一定のスキルが必要であった。おいこを背負うときの体重のかけ方。段々畑でのバランスの取り方。ずれない紐の結びかた。お婆ちゃんや親父や兄貴から伝承されたスキルである。零細・兼業農家の手伝いの中ですら,大げさに言えば技術の伝承があった。

 だからという訳ではないが,今回の事件は背景事情を少し深刻に捉えた方が良いのではないか。事故の原因を,従事していた人や会社のせいにせず,社会全体の規範力低下という大きな視点でとらえ,社会全体でのリカバーを考える視点が必要なのではないかと思った。

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