こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

続 映画 『トロイ』

2005年04月24日 | Weblog
 『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』という本の中で,首藤良尚という方が「アメリカ映画にみるユダヤ人の強かさ」という論文を寄せている。論文の中身そのものは,「ベン・ハー」,「オリバー・ツイスト」,「ワンス・アポナ・ナ・タイム・イン・アメリカ」という3つの映画に描きだせれるユダヤ観を考察するものだ。

 例えば,英国作家チャールズ・ディケンズの「オリバー・ツイスト」。浮浪者たちを拾っては泥棒に仕立て上げる,泥棒大元締めフェイギン。ディケンズは,このユダヤ人を醜悪なものと描ききる。古くは,シェイクスピアの『ベニスの商人』におけるシャーロックと同様,ユダヤ人というものに対する英国市民観を正確に反映している。
 ところが,このフェイギン。イギリス製の映画では,比較的充実にこの醜悪さが描かれるものの,米国ユダヤ人が支配するとされるハリウッド映画では,段々,醜悪さが薄れていく。極めつけは,ディズニーのアニメ『オリバー ニューヨーク子猫物語』(1988年)。その中で,猫に扮するフェイギンは,主人公たちと一緒にヒロインを助ける冒険をする,醜いけど愛すべきものと描かれる。あれれという感じ。当時のディズニーのCEO,マイケル・アズナーはユダヤ人というおまけつきである。

 こんな分析を披露してくれた首藤さんが,映画である以上,原作の改変などはいたしかたなしと留保つきでコメントされ,改変代表例とでもいうべく『トロイ』にふれている。

「 近作『トロイ』でもトロイ戦争のストーリーが思い切って変更されていて結果的に評判が悪かった。ヘレネを連れ去ったパリス王子は最後まで生き延びるし,アガメヌノンはアキレスに殺されてしまう。トロイ陥落の瞬間までアキレスが生きているし,狂って自刀はずのアイアスは戦死してしまう。~祥伝社『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』P238から引用。」

 元来,大雑把な性格ゆえ気にも留めなかったが,言われてみるとそうだったなと,首藤さんの指摘に痛く感心してレポートする次第である。映画もディテールまで追える人は尊敬してしまう。

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