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『帝王学―「貞観政要」の読み方』を斜め読み

2006年01月08日 | 読書ノート
帝王学―「貞観政要」の読み方

日本経済新聞社

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 山本七平の『帝王学―「貞観政要」の読み方』斜め読みした。

 「貞観政要」は,理想的な統治が行われた時代の一つとして,後代の模範とされた唐の太宗の治世・貞観の治がまとめられたものである。下の者(部下たち)からの直言を許す気風が太宗の善政の源泉。権力の周りに阿諛追従はつき物であるし放っておけば権力は確実に腐敗するが,諫言を許すと同時に意見を聞き入れ実行する度量のある為政者は安定的に権力を持続できる。
 北条政子が愛読し,徳川家康が味読した「貞観政要」は,鎌倉140年,徳川300年の長期政権を支える影の力となったといわれている。(同書P18)
 
 偉大なリーダーは類似性がある。目を西洋に転じれば,ローマ繁栄の基礎をつくったアウグトゥスも唐の太宗と同様な眼力と力量を備えた者であったことがわかる。少し長いが引用する。

「 だが,大リーダーには同じ面があり,ローマの最初の皇帝アウグストゥスにも同じような記述があり,時と場合によっってはあなたと戦い,あなたを滅ぼしたであろうと広言する者を,最も信頼できる者とした。それは,ユダヤ王のヘロデである。

 ヘロデはアントニウスと親友で,王位につくときもアントニウスが強くバックアップし,両者は,常に変わらぬ信頼関係にあった。いわば自他ともに許す「アントニウス派」であり,ヘロデはこの友情を少しも隠そうとはしなかった。だが,クレオパトラは,ヘロデを失脚させてパレスチナを領有したいと狙っており,クレオパトラとは仇敵の間柄だった。そこで両者が,というよりアントニウスの方が,熱烈な関係に入ると,ヘロデは,非常にむずかしい位置に立たされる。だが,いかにアントニウスがクレオパトラの言いなりになっていても,ヘロデとの関係を損なうようなことは,断固としてはねつけていた。このアントニウスはアクティオンの海戦で,クレオパトラの逃走のため,アウグストゥスに完敗する。

 そのとき,すべての人はこれでヘロデも没落すると思い,さまざまな画策をする者もでてきた。だがヘロデはただ一人で従者をつれてアウグストゥスに会いに行き,アントニウスとの友情を堂々と披瀝し,クレオパトラがおらず,もし,自分が彼を助けていたら,彼は必ず勝ったであろうと広言する。そして,その友に,最後まで忠実であったものを信頼するか否かとアウグストゥスに問うのである。そして,もし自分を信頼してくれるなら今日から友になろう,その時はアウントニウスにささげた友情と誠意を同じように捧げるであろうと言った。アウグストゥスは喜んでこれを受け入れ,以後二人は親友になった。

 パレスチナは穀倉エジプトへの陸橋であり,ローマにとって最も重要な地である。彼はここをヘロデにまかせた。ヘロデもアウグストゥスを信頼して,その死後のさまざまな処置をアウグストゥスに一任している。(P50~51)」

 穿った見方をすれば,戦況が不利であることを見越してのヘロデの一世一代の大博打とも考えられるが,敵対するものをも味方につけるアウグストゥスの包容力にこそ学ぶべきなのだろう。「貞観政要の戒め」が必要な組織は,世の中に満ち溢れているだろう。足元を見直さなければいけない。 blog Ranking へ

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