こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

続 『人間の大地』

2005年06月26日 | 読書ノート

 『人間の大地』の「ミルクから教育へ」。コーヒーで有名なネッスル社が世界中の開発途上国に粉ミルクの販売を開始した。1970年代の話だ。(以前この販売のことを無料援助と取り違えていた。)結論から先に言うと,「乳児にとってもっとも安全で栄養があるのは母乳であって,健康な母体をつくることが先決で粉ミルクの販売は役にたたない。」という現実である。

 粉ミルクの販売開始後起こったことは,「栄養失調と死児の続出」。答えは,「準備段階のないままに,いきなり,天降った人工製品だったから」。だから犠牲者がでた。

 第1に水の問題。南の地では,粉ミルクを溶くに足るだけの水質の水はない。煮立てて湯さましをつくる知識もない。燃料も乏しい。
 第2に哺乳瓶と吸口。万が一,湯さましやそのままでよい水があったとしても,粉ミルクの場合,哺乳瓶ナシにはどうにもならない。瓶は清潔でなければならない。吸口はとくに清潔でなければならない。
 第3に分量。1日に必要不可欠の分量について基礎知識がない人は,粉ミルクの分量を勝ってに変えて使う。正確な計量の習慣自体が日常化していなかったためと粉ミルクが高価であたからだ。人々は少しずつ,粉ミルクの量を減らして使った。

 そして

 「見えないところで子は栄養失調になって行った。母たちの多くは,へらした分を母乳で補うことを考えなかった。「母乳より善い粉(ミルク)」と言われたからである。栄養失調で弱って来る小さなからだに,不潔な水と哺乳瓶にべたついている(しかし眼に見えない)さまざまの菌が入り込む。赤痢,コレラ・・・いや,栄養失調になるとうの以前に,それらでもろにやられた子は無数にいた。こうして,
高度の質の,栄養価からみても満点に近い粉ミルク普及と共に,嬰児罹病・死亡数が信じられない度合で世界中の開発途上国に増加したのであった(『人間の大地』P313から引用:一部語句修正)」


 あれから30年以上がたつ。もう,こんな話は一切聴かれなくなっただろうか。それとも,形を変え,いたるところでミスマッチが起こっているのだろうか。実態は後者のような気がする。

 

 

 

 

 

 

 


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