中国古典の生かし方: 仕事と人生の質を高める60の名言 (NHK出版新書 722)
湯浅 邦弘 (著)
悩んだときは、『孫子』×『貞観政要』と、『菜根譚』×『呻吟語』が役に立つ!
中国古典研究の第一人者が、『孫子』×『貞観政要』と、『菜根譚』×『呻吟語』の名言・格言を、身近なたとえを用いてわかりやすく解説する、ユーモア抜群の中国古典ガイド。
たとえば『孫子』の「彼を知り己を知れば、百戦殆(あや)うからず」。
勝敗は彼我の相対的戦力差によって決まることを鋭く指摘したこの言葉は、オンライン会議時に思い出してみてはどうか。ふだん見えない自分がパソコンの画面に映る。「こんな妙な癖が自分にあったのか。今後は気を付けなければ――」。これは、他人と自分が同一画面上に配置されることではじめて自覚できることではないだろうか。
面白くてタメになる!「故事・ことわざ」の読み方指南の書である。
[前編]仕事や組織での活動がうまくいくヒントがほしいときに
――組織論・リーダー論の最高傑作『孫子』×『貞観政要』より
一、算多きものは勝つ
二、彼を知り己を知る
三、人こそ城
四、水の如く勝ちを取る
五、逃げる美学
[後編]人生の歩き方、人との付き合い方に迷ったときに
――処世訓の最高傑作『菜根譚』×『呻吟語』より
一、自分の器を磨く
二、人間関係の極意
三、ピンチと感じたとき
四、四角と丸で生きていく
五、人生は百年のみのではなく
孫氏は、ただ戦争の技術を記すのではなく、人間が戦うとはどういうことか、組織とは何かを思索しています。
長い戦乱の後、安定政権が築かれるなか、リーダーの資質、組織の在り方が語り合わされいます。
乱世を背景に軍師は思索した「孫氏」、太平の世に君臣問答で構成された「貞観政要」、互いに対照的関係ながら、組織論、リーダー論の二大傑作になっています。
本書では、この「孫氏」「貞観政要」から、暮らしや仕事に役立つヒントを挙げています。
事をなすには、ぼんやりと浮かべるのではなく、誰にも分るものでなければならない。
それ「算」です。
現在に当てはめば、情報収集。事前分析の重要性を指し示す名言だと思います。
さらに、集団の力学について論じています。
「勢」という字を集団のエネルギ―を意味付けたのは「孫氏」が初めではないでしょうか。
かつては一人の勇者によって局面を打開することも可能でしたが、兵士も数万の規模になれ集団の力を最大限に引き出すことがまず肝要です。
さらに人が変わってもなお組織を維持発展できるのが真の組織であり、その鍵が「勢」なのです。
一方、「貞観政要」ではリーダーの「聴く力」の大切さが語られます。
「きく」と読む漢字に「聴」の字を当てています。
リーダーは耳に入ってくる声を聞くのではなく、意識的に聴く姿勢が必要であることを示しています。
さらに「兼」の一字を加え、情報は「兼ねる」、多くの人から得なければならないとしています。
また、自らにとって耳の痛い言葉、諌言もそこに含まれているのではないでしょうか。
そいした度量が太宗には備わっていたと私は考えています。
千年の隔たりを有する「孫氏」「貞観政要」ですが、共通点も多くあります。
その一つが「己を自覚し忘れない」ということです。
敵を前にする武将、国を治める君主の態度の違いはあっても、「己を知る」ことの大切さを語っています。
また、それが難しいことでもあるとも訴えています。
情報社会の現在、大量の情報が行き交うなか依然として明らかでないもの、それは、<自分とは何か>ということではないでしょうか。
そこに「孫氏」「貞観政要」に鋭く深い教訓を私は感じます。
戦争の悲惨さを目の当たりしていた孫氏にとって、まず考ええるべきは人命の尊重であり、国家の滅亡を避けることではないでしょうか。
「孫氏」の兵法は人命を守り国家の滅亡さける普遍的な課題に主眼を置いています。
一方、貞観政要」では、「後継者をどう養成し、社会を生き抜くか」という課題に対する問題解決にヒントを探っています。
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