海水温度を下げる方法はあるのか?

2019年10月20日 19時18分23秒 | 社会・文化・政治・経済

台風は海面水温が26~27度より高いと発達する。
では、海水温度を下げる方法はあるのか?]

■ 地球史からみた日本の地球温暖化海に森を作り

地球温暖化を防止し
世界の人々に貢献する


地球が生命に対して温暖な環境を提供しているのは、海流と気流が南北の温度を均等化させる働きしているからである。

地球温暖化の課題を理解するために必須の知識がある。海水、または淡水の上下対流のメカニズムである。

海水は-1.8℃で凍りはじめる。氷は水の結晶で純粋であるから、凍らなかったほうの海水には氷になったほうに溶けていた塩類が移行して比重が高くなる。

だから海水が凍ると、表面から深海底に向かって下降流が生じる。その容積分だけ深海から海水が浮上してくる。深海の水には、生物を養う栄養塩が豊富に含まれているので日光を浴びると多量の植物プランクトンが生じ、エビに似たアミ類が大発生する。こうした食糧を求めて、多くの大型魚類や鯨などの哺乳動物などが極周辺の海に集まってくる。
北極海の表面水の塩分が何らかの原因で淡水化すれば、氷結しても水の比重はあまり変化しないために、この上下対流は起こらなくなる。

知床に到達する流氷には氷と氷の間に、濃縮され冷え切った海水がはさまって存在する。流氷が到達して、氷どうしがぶつかり合うと、こうした比重の高い冷えた海水は海底に沈降し、代わりに栄養塩を含んだ深層海水が上昇してくる。

日本では北から下ってくる親潮が南からの黒潮と合流する地点で大漁場が成立しているのは親潮に栄養塩が多く含まれるからだ。親潮は栄養塩、黒潮は温暖な水温を合流地点にもたらすのである。

淡水では、海水のように「冷えれば冷えるほど沈降流の強さが増すメカニズム」にはならない。淡水の比重は4℃のときが一番高いという性質による。湖面では氷点になる前に4℃になった水は湖底に沈んでゆく。初春や晩秋に湖内の上下流が活発化して、全体の水温が4℃に近い均一な温度になる。
淡水が凍れば表面の風によるかく乱はなくなるため、比重の軽い0℃の水が上層に居座り、上下流が生じなくなる。そのかわり表面からの酸素の供給もなくなり湖水全体に貧酸素水塊が生じる。魚などが全滅することも生じる。

 

では本論に入ろう。

グリーンランドの氷は平均厚さが2100mほどで量が多く、海面上昇への影響がおおきい。しかし本当の恐怖は他にある。

地球史のなかで北米周辺とグリーンランドは地球気候の変動に大きな影響を与えてきた場所である。北極の海に近接した広い海域は地球上で北大西洋海域だけであることに気づく。この海域は気候変動を敏感に受けて最初に氷の形成・溶解につながる地域なのだろう。

ベーリング海峡は水深わずか 50 m、巾約 100 km。海峡を通って太平洋の水が北極海に注いでいる。

暖かい上層の海水が北極に流れ込み、冷やされて氷ができ、いっぽうの濃縮されて比重の重くなった海水は大西洋側へ沈み込んでゆく。この北極で沈み込む海流はアマゾン川の水量より多いと推定されている。沈み込む海水のエネルギーが強ければ大西洋側の南下する方向だけに強く進み、世界の海流は定まった方向へ強く流れる。温暖化は北極の氷とツンドラの永久凍土が溶解する間はこの沈み込むエネルギーを弱くする。

北極の凍結エネルギーが強いために沈み込む海水量に対して、ベーリング海峡から入る海水量では足らずに大西洋の赤道周辺の暖かい表面海水が、風の力も借りながらメキシコ湾流として北上して均衡を保っている。
北米やヨーロッパ諸国が緯度の割には温暖である理由は、北極の凍結エネルギーとベーリング海峡のバルブ(調節弁)の絞り具合に依存しているわけである。

ベーリング海峡は、地球の全海流が一定方向に向けられるように、そして極端な海流量変化が起こらないようにして地球全表面が温和な気象であるように精緻に設計された温水流入制御装置である。位置、深さ、水量など神のもたらした恵みとしか言いようがない。

写真から温暖化によって北極の氷がベーリング海峡側から減少していることが見て取れる。

北極の氷の変化

グリーンランド周辺の北極の低温は、千年単位で地球全体をくまなくめぐる海流を生み出す力となっている。海流は、常時、巨大な熱を南北に移動させている空調機のようなもので、地球の全面積に穏やかな気候をもたらし生命が長期的に同じ生活の方法をとっても生きのびることができる補償となっている。

今から一万一千年前、地球が温暖化したため、北米大陸の氷河が一気に崩落してグリーンランド周辺では溶解してできた淡水によって海水比重が軽くなってしまった。数値モデルでのシミュレーション結果では比重が足りない海水は沈下できずに数10年で海洋大循環が停止した。実際に海流が停止した痕跡が地質上に記録されている。その後1000年間は地球は逆に急速に寒冷化した。この寒冷な時期をヤンガー・ドライアス期と呼んでいる。

実はこの海洋大循環のおおもとである北極における海水の沈み込みは、1980年以来すでに停止している可能性があるという報告がある(シュロッサー)。ツンドラの永久凍土の溶解やグリーンランド氷河の後退などは、北極圏の海水の淡水化をもたらしているし、エルニーニョの定着化はこの判断を支持する方向にある。エルニーニョ時には黒潮の温度が上がる。ひょっとすると日本沿岸の海域で起こっている磯焼け現象は、サンゴの白化で餌が乏しくなった南方の食植動物(ブダイやアイゴ)が餌を求めて北上している現象かもしれない。

日本の黒潮は貿易風で吹き寄せられて上層を流れる海流である。北に向かう塩濃度も高めの海流である。しかし観測結果では北太平洋の表面海水は、河川の流入(オホーツク海の流氷を含む)や降雨が多いためにやや塩分が低めと言われている。

これまで両極で沈下する海水は、表面で大気から年間0.4ギガトンほどの炭酸ガスを海底に運んでいると見積もられていた。南極での沈下分を割り引いても、海洋大循環の弱まりとともに炭酸ガスの大気中の蓄積速度は上がるはずだ。

地球はこの数年の人類の対処の仕方で大きく結果が変わるときに遭遇しているようだ。いったん限度を超えた場合、ヤンガー・ドライアス期のような人の力ではどうすることも出来ない破滅的な気候変化が起こる。

いま、もしグリーンランドの氷河が崩落すれば、温暖化から一転して急速な寒冷化への変化が起こる可能性が高い。赤道域の水分の蒸発がもたらす雲も白いために太陽の熱線の地球外反射に影響すると考えられている。しかし、その規模や影響度は何もわかっていないのが実情だ。食糧は破滅的な不作となる。10年の間に、数十億人が飢えてしまう状況となる。

その理由を説明しよう。

グリーンランドの地形が周囲の山脈によって簡単には氷河が周囲に流れないために広い真っ白の日光反射面積をもつ。これが地球の熱線吸収率に影響を与えている。急速な雪原面積減少は急速な温暖化と海面上昇と海洋大循環の停止をもたらす恐れがある。

海洋大循環の停止によって赤道地域の熱が両極に移動しなくなり、極地域の極寒をまねき、逆に両極の雪原を急速に拡大して、地球から宇宙への熱線反射が上昇して寒冷化をもたらすと考えられている。

海面上昇を不安視する人々も多い。海面上昇と地球寒冷化の関係についてかんがえよう。自分の土地が海面下になったらどうしようという不安はわかる。単なる海岸線の後退なら、ゆっくりと起こるので財産はなくなるが命がなくなることはない。

人間も含む大型動物が激減する状況が起こることも視野に入れておく必要がある。それは1m程度の海面上昇で南極の海岸線も後退してしまうことによるリスクである。

南極の氷は大地の上に乗っているので、これまでの速度以上に急激に海へ移動することはない。ところが海面が1m上昇することで海岸線の棚氷が浮き上がり、大地と氷の間に海水が侵入してゆく。すべり摩擦がほぼゼロとなってしまうので巨大な面積の氷が海上へと短期間に移動してしまうことになる。近年の南極の氷河の海上への移動速度は8倍であったことが観測されている。地球温暖化によってひきおこされた南極の氷河の移動速度は、海水面を上昇させるという南極の氷河自らの性質によって、さらに氷河の流下速度を増加させている。

南極の氷が海上に移動すれば海水面はさらに上昇する。

海上で融解する氷は海水面を淡水化するから冬に海面が凍結しても沈降流は生じない。南極でも凍結によって、深層海流の流れを後押しするメカニズムがあることは北極と同じである。淡水化によってこの力が弱まることはチリ西岸を北上する深層海流の速度を弱め、エルニーニョを定着化させる方向に進む。

幸い、温暖化で貿易風が強まるため、黒潮につながる赤道周辺の東向き海流は30%ほど強まりそうだ。この表面の海流は、弱まった深層海流を引き上げるエネルギーとして少し強く引き上げることになる。だから、南極の氷が海に滑り落ちた年とそうでない年とで交互にエルニーニョ傾向が強まったり弱まったりするだろう。

地球温暖化では熱帯の巾が南北に100kmほど広がると予測されている。当然亜熱帯地域の巾も南北に押し広げられる。これらのゾーンの海に溶解している炭酸ガスと炭酸水素イオンは大気中に炭酸ガスとして放出される方向になる。 海からの炭酸ガスの大気放出はさらに太陽の熱エネルギーを取り込み、海からの蒸発をすすめて、水蒸気を大気中へと移動させる。そのことが温暖化速度をさらに早める。

結果として気候の激変をよび、降雨ゾーンの変化を引き起こし森が消失し、草原の位置が変化して、食糧確保パターンを固定している大型動物が生存してゆく基盤が壊れてしまう。ヤンガー・ドライアス期に生じたような急激な寒冷化が生じれば、大型動物はほとんど消滅してゆくだろう。

北極側でも、海面上昇は水深が50mほどしかないベーリング海峡の水深も上昇させるから、北極へ流入する太平洋の水量も増加する。神様のバルブが少しずつ開けられてゆく。その分メキシコ湾流から北上する海水量は減少してゆくだろう。そのためヨーロッパは夏は暑く、冬は厳寒という気候へとシフトする。

北極が冬季に凍結し夏季には消失するようになれば、淡水が北極表面にとどまるため、冬季の深層海水への沈降流も減少する。そのために北極へ流れ込むベーリング海峡の流れも弱まることが予測される。

冬季だけでも北極周辺の降雪面積が広がればその白さから太陽の熱線を宇宙へとはじき返す量が増える。北極やヨーロッパ周辺が一定の白い降雪面積にまでなったときは、地球の温暖化が反転して地球全体の寒冷化への道を歩む道のりのスタートとなる。

地球は炎熱から氷河時代まで多くの温度域を経験している。だから生物は今度も何とかできるさと考えることもできる。問題はこの変化速度が生物の適応馴化速度を超えていることである。地球に巨大隕石が落下したとき短期間に気候の激変があったため、大型動物であるほとんどの恐竜は食糧の確保が出来なくなって死滅した。毛皮を持つねずみみたいな小動物が生き延びて今の人類のもとになっている。生物が生きのびることが出来るとはそういう意味では正しい。

人間でも20-30年の間に、今まで牧畜をしてきた人々が、通常の農業に切り替え、すぐさまイヌイットの狩猟生活に切り替えなければならないという変化である。しかもこの変化で生物の大部分は絶滅の危機に瀕する。赤道の南北では砂漠面積が拡大し地球上の生存可能地域が狭まるため、食糧のある一部の地域に65億人の大部分が流民としてあるいは軍隊を編成して集中するはずだ。

地球上の草本植物はそれでも人の手で適した場所に、場所をかえて植えることができるが、気温の変化、降雨量の変化などに追随できない木本植物は枯れてゆくものが多くなってしまう。

さんご礁に頼る漁業はサンゴの白化で壊滅するから、漁業資源はいわしなどの植物プランクトンをとりまく動物プランクトンを餌に出来る魚だけになる。すなわち、人が頼れる栄養確保は、草と植物プランクトンに限られてくるだろう。植物プランクトンは大部分がマリンスノーとして深海底に沈降する。

もし光が届く海底面積が広ければ、この植物プランクトンを摂食する動物プランクトンが沿岸で増加し、タイやヒラメなどを増産させることが出来る。

サンゴ礁が生じる期間は100年単位と長いため、3年程で出来上がる海藻の海中林で生物種の多様性を維持しつつ、海産物に頼りながら温暖化の大変化をしのぐやり方が、温帯~亜熱帯に属し、農地面積の少ない日本では最もふさわしい準備になると思われる。すなわち、何らかの経済的な方法で光る海底面積を拡大すればよい。貴重な植物の残る山を崩して海面下埋め立てをするような愚は避け、毎年多量に排出される産業廃棄物と建築廃棄物を光る海底作りに当てることが最も現実的な対応だろう。

既存の光る海底を、経済的であるという理由で埋め立てるようなおろかなことをしてはいけない。温暖化が進行している現在では光る海底は日本人にとって宝石であり、子孫の食糧維持の切り札なのだから。

海洋大循環のエネルギー供給は北極だけではない。

南極での海水の沈み込みの力も海流を生み出している。南極周辺海域は陸地で閉ざされていないので、コリオリの力でグルグル南極周辺を回る海流を生み出している。南アメリカと南極の間のドレーク海峡で海流が絞られていて、なおかつ北極からの深層海流がドレーク海峡東側で合流するため押しとどめられて、一部の深層の海流は北に進路を取り、ペルー海流として赤道近くにまで北上する。ここで北アメリカの西海岸を降りてきたカリフォルニア海流と合流して海底地形上の理由から海面に上昇する部分が出てくる。深層海流の湧昇が強いときにはペルー沖は巨大な漁場となる。

この湧昇流の強さは、エルニーニョとかラニ-ニャという名称でよく知られている現象を引き起こす。これらの現象は、北極から沈降する海流エネルギーと南極から沈降する海流エネルギーのバランスで変化し、西に向かう貿易風の強弱で起こる南北の赤道海流の強さなどでも変化する全地球的な現象を地球の一箇所の現象観測で表現したものである。

地球温暖化はこの海流の流れを弱め、地球気温を南北で均質化している巨大な熱量運搬装置の機能が働かなくなる作用をする。

 


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