水説
=古賀攻
毎日新聞 2021/3/3
今や火宅の総務省は、2019年12月にも絶句するような不祥事をやらかしている。
組織的な不正販売が発覚したかんぽ生命に対する行政処分の検討過程で、現職の事務次官が親会社の日本郵政側に内通していた。当時の高市早苗総務相は鈴木茂樹次官に停職3カ月の懲戒を告げ、次官は直ちに辞職した。
処分内容は大臣と郵政行政部長で詰めるのが通例なのに、鈴木次官は本件に限って同席を求めた。数日後、日本郵政の取締役会で「この通り、情報は全部取れている」と自慢げにメールを見せる人物がいた。総務事務次官OBでもある鈴木康雄上級副社長だ。
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2019年07月31日 (水)
竹田 忠 解説委員
きょうは連日ニュースでお伝えしている、
かんぽ生命の保険をめぐる問題です。
この問題で、郵便局で不適切な販売をした可能性がある保険契約は、
これまで見込まれていた数の一気に倍となる、
およそ18万件に増える見通しとなりました。
自分の入っている保険もそうかもしれない、そう不安に思っている人は、
一体どうすればいいのか? 最新の情報をお伝えします。
担当は、竹田 忠解説委員です。
【 普段なじみのある郵便局が、こんな売り方をするとは、と思った人も多いのでは? 】
その通りだと思います。
たとえば、大手の生命保険会社の人が良く言う話しですが、
保険のセールスは大変で、家に行って話しを聞いてもらうまでに、
昔と違って、今は手間ヒマがかかる。
しかし、「郵便局です!」と言えば、とりあえずドアはあけてもらえる。
この違いは大きいと。
こうした郵便局への安心感とか、信頼を、
みずから傷つけた形になっているのでは、と思います。
【 今回、問題になっている、かんぽ生命の保険とはどういうものか? 】
今回、問題になっているのは、かんぽ生命が販売している
養老保険や終身保険などの販売方法で、
実際に売っているのは郵便局なんです。
かんぽ生命が、グループ会社である、日本郵便に手数料を払って
日本郵便が運営している全国2万を超える郵便局で
販売してもらっているわけです。
そのため、今回の問題を受けて、かんぽ生命と、日本郵便、
両社の社長が、先日そろって謝罪会見をしました。
【 謝罪をしなければいけない販売方法というのは、どういうもの? 】
主に三つのパターンがあります。
▼まず、顧客に保険料を二重に払わせていたケース。
どういうものかというと、
たとえば、顧客が保険を乗り換える場合、
普通だと、まず、新たな保険に加入してから
古い保険をただちに解約する、というのが一般的です。
しかし、なぜか、新たな保険に入っても
古い保険を、解約せず、半年以上も解約を先に延ばして
その間、保険料を二重に払っているケースが多数見つかった。
なぜ、こんなことするかというと、
大きな背景にあるとみられるのが、
厳しいノルマ営業と、それを補完するための手当の存在です。
この手当は、郵便局員が新規の契約を獲得したときに
報償金としてもらえる仕組みです。
古い保険をすぐに解約すると、
単に契約を乗り換えただけ、とみなされ、手当は半分しかもらえません。
しかし、新しい契約を結んだ後も、古い契約が一定期間続いていていれば、
(具体的には6か月を超えていれば)それだけ、単純に保険の数は増えるし、保険料もたくさん入りますので、手当が満額に増える、というわけです
▼二つ目のパターンは、なぜか保険に全く入っていない、
無保険の期間がつくられていたケースです。
こちらの場合は、古い保険を解約した後、
その3か月以内に新たな保険に入ると
やはり単なる乗り換えと同じ、とみなされて、手当が半分しか出ません。
そこで、もっと間をあけて、具体的には4か月以上、間が空いていれば、
新規の契約とみなされて、手当が満額もらえる。
これが、無保険の期間ができた背景にあるのではと、みられているわけです。
【 無保険の期間のうちに、もしものことがあったら? 】
そこが問題で、この期間は保険に入っていませんので、
何の保障も受けれられません。
これでは、何のためにそれまで長い間、保険に入っていたのか、
ということになってしまいます。
大きな問題だと思います。
▼そして三つ目のパターンですが、
今説明した、二つ目のケースは、無保険の期間はありましたが、
その後は、チャンと新しい保険に入っているわけです。
しかし、新しい保険に入れずに、
まったく無保険になったまま、というケースがある。
これが三つ目です。
健康状態が悪化したため、
新しい保険の審査に通らず、入れなかったというようなケースです。
【 それでは、この人は困ってしまうのでは? 】
そうです。そもそもこういう場合は、
その人は、そのまま古い保険に入っていれば、
チャンと保障も受けられて、なんの問題もなかったとみられる。
つまり、こういう場合は、乗り換えをすべきではなかった。
なのに、顧客の立場に立って考える、顧客の利益を守る、
という大事な視点が欠けたまま、ただ積極営業をかけたために、
結果、顧客が大変な迷惑を被ることになったとみられるわけです。
こうした三つのパターンを含め、
顧客に不利益を与えた不適切な契約が
合わせておよそ18万件となる見通しなんです。
【 自分の保険の場合もそうかもしれない、と不安に思う人は
どうすればいい? 】
今後の会社側の対応は、大きく2段階にわけて、行われます。
まず、さきほど説明した18万件については、
会社側として、直接、契約者を訪問するなどして重点的な調査を行います。
そして、その調査の内容をかんぽ生命の専門のチームが分析して
問題であることが確認できれば、不利益の解消をする。
たとえば、▼二重払いのお金を返却したり、
▼無保険になってしまった人には、保険をもとに戻したりして、
不利益の解消を急ぐとしています。
さらにもう一つは、
それと並行して全ての契約者、1800万人に対して手紙を送って
謝罪と共に、保険の内容が、本人の意向に沿っているか、
ということを確認して、
問題の全容解明を目指す、としています。
ただ、この一連の調査が完了するまでには
どんなに急いでも、これから数か月はかかります。
そこで、とにかく、自分の場合はどうなのか、早く聞いてみたいという人は、
▼かんぽのコールセンター
0120-552-950
にかけるか、
最寄りの郵便局に尋ねえほしいと会社側では言っています。
最後に、一点、気を付けてほしいことがあります。
それはもし解約する場合には注意が必要、ということです。
調査がすべて終わるまでは時間がかかりますので、
それを待たずに、不安だからということで、
急いで解約してしまうと、本人の自由意志で解約したようになって
その後のチャンとした調査の対象にならないおそれがある。
ここはまず、会社側にキチンと調べてもらう、ということが重要だと思います。
【 今後、この問題、どうなる? 】
実はちょうど、きょう午後、
日本郵政グループ全体のトップである長門社長が、記者会見をします。
ここで、今回の問題の大きな背景となっている
郵便局の厳しいノルマ営業のありかたなどについて
全面的に見直す方針を表明する予定です。
郵便局の信用回復なるか、ここは大きな分岐点だと思います。
(竹田 忠 解説委員)
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「NHKはまるで暴力団」日本郵政副社長が記者団に発言
藤田知也 河村能宏 2019年10月3日 13時34分 朝日新聞
かんぽ生命保険の不正販売を昨春報じたNHK番組「クローズアップ現代+」に日本郵政グループが抗議していた問題で、日本郵政の鈴木康雄副社長(元総務事務次官)が3日、番組の取材手法や報道内容にも問題があったとしてNHKを痛烈に批判した。
「まるで暴力団」とも表現し、抗議を「反省する」とした長門正貢社長とは異なる考えを示した。
クロ現は、続編に向けて情報提供を募る動画を昨年7月にネットに投稿したが、郵政側の抗議を受けた後に削除した。
続編は、かんぽ生命の不正販売の問題が広がった後の今年7月まで放送されなかった。
クロ現は、続編に向けて情報提供を募る動画を昨年7月にネットに投稿したが、郵政側の抗議を受けた後に削除した。続編は、かんぽ生命の不正販売の問題が広がった後の今年7月まで放送されなかった。
鈴木氏は3日、野党の合同ヒアリングに出席し、かんぽ問題などについて説明した。顧客に不利益を与えた問題では「申し訳ない」と謝罪した。一方で、NHKへの抗議問題では「(動画は)おかしいと今も思っている」「言われっぱなしで構わないわけじゃない」などと不満をこぼした。
合同ヒアリング後、記者団が国会内で「いろいろ思うところがあるのか」と問うと、鈴木氏は「ありますよ」「今日は言わなかったけど」と切り出して話し始めた。
鈴木氏は、NHK側から「取材を受けてくれれば動画を消す」と言われたと説明し、「まるで暴力団と一緒。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ、俺の言うことを聞けって。バカじゃねぇの」と続けた。