感染症の拡大を予測し, 感染対策を考える上で重要なのが, 感染症の潜伏期間(incubation period)と発症間隔(serial interval)である。潜伏期間は感染した日から症状が出現するまでの期間を指すが, COVID-19の場合, 患者によって1~14日まで幅があると言われている。感染拡大初期に実施された7研究の平均潜伏期間は1.8~6.9日であり(ただし, 6研究の平均潜伏期間は5日以上)2), 中国のメタ解析結果からは5.08(95%信頼区間:4.77-5.39)日であった7)。
大部分の症例が感染から14日以内に発症しているという事実を基に, 多くの国で感染後2週間の隔離が実施されている。
2020年12月に米国疾病予防管理センター(CDC)は, 継続した調査の必要性や隔離後の感染リスクにも言及しつつも, 隔離中に症状がなければ, 隔離期間を10日間に短縮する方針を発表した。
これは, 14日間の隔離による個人の肉体的, 精神的, 経済的負担の低下や, 地域全体のコンプライアンスを高めることを目的としている。しかし, 10日間の隔離後周囲へ感染させるリスクは低いものの, 1.4%(範囲:0.1-10.6%)程度のリスクは残るため, 14日間の継続した健康観察とマスク着用, 手指衛生といった薬剤以外の介入(non-pharmaceutical measures: NPI)の必要性についても言及されている8)。
発症間隔は, 感染連鎖した一次感染者の発症から二次感染者の発症までの期間であるが, これまで7つの研究結果から平均4.0~7.5日であると推定とされている2)。
また感染拡大初期に特定された28ペア(感染者-被感染者)の解析からは, 4.6(95%信頼区間:3.5-5.9)日と推定された9)。
COVID-19の発症間隔は, 潜伏期間よりも短い傾向にあり, これは二次感染者への感染伝播が発症前の潜伏期間中にも起こっていることを示している。
無症候期(感染から発症まで)の感染者から二次感染した割合が44%(95%信頼区間:30-57%)を占めることもこれまで報告されている10)。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ウイルス量のデータも発症日をピークにその後漸減しており, 発症前後の感染力の強さを支持する結果であった10)。
発症前に会食に参加し二次感染を発生させた事例や, 家庭内感染での感染率の高さも無症候期の感染性と関連しており, 発症後の入院措置や自宅待機だけでは感染拡大を防ぐことは難しいため, 濃厚接触者に対する健康観察と行動制限や, 地域や国全体の行動制限が感染拡大防止の観点からも重要である。
おわりに
COVID-19は, これまでのコロナウイルス感染症より強い感染力を示し, 潜伏期間中や無症状者からの感染リスクが感染対策をより困難なものとしてきた。
これまで, 流行状況に応じて, COVID-19の感染リスク低減のため, 3密(密集, 密接, 密閉)を避ける感染拡大防止や新しい生活様式普及の提言や, 緊急事態宣言やGoToキャンペーンなど, 人の流れにかかわる政策が発出されてきたが, 継続して感染の流行状況や感染対策の効果を感染者数や検査陽性率, 検査数やRtなどの多面的な指標でモニタリングし, 適切な感染対策を推し進めていく必要がある。
新型コロナウィルス感染で無症状・無症候の方とは
新型コロナウィルス感染において有症状というのは皆さんもご存知の通り、味覚や嗅覚がなくなる、発熱、咳、倦怠感などそういった症状が一つでもある方は有症状となります。新型コロナウィルス感染において無症状・無症候とはそのような症状が全くない、無自覚の方のことです。
そのような人達はまさか自分が感染しているなんて考えもしないですよね。
新型コロナウイルス感染で無症状・無症候の方の割合
新型コロナウイルスが流行し始めた頃は無症状・無症候の人は感染している方全体の8割くらいいると言われていました。ですが、様々な研究の検証からこの数値は実際に17〜20%であることがわかりました。つまり実際に感染している方の5人に1人・20%以下の方が無症状・無症候だったということです。以前言われていた8割からすると無症状・無症候の方はだいぶ少ないということがわかります。
無症状・無症候の方はほんとにずっと無症状なのか
無症状の感染者と言われて陽性になった方は果たして本当にずっと無症状のままで何も症状が出ないのでしょうか。実はPCR検査無症状の陽性と判明した方の49%の方が何かしらの症状が出る有症状に移行していくことが最新の論文からわかりました。
無症状の方と有症状の方の感染する力の違い
BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)では感染率の違いをとあるグループで比べた時、無症状の患者の感染率は有症状の患者に比べて3倍から25倍低いということがわかりました。ある論文では3倍低いが、とある論文では25倍低いというようにいろいろなデータによって差が出ています。調査の仕方が一定ではないので全く同じにはならないとは思います。これは要するに無症状の人から移るという可能性は低いということです。それだけ有症状と無症状で感染力の違いがあり、有症状の患者からの感染の方が圧倒的に強いということになります。これは12月18日のランセットの論文においても強調されています。ランセットの論文では3.85倍有症状の人の方が感染力があると言われています。BMJの方では3倍から25倍の差があるということが言われていることから、その結果に矛盾しないですよね。つまり有症状の患者が圧倒的に移しやすいということがわかります。
無症状の人が多いからその人たちから移されるのではないかと思い外出を控えている方も多いと思います。ですが、結局のところ無症状の人の割合も感染者の割合の5分の1程度であり、感染力も先述のとおり非常に弱いということから、無症状の人たちを恐れて必要以上に人混みを避ける(人混みを避けるのは大切ですが)というよりも発熱や倦怠感や味覚障害などの有症状の人が出たらとにかくその人に近づかないということの方がずっと大切です。
現在東京は1日感染者が2000人を超えておりすごい勢いで広がっております。全国的にもかなりの人数が感染してますが、これは無症状の人が広げているというよりも有症状の人が広げていると考えた方が良いでしょう。
今後注意すべきこと
この論文から言えることは、とりあえず熱、咳、倦怠感、嗅覚味覚障害などの有症状患者とは絶対に濃厚接触をしないということです。濃厚接触とは、感染者と2メートル以内に30分以上一緒に過ごすことと定義されています。
繰り返しになりますが無症状の人をいたずらに恐れてビクビクするよりも、有症状の人を警戒することに意識を向けましょう。
また、コロラド大学医学部のデビッド博士がマスクの有用性を有名なUCHeathという雑誌で書いています。マスクの着用を100%に近づければ近づくほどこの感染の急増から早く抜け出せるとの内容でした。マスクはそれほど有用であると説いています。
当たり前なようですが、マスクをして、人混みを避けて手洗いうがいをしっかりとすることが感染予防につながるということです。今後も日本国民が一致団結して新型コロナウイルスの感染予防に努めていきましょう。