さむらい小平次のしっくりこない話

世の中いつも、頭のいい人たちが正反対の事を言い合っている。
どっちが正しいか。自らの感性で感じてみよう!

タクシードライバー日記 どちらまでですか?⑧ 『高輪の女』

2023-04-20 | タクシードライバー日記


こんにちは

小野派一刀流免許皆伝小平次です

小平次は、今の生業に就く直前、タクシードライバーを4年半ほどやっていたんです
その時のことを、インド放浪記風、日記調、私小説っぽい感じで記事にしていきます

本日は「高輪の女」です

*****************************


 タクシードライバーの多くは、それぞれ『主戦場』のような地域を持っている。東京23区は広いのだ、得意な地域、苦手な地域、客を拾うルートなど人によって様々だ。どこの地域でも稼ぐようなオールラウンダーもいるが、少数である。

 おれの主戦場は、銀座を中心とした中央区、隣接する港区、江東区、少し離れて品川区、主にベイエリアだった。タクシーは、客に言われた目的地へ行くのだから、自分の苦手地域や、狙っていた走り方、コース、思い通りに行かないことも当然ある、苦手な地域でも、貪欲に客を拾い、できれば客を乗せながら、得意地域に戻るのがベストだ。

 思い通りに行かないとしても、大まかな一日の走り方の流れ、のようなものも人それぞれだ。おれのいた営業所は、大田区の外れ、多摩川を渡ればそこは川崎、神奈川県、そんな場所にあった。
 朝、八時頃、営業所を出たおれは、まず環八から第二京浜(国道1号)に入り、都心を目指し北上するのが定番だった。第二京浜を使って北上するのは、この国道は、途中、地下鉄都営浅草線の終点、西馬込駅があり、そこから環八以南まで電車の駅が無いのだ。だから通勤時間帯に頭を都心に向けて走れば、高い確率で『西馬込駅まで』という客を乗せられるのだ。ワンメーター、710円(当時)だったが、まずはそこで弾みをつけ、さらに北上しながら客を乗せつつ、官庁、大企業、大商業施設のひしめく都心に入れれば最高なのだ。

 ある日のこと、日中、都心から中原街道、武蔵小山付近まで飛ばされてきたおれは、再び主戦場へ戻ろうと、そこから第二京浜方面へ向かう、第二京浜から五反田駅付近、ソニー通りを御殿山、八ツ山橋の方へ上る、直進すれば品川駅方向、おれは高台の頂上で左折、片側一車線ずつの二本榎通り、高輪付近へ入る、この時間帯ならば、品川駅前や国道よりも客が拾える、と考えてのことだ。

 少し走ると、狙い通り、女が手を上げる、少しぽっちゃり目のショートヘア、赤基調のやや派手目なワンピースに薄手のカーディガン、歳の頃はアラサーか、少し上くらい、おれは車を停める。

『おまちどおさまでした、どちらまでですか?』

『晴海のトリトンスクエアまで、少し急ぎめでお願いします』

 おれの頭の中でルートが浮かぶ、急ぎめならすぐ先の高輪警察を曲がり、坂下の国道を走った方がいいだろう、ルートの確認を女にする、最初にこれをやっておかないと、後で遠回りをした、などとトラブルの原因になる。

『それでは、この先、高輪警察署の交差点を右折、そのまま第一京浜から大門の交差点で右折、海岸通りから汐留を抜け、築地四丁目の交差点を右折、そのまま真っすぐトリトンスクエア、のルートで宜しいですか?』

『お任せします』

 まず、確実にこれが最短ルートだ、おれはメーターを入れ走り出す。女に告げた通りのルート、高輪警察署を右折、坂を下り第一京浜(国道15号)に突き当たり左折、片側三車線の道路、車線を巧みに変更しながら、女の『少し急ぎめ』に応える、さらに大門の交差点を右折、浜松町駅を通過し海岸通りを左折、同じように車線をスイスイと変えながら、汐留、電通本社から新大橋通り、朝日新聞本社、国立がんセンター、築地市場を横に見ながら築地四丁目交差点を右折、晴海通りに入り、あとはまっすぐ、順調だ、……、と思ったら晴海通りが大渋滞、しかもかなり酷い、信号が何回か変わってもほんの少ししか進まない、普段も渋滞することのある通りだが、いつにも増して酷い、事故でもあったか、ついに女がしびれを切らす。

『ちょっと!! 急ぎめでって言ったのに! なんでこんな混んでる道で行くのよ!』

『申し訳ございません、ルートはこの道で最短なんですが、この先の勝鬨橋付近で事故でもあったのかもしれません、橋を渡り始めてしまうと抜け道などに回避できないので混んでるのかと思います』

『えっ! なに、橋って? なんで橋なんか渡るのよ! いつもは橋なんか渡らないわよ!!! 遠回りしてるんじゃないの!!!?』

『あっ、いや、そんなことはございません、このルートが最短です』

『最短だろうと何だろうと、いつもは橋なんか渡らないって言ってるの!』

『あの、お客様、晴海ふ頭は人口の島ですので、必ずどこかの橋を渡らなくては行くことができません…』

『し、し、知らないわよそんなこと! 島だろうがなんだろうが、いつもは橋なんか渡らないの!!!!』

晴海トリトンスクエア

勝鬨橋

 もうめちゃくちゃである、女は地理に弱い人が多い、と聞いたことがあるが、橋を渡らない、は、無理があるだろう、水陸両用タクシーでも使ってるのか? バックトゥザフューチャーのような空飛ぶタクシーでもあるのか? と突っ込みたくなったが抑えた。

『お客様、少し遠回りになりますが、もう一本向こうの橋、佃大橋を渡ればトリトンスクエアの裏手、駐車場入り口から車寄せまで行けますけど、お急ぎでしたら料金はかかりますがいかがですか?』

『それで行けるならそっちで行ってよ!!!』

『かしこまりました』

 おれは、晴海通りをどうにか左折し、聖路加病院付近を走り、佃大橋の通りへ入り、橋を渡り、無事にトリトンスクエアの裏手に周る、駐車場入り口から車寄せまで到着、メーターは4,580円、遠回りした分、予定より結構多い、女はぶつぶつ文句を言いながら金を払い、車を降りた。

 今回のことは、おれは一切悪くない、値引きをしてやる必要もないし、仮にタクシーセンターにクレームが行ってもちゃんと説明できる、少々気分の悪い客だったが、まあ、日中の時間帯の一発4,580円はでかい、それに何と言っても、どれだけ嫌な客であっても、もう会うこともないのがタクシードライバーと言う仕事の魅力だ。俺は気を取り直して銀座方向へ車を走らせた。

 数日後か、数週間後か、日中、おれは五反田付近から、二本榎通りを流していた。ふと前方に立つ女が手を上げた。

ん…?

んん?

あっ!

あの女だ! あの時の水陸両用女だ!!

ちょっとぽっちゃりめ、ショートヘア、少し派手めのワンピース、歳の頃はアラサー、か、ちょい上くらい、間違いない

ゲゲ! 乗せたくない、おれは一瞬回送にしようかと思ったが、手を上げられた後にそんなことをすれば、乗車拒否になってしまう、乗車拒否は罰が重いのだ、おれは平静を装い車を停めた。

『おまちどおさまでした、どちらまでですか?』

『コロンビア通り、コロンビアレコードのあたりまでお願いします』

『かしこまりました、では、この先左折し、魚籃坂下から六本木通り方面、ゴルフパートナーのところで左折、赤坂方面、でよろしいですか?』

『お任せします』

 おれはメーターを入れ、やや緊張気味に走り出す、まあでも今回は大きな『橋』を渡ることもないので問題ないだろう、無事、目的地に到着、女は金を払うと

『ありがとうございましたぁ♡』

 笑顔を振りまき降りて行った。

 そう、前回の日記で、これまでやっていた得意先を持つ営業マンとは違って、どんな嫌な客でも、二度と会うことはないのだから気楽だ、と言ったのだが、日々主戦場を中心に、同じような得意エリアを走っていると、こうしてまれに同じ客を乗せることもあるのだ、まあ、それでも客の方はいちいちドライバーの顔など覚えてはいない。


*******************************つづく
今の感想
トリトンスクエアまでのルート、今は勝鬨橋の下流にもう一本橋ができて、新橋から汐留までの道も開通していますので、違ったルートになるかもしれません、でも、やっぱり橋は渡りますww 東京の街はひっきりなしに変わります、地下鉄が延長すれば駅も増え、知っていた大企業のビルがいつの間にか別な会社の名前に替わってなんちゃらタワー、とか呼ばれたり、なかなか大変です





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押し売り民主主義

2023-04-10 | 社会・経済



こんにちは

小野派一刀流免許皆伝小平次です

「民主主義」

ってなんだ?

こんなことをテーマに、学者が議論したら多分永遠に結論なんか出ないんでしょうね

小平次にもよくわかりません

多分、市民国民の選挙によって政治家が選ばれ、その政治家が悪さをすれば交代させることができて、怠けてたら批判することも許される言論の自由がある、これくらいのことが守られていれば民主主義、と言えるのかもしれません

プロレタリア民主主義、なんて言葉も聞いたことがありますので、やはり、議論をしたら哲学的な領域になるかもしれません

以前の記事でも少し書いたんですが、ずっと前に読んだ本で、詳しいことは忘れちゃったんですが、民主主義の象徴、のような国、アメリカでこそ専制政治が行われている、とか言った社会学者がいたんです

記事を書きながら調べてみたら、それっぽい記事を見つけました

『自由が奪われる? 19世紀の天才政治家が見抜いた「アメリカ民主政治」の脅威』

社会学者じゃなくて政治家でした、それも結構有名な人なんですね(恥)

今の日本を見ていると、わかるような気がします

見た目は選挙もあり、言論の自由もある、開かれた民主主義国家のように見えますが、実のところ、メディアなどに操られ、どう考えても危険なワクチンを、大多数の人がなんの疑いもなく打ち、それに反対すると一方的に陰謀論者扱いをして反論などは許さない、受け入れない、自由を奪われても多数派の中で安穏としている、完全に洗脳されつくしている、そんなだから政治家と金持ちはやりたい放題、こんな一方的な世の中は、確かに多数派による専制政治です

小平次は、そもそも選挙で選ばれた政治家による政治が最終理想形、とも思っていませんし、民主主義、自由の国、その代表のような国のアメリカに、幕末から現在に至るまで、日本がされてきたことを思うと、アメリカこそこの世で一番ひどい国だ、と思っています

イギリスを中心とした移民、多くは囚人、元囚人、宗教上の異端者、ろくでもない連中が大半を占める移民が、元々住んでいた人たちを殺しながら西へ西へ、いつの間にか国の体をなし、イギリスから独立、その後は直接、間接に絶えず他国と戦争をしている、戦争の火種を撒いている国です

日本は、「江戸時代」、外国との接触、貿易を最小限に抑え(貿易量は決して少なくない)、食糧自給も経済も、コメを中心として自己完結できていた、概ね庶民は平和で、政治は軍人である武士が行う

すごい豪商の金持ちが、心の中では三十俵二人扶持の下級武士をバカにしたとしても、政治には口を出せず、最終的には武士に従う、その武士は高潔であることを求められ、天皇の大御宝である民を守る義務がある、だから平和であったし、今のように国全体に理不尽がまかり通るようなことはなかったのだ、と思っています

逆に、イギリスなどは、産業革命以降、商売人が力を持ち、商売人が政治を行い、政商一致のもと、商売人の国になって行く、商売人の国だから、道徳より儲けが大事、それが世界中に蔓延して行った

そして幕末、日本はその商売人の支配する世界へ、不平等極まりない世界へ、アメリカに大砲ぶっぱなされて、無理やり引き摺りこまれた

一方の国は多くの植民地を持ち、タダ同然の原料とタダ同然の労働力で物を作り、一方は適正な原材料費を払い、適正な労働に対する対価を払って物を作る、これでは掠め取られる一方です

それでも日本は国力をつけ、人口を増やし、経済も発展させていった、そもそもの経済的不平等、植民地政策などの根本的な原因は、白人による人種差別にあると理解した日本は、第一次世界大戦後のパリ講和会議で、「人種差別撤廃提案」を訴え、賛成票が反対票を上回ったにもかかわらず、議長のアメリカ、ウィルソン大統領によって難癖をつけられ、強引に否決された、その後は満州鉄道などの利権をめぐり、日米の対立、とは言ってもアメリカの横暴によるものと思っていますが、ついには開戦、アメリカは空爆で数十万人の民間人を虐殺し、核爆弾まで投下したのです、世界史上、類を見ない大虐殺です

戦後は、戦争を起こしたのは日本人だ、悪いのは日本人だ、と洗脳し、食料自給率を下げさせ自国の農産物を売りつける、その分工業化した日本が工業製品の輸出で優位に立つと、大統領自ら日本にやって来て、アメリカの農産物を買え、とノルマまで課す

そして今、おかしな疫病が流行っていると、危険なワクチンをばら撒き、自国で消費した分の金は日本に在庫処理をさせることで補い、ウクライナに兵器を大量に送り、新しい兵器を作り軍需産業を潤わせ、それに使った金は、旧式兵器を大量に日本に買わせて補填する

いやいや、酷い国にもほどがあるでしょう

アメリカのイラク侵略、大量破壊兵器をイラクが隠し持っていると言い張り軍事侵攻

「イラクの民主化のために」

よくそんな言葉が使われていましたが、イラクが古のメソポタミア文明以来、「民主主義」国家であったことなどありません

それがいいか悪いかは別として、アメリカが押し付けることではありません

アメリカのイラク侵略から、今回のロシアのウクライナ侵略まで、一貫して侵略戦争を批判をしている人は少数です

アメリカの時は正義で、ロシアの時は悪、で、次にアメリカがやった時は?

ロシアのウクライナ侵攻について、アメリカも悪い、とか、原因はアメリカにある、などという論調を時折見かけますが、「どっちもどっち論」で今回のロシアの侵攻を見てはいけない、という批判があります

小平次はロシアの軍事侵攻を肯定することもありませんし、どっちもどっちと思っているのでもありません

どっちもどっちではなく、常にアメリカが悪い、と思っています

また、今回のロシアの軍事侵攻に対し、なぜプーチンさんがこのような決断をしたか、ということを考察するような論に対しては、侵略は何があっても悪だ、と、その原因追求さえもタブー視するような傾向があります

どんな凶悪犯罪でも、その動機の解明は犯罪抑止の視点からも必要だろう、と思うのです

侵略は悪に決まっていますが、そこに至るまでの経緯としては、アメリカと『ダボスマン』たち商売人はどれだけひでーことをしてきたのだろう、と思います

ロシア周辺でひっきりなしに『民主主義を護れ』と、商売人が若者を中心とした市民団体(プロ市民?)に金を使って煽り、民主主義の押し売りをやっています

これらのことは、また別に記事にしたいと思います

そして、この商売人とバイデンは、実際のところウクライナの人たちがどれだけ死のうが関係ない、不倶戴天の敵、プーチンを殺せればそれでいい、そんな風に見えています

今回は、たまたまそれが『正義』に見えているだけだと思います

で、実際の今の戦況は、最近あのモサドが分析して、トルコがその情報を発表したようなので載せておきます




さて、これが事実とすれば、どうすればいいのか、小平次にはわかりません


御免!












 
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大都会でスズキ釣りをしてたら…、エエエエエエーーッ!ッてなお話(再掲)

2023-04-04 | 釣り


かなり多忙につき、過去記事、2015-11-18 、8年前の記事を再掲します

ちょっと長い記事ですが、宜しくお願いします

*****************************************


こんにちは!

小野派一刀流免許皆伝小平次です


本日は久々釣りのお話

少々長いのですが、最後まで読んで頂ければ幸いであります


さてこの小平次、釣りが大好きであります

どれくらい好きかと言えば、まあ、釣りのない生活なんぞ生きる意味もない

ってくらいに好きであります

釣り全般、どんな釣りも好きですが、最も好きな釣りは小平次の聖地「伊豆半島」某所にての、手漕ぎボートによる沖釣りであります

そこは、岸から数十メートル離れると一気に深くなり、少し沖へ繰り出せば水深70m前後の深場の釣りができるのです

ですから、通常手漕ぎボートの釣りなんぞではお目にかかれないような魚、オニカサゴやマダイ、アマダイなどを割と手軽に狙う事ができるのです

秋のシーズンになれば、ルアーによるジギングで、イナダ、サバ、カンパチ他の青物も中々に楽しめます

逆に浅場では、初夏のころシロギスの数釣りも楽しめますし、釣ったキスをエサにすればヒラメやマゴチなども結構釣れるのです(一度五月ころ、キスの活きエサに80cm級のカンパチがかかったことも)



さて、好きな釣りは今申し上げた通り、伊豆某所での手漕ぎボートの沖釣りですが、最もよくやる釣りと言えば、ルアーでのスズキ釣りなのであります

それは何より手軽にできるからってことでありますね

小平次は元々藤沢在住で、家でルアー結んで玄関を出ればすぐにルアーを投げられるって環境でしたから

また、ちょっと自転車を走らせれば、鎌倉付近の海岸でヒラメやマゴチ、江の島の小さな漁港でメバル、裏磯で回遊魚等々


ルアーでなくても、投げ釣りでキスやメゴチ、家の前の川ではウナギ釣り、色々と遊べたのでありますよ


ところが!

諸事情ありまして、3年前から東京での生活をせざるを得なくなりまして


東京での生活…(;_:)


最も心配なことはやはり釣りのことでありました

もちろん東京湾に魚がいないなんてことはありません

むしろ日本有数の魚の豊富な海だと思います

その昔、江戸時代、房総沖のタイが江戸湾に入ると、一味美味くなる、と言われたそうです

その理由は、多数の河川が豊富な栄養を含んだ水を運んでくるからだそうです

実際小平次も、藤沢にいた頃から東京湾でも釣りをしておりました

特に梅雨の時期、夜のアナゴ船に乗って海から羽田空港の夜景や工場地帯の異形を眺めながらの釣りなんて格別でありますね


しかしですね、東京湾に魚が豊富だと言っても、それは船での場合の釣りならいいんですよ

岸からの釣りってことになりますと、東京湾の護岸は横浜から川崎、船橋から千葉付近まで、そのほとんどが工場とか企業の敷地になっておりまして、釣りどころか立ち入ることすらできないのですね

ですから、いくら魚がいると言っても、釣る場所が著しく少ない、ってことなのであります(羽田空港から大井付近は割と多い)

小平次の住んでいた相模湾よりも確実にその数が多いであろう魚種もいるのですが、限られた釣り場でみんなが釣るもんですから、アイナメやカサゴと言った根魚は、もはや岸から釣るのは一部を除いて難しい感じなのであります


(こんなイシガニなんかは晴海や有明あたりで結構獲れたりはします(味噌汁で抜群にウマイ!))

つまり釣りのできるような岸辺は、大体場荒れしてる感がどうしても否めません

そんな状況ではありますが、それでも東京湾岸どこでも手軽に狙える魚が二種ばかりいるのです

「スズキ」と「ハゼ」





でありますね

この二種だけは、東京湾こそ、その数が日本で最も多いであろうと思われる魚達であります

昔からルアーでスズキ釣り、秋のハゼ釣りを楽しんでいた小平次としては、ルアーでヒラメやマゴチ、といったうれしい外道が釣れないのはちょいとばかり寂しいですが(沖では釣れますよ)、まあ仕方ないかな、という感じではあったのです

さて、現在の小平次ですが、海までは少々遠いものの、隅田川のほとり、ことこのスズキとハゼの釣りについてだけは玄関出ればすぐ釣り場、ってな環境に住んでいるのです






隅田川と言えばその昔

「は~るの~うらぁらぁの~♪」




と歌われた美しい川でありましたが、当然今はその面影はありません

それどころか、昭和の半ば過ぎ、高度経済成長の犠牲となり、汚染され、一時期はまさに「死の川」と成り果てていました

家族で千葉の親戚のところへ向かう際、父親が言うのです

「隅田川を渡るぞ!鼻をつまめ!」

そうなのです

まるで、カレーシチューを煮込んでいる時のようにボコボコと川底からメタンガスが噴き出てそれはそれは臭い異臭をはなっていたのでありました


汚染された川

その昔「ゴジラ対ヘドラ」なる映画がありまして



公害が生んだヘドラが日本を襲いゴジラと闘うのですが、全体的にサイケデリックな雰囲気が、ゴジラシリーズの中でも特に異彩を放つ作品です

音楽も異彩を放ち、「ダダダッ、ダダダッ、ダダダダダダダダダッ♪」という例のゴジラのテーマは一度も流れることなく、当時のサイケなゴーゴー喫茶で歌われる

「か~えせ~、か~えせ~、か~えせ~、か~えせ~、あおーいうみをか~えせ~♪」

と言う歌は秀逸であります


「かえせ!太陽を」クリック
       ↑
ちょっと聴いてみてください シュール!


そんな公害の犠牲と一時は成り果てた隅田川でありましたが、現在はスズキも釣れますし、ハゼ釣りをしているとウグイなんかも結構釣れて、テナガエビやモクズガニなんかも小平次は確認しております


(女房殿とチョイ投げで釣ったハゼ)


釣った事はありませんが、ウナギも間違いなくいるでしょう

ヘドラもあの世でうかばれたことでしょう


さて、先日のことであります

夕方、まだ明るいうちに隅田川へと繰り出し、スズキを狙っていつものようにルアーを引っ張りながら、下流に向かって護岸の遊歩道を歩き始めたのでありました

テクテクトローリング、いわゆるテクトロですね

隅田川の護岸は、千住あたりから河口の佃付近まで、途中途切れたりしながらもずっと、綺麗に整備された遊歩道が続いているのであります



あまりに整備されすぎていて、逆にポイントが絞りづらいのですね

河口まで何本もある大型の橋の橋脚周りや、夜ライトアップされた橋の光と影の境目だとか、ルアーの教本に出ているようなポイントも、まああるにはあるのですが、大概先行者がいたり、そういう分かりやすいポイントはやはり場荒れ感が否めないってことがあるのと、そもそも小平次は一か所で粘る釣りがあまり好きではなく、ルアーの場合「ラン&ガン」ポイントからポイントへどんどん移動するのが好きなのです

また、慢性的運動不足である小平次は、ウォーキングがてらルアーを引っ張りながら護岸を歩いているのです

小平次の家の近くから、昼も夜もにぎわう浅草駅付近まで歩いていきます(往復4km弱くらい)


この日小平次が釣りを始めた時、潮回りは「下げ」でありまして、当然川の流れは下流に向かっていますから、ルアーは流れに対して「順」方向です

少々早めに歩かなくてはキビキビルアーが泳ぎません

以前は潮回りやルアーのカラー等、結構気にしながらやっていましたが、今はバイブレーションプラグ一つ、根がかりで失ったりするまでは変える事はしません

それで充分釣れているからです


この日は歩き始めてからすぐにアタリがありまして、グイッと大きく合わせを入れますとグングンと手応えが伝わります

最初のエラ洗いをしのいだ後、少々糸を出されましたが適度にやりとりを楽しみ寄せて来ます


この日一尾目 45cmくらいかな


透明度の悪い川だからでしょうか

隅田川は昼夜問わず良く釣れます


今年の春でしたかね

桜橋付近で、まだスズキを釣った事がないという少年2人がルアーを投げてまして

小平次にどうやったら釣れるのか聞いてくるので

「こうやって引っ張って歩いていれば釣れるよ」

とアドバイスしたら、少年たちは小平次の数メートル後ろをルアーを引っ張りながらついて来たのでありました

岸から5メートルほど離れた大きく太いゴム製の杭に係留してある屋形船の間にさしかかった時

「ここは良く釣れるから何往復かしてみるといいよ」

と教えてやり、小平次はそのまま上流に歩いて行くと

「センセーッ!センセーッ!」

少年の一人が大声を上げながら駆け寄ってきます(センセーッて…(笑))

その先を見るともう一人の少年が、屋形船付近で中々に竿をしならせているではありませんか

小平次は急いで戻り、必死にやりとりする少年にアドバイスしながら無事にタモ取りしてやり、興奮する少年たちとハイタッチを交わしたのでありました




さて話を戻します

最初の一尾を釣った後はしばらくアタリもなく、多くの観光客で賑わう浅草付近まで歩いてきました

復路に入ります

今度は流れに対して「逆」でありますので、少し歩くスピードを落とします

途中言問橋付近が空いていたので、ちょっとだけ橋脚付近を投げてみますが、反応がないので再びテクテク

このころには日も沈みすっかり暗くなっておりました



しばらくそのまま歩きまして、春に少年達とハイタッチをした小平次にとっての一級ポイントである「屋形船付近」へと戻って参りました

この辺りまで戻ると、観光客はおらず、犬の散歩やジョギングをする地元の人がチラホラいるだけで随分と静かになり、辺りも暗くなります

一級ポイントに入り、少々緊張しながら歩いていると

「グンッ」

竿がしなります

遊歩道の柵越しに出していた竿をアオり、大きく合わせますと、いきなりのエラ洗い!

その後も中々の抵抗を見せ、ドラグがうなります

先ほどのよりも大きそうです

しばらくのやりとりの末、無事ランディング



65cmくらいですかね

この辺りでは最大クラスです(ちなみに小平次のレコードは藤沢で釣った91cm)

いやあ楽しいです!


しかし、この日の驚くべきハイライトはこの後にやってまいります

その後再び歩き始め、遊歩道が一度途切れる付近までもうすぐ、というところまで戻ってまいりました

ここまで来るとさらに人は減り、辺りも暗いのです

この日の小平次の「散歩」はそろそろ終わり…

のはずでした

隅田川の遊歩道の護岸には、ところどころに万一川に落ちたりした人のために、緊急用の木製浮き輪や、金属製の梯子(プールとかで上り下りするようなやつ)、緊急係留用のためのものか、金属製の細い係留杭などが備え付けられております

ルアーを岸際ギリギリを引っ張ってきますので、注意していないとそういう梯子なんかにルアーを引っかけてしまいます

ですから歩きながらも岸際の水面に気をつけながら歩いているわけです

もうそろそろ終わり、そう思いながら岸際を注視していた時でした


そこにあるはずがないもの?

が小平次の視界に飛び込んできます

「えっ…?」

小平次は何が何だかわかりません

「えっ?えっ…?」

小平次の視界に飛び込んできたものが何であるか

理解するのにしばらく時間がかかりました(実際は一瞬でしょうが)


小平次の視界に飛び込んできたもの、それは、胸の辺りまで川につかりこちらを見つめている初老のオヤジだったのです

夜の闇に包まれた川の中から小平次を見つめるオヤジと、目が合ったのです


「えっ?…、えっ、ええええええええええええええーーーーッ!!!???」

驚く小平次を見つめ、オヤジは何だかニコニコしています

「…!、…!、」

「…、えっと、…えっと…、何、…やってるの?」

何で最初に言った言葉がこれなのかと申しますと、「この大都会の夜の川の中から自分を見つめるオヤジ」の意味がわからなかったのです

この辺りには、いわゆる「ホームレス」さん達がブルーシートで「家」を作って生活しているのですが、昔、やはり夜に横浜の運河でスズキを狙っていた時、ホームレスの人たちがギャング針仕掛けでボラを引っ掛けて、釣ったボラを焼いて食べているのを見たことがあったのです

小平次の頭の中は、一瞬ではありましたが、このオヤジは岸際のモクズガニなど、食糧を捕ってっいるのではないか、とか

時折都の職員がウェーダーを履いて川に入り、水質や生物の調査をしている姿なども目撃してたものですから、そういう人の類ではないのか、とか、そんな考えがそれこそ走馬灯のように巡っていたのでありました


「…、何…、やってるの?」


また聞いてしまいました

オヤジはニコニコしているばかりです

そのオヤジが普通のセーターを着ていること、頭まですっかりびしょ濡れな事、係留用の細い金属杭に足を引っ掛け、流されないように両手で必死に遊歩道の柵の一番下をつかんでいる事

それらの様子で、ようやく小平次の頭の中で目の前の事実が繋がり始めます

「…、もしかして、…落ちたの?」

コクッコクッ!

オヤジが大きく頷きます

「えっと…、それは…、助けないとダメってことだよね…」

コクッコクッ!

おかしな会話ですが、本当に本当に

「夜の川の中のオヤジ」

の意味がわからなかったのです

隅田川の護岸は殆どが遊歩道であり、全てに大人の腰より少し高いくらいの柵があります

橋の歩道だって柵があります

それ以外の所は高い金網で仕切られ立ち入り禁止です

ですから、なにかよほど通常と違う行動をとらなければ川に落ちることはあり得ないのです(小平次は時折網を越えていますが…内緒!)

そのために「夜の川の中のオヤジ」を理解するのに時間がかかったのかもしれません

「こりゃ大変だ!」

小平次は竿を置き、柵を乗り出しオヤジの両腕を掴んでみます

よほど恐ろしい目にあったのか、オヤジの柵を掴む手の力は尋常ではありませんでした

「ちょっと、がんばって! オレの手掴んで!」

ゆっくりとオヤジの「頑な」な指を解きながら、どうにか手を繋ぎます

しかし、水を吸ったオヤジは思いのほか重く、柵越しに乗り出し、体力を消耗しきったオヤジを引き上げるなんて、相撲取りでもなければ無理そうでありました

もう少し潮が満ちていれば足を上げられたかもしれませんが、残念ながら下げ潮です

オヤジも水位と共に下がって行く一方です

「無理だな…、オヤジさん、だれか呼んでくるから、もう一度柵を掴んで踏ん張ってて」

そう言って小平次は、ゆっくりとオヤジに柵を掴ませようと試みます

しかし、今度はオヤジ、小平次の手を「頑な」に掴んで離そうとしません

「大丈夫だから、ゆっくり…、柵掴んで…」

小平次も慎重です

隅田川は見た目よりもずっと流れは速いのです

下げ潮で潮位が下がっているとは言え、この岸際でも水深はまだ2m以上はあるはずです

万一手が離れてしまえば、体力を失ったオヤジは、かつてヘドラが潜んでいた暗い川底に手を上げながら沈んでいくことになるでしょう

うーん…、それはちょっと、かなり後味が悪い

それでも、慎重に、なんとかもう一度オヤジに柵を掴ませることに成功すると、小平次はすぐさま誰かを探します

幸い一人のジョギング男性が下流方向からやってきました

「すみません!すみません!」

大声で言ったのですが、なんとこの男性、小平次を無視、そのまま走り去ってしまいました

「えええーっ!」

最近はみな、音楽聴きながら走ったりしているので聞こえなかったのかもしれません

すぐに、今度は上流方向から、小柄な、おそらくは女性、が走ってきます

(うーん…、女かあ…)

一瞬ためらいましたが、オヤジの体力は限界です

「すみません!すみません!」

今度は立ちふさがるように声を掛けます

一瞬、小平次を変質者かなにかと思ったのか、その女性、大きく横っ飛びして小平次から逃げようとします

「いや、違うんです!違うんです!人が川に落ちているんです!」

「えーーーーーーーーーーーーーーっ!」

今度はその女性が大声を上げます

「どこですか!」

「こっちです!」

夜の暗い川の中にいるオヤジを見てその女性、再び

「えーーーーーーーーーーーーーーっ!」

「えっと、すみません、ボクがこっちを持ちますから、そっちの腕を持ってもらえますか!」

「は、はい!」

「せーの、で引き上げます!…、せえええのっ!」

オヤジも残された体力を必死に使い右足を岸際に掛けようとします

「よし、もう少し、オヤジさん!頑張って!」「オジサン!がんばって!」

2人で声をかけ、どうにかオヤジを引き上げました


「はあっ、はあっ…」


三人とも息が乱れます

しかしまだ終わりではありません

オヤジを柵の内側、遊歩道の方へ入れなくてはなりません

オヤジはもはやその柵を越える力は無さそうです

「あの、ボクがオヤジさんを担ぎあげんますんで、横でささえて下さい」

小平次はそう言ってオヤジの右脇に頭を入れ

「ふんっ!」

と一気にオヤジを遊歩道の方へ担ぎ入れました

何とか助けることは出来たのですが、さて、これからどうするか

「あのさ、水飲んでない?大丈夫?」

コクッコクッ!

「ハアッ、ハアッ…」

オヤジは息も絶え絶えです

「救急車呼ぼうか?」

ブルンブルン!

オヤジは激しく首を横に振ります

見たところ外傷もないようだし、ひとまず救急車は大丈夫そうでありました

「お父さん、家は、家はどこ?」

女性が尋ねます

「いえは、…いえは、…、この間まであった…、ハアッ、ハアッ…」

「そうか、この間まであったのか、で、今はこの遊歩道に住んでるの?」

小平次が尋ねます

「…、ここには…、二日前に来た…」

「そっか、二日前に来て、まだここに家は建ててないんだね」

コクッコクッ!

「あのう…、警察に保護してもらった方がいいんじゃないですか」

「そうですね…、それしかないでしょうね、いや、そうしたら後はボクが対応しますんで、ジョギング中すみませんでした」

「いえ、こちらこそ、ジョギング中で携帯も持っていないもので…、では、すみません、あとはよろしくお願いします」

女性はペコリと頭を下げ走り去って行った

きっとこの事を大騒ぎで家族に話す事だろう

さて、この後小平次はすぐに警察へ連絡し、事情を説明し急いで来てもらうよう頼んだのですが、ふとオヤジを見ると、長い間川に浸かっていたのか、ブルブル震えております

小平次はそれを見て女房殿に電話をかけます

いらない毛布でもあれば持って来てもらおうと思ったのです

しかし女房殿、最初に携帯にかけたところ、何でも携帯のゲームが佳境に入っていたらしく

「後で!」

と言って電話をブチ切ってしまったのです

「ええーーっ!」

もう一度かけてももう出もしません

仕方なく家の固定電話にかけますと女房殿

「なあにっ!?」

と恐いお声

「いや、今さ、川に落ちたオヤジを助けてさ、警察呼んだんだけど、オヤジ、ブルブル震えてて、警察来るのもう少しかかるだろうからさ、毛布かなんか持って来てくれよ、場所はさ、いつもの所から遊歩道に入って、ハゼ釣りする方へ向かって来て」

「ええーーっ!早くそれを言いなさいよ! よしわかった!すぐ行く!」

と、その後、小平次はオヤジと共に警察と女房殿の到着を待ったのでありました

その間

「あなたは…、あなたは…、警察の方ですか…」

「いや、おれは警察じゃなくて、警察は今呼んだから」

「あ、ありがとうございます…」

意味のわからない同じ会話が二度ほどありました

また、水は飲んでいないと言っていたのに

「ウェロウェロウェロウェロウェロウェロッ!」

とオヤジ、結構な水を吐き出したのでありました

「ちょっと、結構水飲んだんじゃないの?大丈夫?」

コクッコクッ!

待つ事数分

川沿いに高くそびえ続く防潮堤の上から

「コヘちゃーーーーーーーーーーーーーーん!!」

と聞きなれた大声で叫ぶ女房殿らしき人影

「こっちーー!こっちーー!」

小平次も手を振ります

女房殿の後ろから、おそらくは素人の持ち物ではないと思える、とても明るい懐中電灯の灯りと、警官らしき三人の人影も見えます

どうやら女房殿が警官を引き連れてきているようです

何で女房殿が警官を引き連れていたのか

後で聞いたのですが、女房殿がいつもの所(女房殿とハゼ釣りをする際遊歩道へ入る路地)から川の方へ来ようとしたら、三人の警官が、何だか場所がわからずウロウロしていたのだそうです

「おまわりさん!あんたたち川に落ちたおじいちゃんのことで来たんでしょ!」

「えっ!川に落ちたおじいちゃん?…、いや、迷子の老人がいるって聞いて来たんですが…」

「迷子じゃないよ!おじいちゃんが川に落ちたの!それをウチのダンナが助けて、今そこに行くところだからついて来て!」

ってな感じで引き連れて来たそうであります

いやいや、下町生まれの下町育ちの女房殿、こういう時は頼りになります

よく見れば女房殿と一緒に娘(中3)も毛布を抱え走って来ます

非日常な出来事にいてもたってもいられなかったのでしょう

女房殿が毛布でオヤジを包んでやります


さて、そしてようやく警官の到着です

若い警官の第一声は

「あんた!自殺しようとしたの!?」

でありました

まあ先ほども申し上げた通り、普通の行動をしていれば落ちるはずのない川ですから、そう思うのもやむを得ません

でも、そんなこと今聞いたって仕方ないだろう

「あの、この人だいぶ川の水飲んだみたいですから、早く保護するか救急車呼ぶかした方がいいですよ」

「あっ、そうでしたか」

小平次のその言葉で、一人の警官が消防か何かに連絡し、応援を要請しているようでした

その後、小平次は再度状況を詳しく尋ねられ、オヤジの代わりに、今は家がないこと、二日前にここへやって来たことなども説明したのでありました

何でもオヤジ、足を滑らせ落ちたらしく、200メートルほど流されたってことで

何度も申し上げたとおり、通常の行動をしていれば、隅田川のほとりで足を滑らせて川に落ちるような場所はありません

そうなりますと、まあこれは小平次の推測なんですが

その場より200メートルほど上流は、遊歩道が金網で仕切られ一度途切れているのです

その金網を上から越える分には、ちょっと高いですが問題ありません

しかし、横着して川に張り出した横から越えようとすると、楽で早いですが一歩間違えればドボンです

おそらくはオヤジ、二日前にやって来て、この辺のホームレスの縄張りだとかしきたりだとかが分からず、コワイ思いや嫌な思いをしたのかもしれません

それで、まあ慣れるまではその縄張りだとかに煩わされないよう、人の来ない金網の向こうへ行こうとして落ちたのでしょう

そしてアップアップしながら流され、必死に非常用の係留杭を掴み、どうにか柵の下側に手を伸ばすまではできたのですが、そこから這い上がるだけの体力がもはやなかったのでありましょう

ホームレスの間でもイジメだとかがあるって聞いたこともありますし

しかし、俗世の人間関係とかが嫌でこちらの世界に来たのであろうに、そこでもそんな事に煩わされるというのは、なんとも言えない話であります…



いやあ、それにしても、人生色々な事があるものです

若かりし頃インドを放浪したりとか、先日もブログで報告しましたが、数十年に一度あるかないかのネパールでの大地震に、たった四日間の滞在期間中に出くわすとか(ネパール大地震その時現地におりました参照)
語れば尽きないほど色々な経験をしてきたつもりでありますが、よもや釣りの最中、夜の暗い川の中いたオヤジと目が合うとは思いもしませんでしたよ

いやあ本当に、人生何があるかわかりません

それにしてもですね、あのオヤジ

川の岸際にへばり付いていたわけでして

人の賑わう浅草近辺ならいざ知らず

その辺りはわずかにジョギングや犬の散歩の人たちが通るだけでして、通ったところで普通の人は暗い岸際なんか見もしません

たまたま岸際を気にしながら歩く釣り人である小平次が通りかからなかったら、おそらくはかつてのヘドラが潜む川の底へ…

うーーん…

そう考えると、小平次は何かに呼ばれたのかもしれません

とにかく良かった!





さて後日談

その数日後、地元の消防署から電話が入りまして、何と消防署長名で感謝状を贈りたいと言うのです

人様に迷惑ばかりかけて生きて来て、警察や消防から感謝状を頂けるなんてことはこの先そうはありますまい

恐縮ながら、ありがたく頂戴することといたしました 本当は一緒に助けてくれたあの女性にも贈って頂きたいのですが、なにぶん名前も何も聞かなかったもので…

すみません、この場を借りて

ありがとうございました



御免!

コメント (8)
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