メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

あの頃。

2021年03月10日 | 思想
あの頃。
を観ました。


バイトに明け暮れ、好きで始めたはずのバンド活動もままならず、楽しいことなどなにひとつなく、うだつの上がらない日々を送っていた劔(つるぎ)。
そんな様子を心配した友人・佐伯から「これ見て元気出しや」とDVDを渡される。
何気なく再生すると、そこに映し出されたのは「♡桃色片想い♡」を歌って踊るアイドル・松浦亜弥の姿だった。
思わず画面に釘付けになり、テレビのボリュームを上げる劔。
弾けるような笑顔、くるくると変わる表情や可愛らしいダンス…圧倒的なアイドルとしての輝きに、自然と涙が溢れてくる。
すぐさま家を飛び出し向かったCDショップで、ハロー!プロジェクトに彩られたコーナーを劔が物色していると、店員のナカウチが声を掛けてきた。
ナカウチに手渡されたイベント告知のチラシが、劔の人生を大きく変えていく――。
ライブホール「白鯨」で行われているイベントに参加した劔。
そこでハロプロの魅力やそれぞれの推しメンを語っていたのは、プライドが高くてひねくれ者のコズミン、石川梨華推しでリーダー格のロビ、痛車や自分でヲタグッズを制作する西野、ハロプロ全般を推しているイトウ、そして、CDショップ店員で劔に声を掛けてくれたナカウチら個性豊かな「ハロプロあべの支部」の面々たち。
劔がイベントチラシのお礼をナカウチに伝えていると、「お兄さん、あやや推しちゃう?」とロビが声を掛けてくる。
その場の流れでイベントの打ち上げに参加することになった劔は、ハロプロを愛してやまない彼らとの親睦を深め、仲間に加わることに――。
夜な夜なイトウの部屋に集まっては、ライブDVDを鑑賞したり、自分たちの推しについて語り合ったり、ハロプロの啓蒙活動という名目で大学の学園祭に参加するなど、ハロプロに全てを捧げていく。
西野の知り合いで、藤本美貴推しのアールも加わり、劔たちはノリで“恋愛研究会。”というバンドを組む。
「白鯨」でのトークイベントで、全員お揃いのキャップとTシャツ姿でモーニング娘。の「恋ING」を大熱唱。彼らは遅れてきた青春の日々を謳歌していた。
ハロプロ愛に溢れたメンバーとのくだらなくも愛おしい時間がずっと続くと思っていたが、それぞれの人生の中で少しずつハロプロとおなじくらい大切なものを見つけていく。
そして、別々の人生を歩みはじめ、次第に離ればなれに――。


今泉力哉監督作品です。
アーティスティックな作品からエンタメ系な作品までやりますが毎度ハイレベルでかなり好みの監督です。
基本的にどの作品も人間味がとても感じられる印象ですが今作もおもいっきりそんな感じでした。

冒頭にバンド練習シーンがありましたが長年バンドマンやってる自分にはその時点で良い湿度だなと思いました。
そこから一人暮らしの雰囲気や友達とのやり取りも妙に生々しくてかなり没入しやすかったです。
この主人公はおそらく自分とほぼ同年代の設定だと思いますが当時フリーターでバンドマンだった自分にはハマりまくりでした。

ひょんなことからあややのファンになってパッとしない日々の救いになる感じは妙に説得力ありました。
音楽大好きで生きてきたのでアイドルは余り受け入れられずに生きてきましたがこういう偶像的に救いになることは多々ありますね。
近年の辛い状況の中はじめて位に好きになったアイドル乃木坂46に救われるようになった自分にはこの主人公の気持ちはわかりました。
ここまでドハマリするのは難しいですがこういうファンの集いには憧れますね。
同じようにパッとしないフリーターたちがハロプロ好きという不思議な絆で結ばれる感じは良かったです。
青春ってこういう本当になし崩しな環境で成立してることってよくあったなと振り返ると思うので非常に秀逸なテーマだと思いました。

モー娘。やあややって本当に人気あったし特別な興味なくてもみんな知ってて話題にできたし。
それがまさに一昔前でもうこんなにも懐かしいのだなと驚きました。
世界設定や家電やガラケーなどの小道具も絶妙で細部までクオリティ高かったです。

ライブハウスでのイベントシーン、ちょっとこなれてるけどやはり素人たちのコメディと言うグダグダ感と内輪ノリの感じ。
めちゃくちゃ高品質に思いました。
自分たちのライブも傍から見るとおそらくこんなんなんだろうなと怖くなるほどに絶妙でした。

今泉監督作品の中では今までで一番くらいにコメディ色は強いのですが全体的にはやはりとても繊細で切なかったです。
劇場は笑う場面ではちゃんと笑いが起きていましたが切ない場面ではちゃんとしんみりしていて見事に観客の心を掴んでいる感覚でした。

ナチュラル系の演出の映画は大好物ですが今作も役者さんの素材がとてもよく発揮されていたと思います。
もちろん演技ではあるのですが役者さんのパーソナリティの延長線上を感じるのは好きです。
同場面で複数の演技が繰り広げられている演出とかは好みでした。

主演は松坂桃李はごくごく一般的なフリーターでした。
ストーリー上で展開するシーンは結構コミカルで舞台調な演技になったりもしますが繊細な部分はナチュラルで。
実にいい塩梅でその幅をこなしていたと思います。
ベースを弾く姿も様になっていて感心しました。

オタク仲間の一人を大好きな仲野太賀がやっていました。
実質二番手の役で非常に出番も多くコメディも感動も担っていましたが素晴らしかったですね。
最近見たすばらしき世界も見事でしたが今作もまた違った良さを発揮しています。
コメディの才能は言わずもがなですがシリアスの才能も凄くてこの人はまだまだ格を上げていく予感です。

オタク仲間の一人を山中崇がやっていました。
この人も実力派で自分が高評価した作品によく出てきますね。
今作もダサいのにクールでリーダーっぽい役でいい味出していました。

同じくオタク仲間の一人を大好きな若葉竜也がやっていました。
踊りで笑わせたりコメディ強めですが深層心理見えない感じでとても魅力的なキャラでした。
自分は明烏の役が好きであの映画を3度も見てしまいましたがそれ以降の活躍が素晴らしいです。
好みのハイセンス系によく出てきてくれるし今泉監督作品の常連なので意図せずとも遭遇率が高いです。

同じくオタク仲間の一人を芹澤興人がやっていました。
この人は作家性強い映画やインディペンデント映画の印象なので今作にも非常にマッチしていました。
とてもナチュラル演技で好みです。
映画好きな人はこの人が出ている映画を追うのも一つの方法な気がしました。

同じくオタク仲間の一人をコカドケンタロウがやっていました。
演技はあまり見た記憶が無いですが一流コント師だけあって上手でした。
結構コカドのままでしたが作品の特性かそれでも非常に成立していました。

ちょい役ですが西田尚美も出ていました。
昔から綺麗で好みですが活躍の幅も広くセンスも高い印象で良いですね。

好みの片山友希も出ていました。
この子はどんどんハイセンス系専門になってきて役者魂も凄い印象です。
ややこしい役でしたがこういう子っているよなと妙に説得力もありました。

テーマもストーリーも演出も好みでいい映画でした。
自分も乃木坂でこんな青春を送ってみたいとしみじみ思いました。


そんなわけで7点。
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