メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

幼な子われらに生まれ

2017年08月26日 | 映画
幼な子われらに生まれ
を観ました。


バツイチ、再婚。一見良きパパを装いながらも、実際は妻の連れ子とうまくいかず、悶々とした日々を過ごすサラリーマン、田中信(浅野忠信)。
妻・奈苗(田中麗奈)は、男性に寄り添いながら生きる専業主婦。
キャリアウーマンの元妻・友佳(寺島しのぶ)との間にもうけた実の娘と3カ月に1度会うことを楽しみにしているとは言えない。
実は、信と奈苗の間には、新しい生命が生まれようとしていた。
血のつながらない長女はそのことでより辛辣になり、放った一言―「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」。
今の家族に息苦しさを覚え始める信は、怒りと哀しみを抱えたまま半ば自暴自棄で長女を奈苗の元夫・沢田(宮藤官九郎)と会う決心をするが・・・。


好みの三島有紀子監督作品です。

全然前情報無しで見に行きましたが、
最初のカット、ハイビジョンではない昭和っぽい粗い感じの画像を観て、
ああー、もうすでにいい感じ!
と思いました。
ホント僅か数秒で作品の雰囲気がわかったというか、テイストは十分に伝わりました。

情報が無いまま観ていたので、最初は人間関係が全然わかりませんでした。
ただ、どうせそのうち明かされるだろうな、という空気感があるので安心はできます。
徐々に相関図の全体像がわかってくると、思ったより複雑でもなく、なるほどって感じでした。

非常にいい作品でしたが上映規模が少ないのは、
三島有紀子監督の子役に労働基準法を超える仕事をさせた騒動の影響かな?と変に勘ぐってしまいました。

主人公は自分とほぼ同世代な40歳のサラリーマンの設定でしたが、
実に生々しい憂いに満ちていて観ていてしんどくなるほどでした。
家族優先で職場での立場があまり良くなく、元嫁との娘に会うことを妻がよく思っておらず、
何より妻の妊娠をきっかけに妻の連れ子が急に自分を嫌がりだして手に負えない状況で。
過激に極端に描いたりではなくリアルに辛辣な描写でした。

もうこんなシチュエーションだったらめちゃめちゃしんどいだろうなー、全部投げ出したくなるだろうなー、
とかなり同情しました。

浅野忠信が主人公を演じているので基本静かで感情を内に秘めている感じで。
ただ猛烈なストレスや怒りは流石に感じているだろう、という何とも言えない辛さがビンビン伝わりました。
時々感情的になり流石にプッツンする場面もありましたが、なんというか、ギリギリ耐えて崩壊しない様に根気強かったです。
浅野忠信の上手さは存分に発揮されていて、数多い浅野忠信作品でも相当上位に来るような仕上がりでした。
20代前半の回想シーンは流石に老けてるな・・・とは思いましたが。

田中麗奈がすっかりいい感じのベテランになっていて。
コレまた普通っぽい女性で全然完璧じゃない女性だけど、そこまで悪いわけでもないのに。
子供と上手く行かなくなってしまったり、元夫が恐ろしくクズだったりと。
やっぱりなんとも言えないしんどさに満ちていました。

元夫の宮藤官九郎が素晴らしくクズで。
暴力、ギャンブル、子供への虐待と。
ただ彼にも辛さがありクライマックスではえらく感動させられました。
単純な勧善懲悪な作品ならば、この人を悪としてみんなの感情が成立すればいいのでしょうが。
勿論そんな単純な作品ではありません。
この元夫の救いようの無いような辛さや、全然表現されない子供への愛などは猛烈に切なかったです。
クドカンの演技も最高に素晴らしかったです。

出番は少なめでしたが寺島しのぶもこの作品にマッチしたいいキャスティングだったと思います。

血の繋がらない娘役の南沙良って子はかなり素晴らしかったですね。
憎たらしい反抗期で、大人が手におえないようなませた感じで。
でもやっぱり子供の部分があって。
最終的にはこの子の演技で一番泣かされました。

血の繋がった娘役の鎌田らい樹はとってもいい子で。
両親の事情で平凡では無い環境に居るのにそれを堪えていい子に振る舞っている感じが切なかったですね。
この子にも泣かされる場面がありました。

すっかり子役に厳しい三島有紀子監督のイメージですが、このクオリティならば致し方ないでしょう。
結構わかり易いテーマ、ストーリーなのに人に説明するのにはちょっと悩んでしまうような。
いや、そう単純じゃなくて、、、と付け加えたくなるような。
登場人物たちがみんな表面に出さない深みを持っている素晴らしい作品でした。


そんなわで8点。
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