沈まぬ太陽 を観た。
山崎豊子原作。
30年間企業の不条理に翻弄されても絶対に諦めなかった男の話です。
日本映画史に残るような名画でした。
長時間の大作で上映途中に10分間の休憩がありました。
かなりの数の映画を観てきましたが、初めての体験でした。
なんか非日常で楽しかったです。
日本航空がモデルになった同名小説が原作です。
(お話)
国民航空は巨大な企業で社内政治がドロドロしている。
創立パーティの席で恩地元(渡辺謙)露骨にひどい扱いをされている。
国民航空の旅客機123便が群馬の御巣鷹山に墜落し乗員、乗客524人中520人が死亡する。
国民航空は非難の的となり、社内政治は揺れる。
恩地は遺族の世話係の任を担当する。
20年ほど前-
恩地は労働組合委員長を務めていた。
副委員長に行天四郎(三浦友和)。
他メンバーに三井美樹(松雪泰子)、八木和夫(香川照之)、沢泉徹(風間トオル)等。
恩地と行天はそのリーダーシップとカリスマ性でメンバーを率いて職場環境の改善を求め戦っていた。
行天はいざとなると引け腰になるが恩地はひるまず、会社の為、空の安全の為、信念を曲げず、総理のフライトの日だろうが構わずストを決行すると発表。
遂に折れた会社側に手当ての見直しの要求が通る。
組合員達は大喜びで恩地と行天を称えるが、行天はそんな恩地にコンプレックスを抱いていた。
そして三井と不倫する。
小暮社長(横内正)、八馬取締役(西村雅彦)、堂本取締役(柴俊夫)等はそんな恩地を危険とみなしパキスタンのカラチへと左遷する。
明らかな懲罰人事だった。
恩地は他の組合員には一切懲罰人事しないなら受け入れると約束させ、2年だけと甘んじて受け入れる。
行天は昇進をエサに八馬、堂本達に取り込まれて行く。
そんな恩地と行天中心の長い長い波乱の物語。
(ネタバレ)
家族と共にパキスタンへ行くが長男克己はその環境を呪い日本に帰りたがる。
八馬が訪れ詫び状を書けば日本に帰してやる、家族を巻き込むなと勧めるが恩地はどうしても詫び状が書けない。
そして2年経ったが、日本には帰れず今度はイランのテヘランへと異動を命じられる。
約束と違うと憤るが通らず、流石に今回はもう家族を巻き込めないと単身赴任する。
妻のりつ子(鈴木京香)には家族の事ももっと大事にして欲しいと言われる。
そして次はケニアのナイロビへ。
そんな中、息子想いだった母の危篤の知らせが届き急いで帰宅するが間に合わず母の死に目に会えず。
行天に詫び状を書いて日本に戻って来いと勧められるが断る。
組合は分断され別の組合が力をつけており、かつての組合員は劣悪な環境で働かされていた。
特に恩地が左遷された後恩地の為にデモ行為を率先していた八木はひどい懲罰人事を受けていた。
この組合分断を裏で画策していたのが行天。
行天は既に過去の行天では無く、自身の野望の為に手段を選ばない男になっていた。
恩地は約束が違うと社長に掛け合うが聞いてもらえず。
ナイロビに戻った恩地は精神を病みおかしくなる。
日本に戻った恩地だがまもなく123便の墜落事故が起こる。
恩地は遺族の世話係に任命される。
愛する夫を失った鈴木夏子(木村多江)、かわいい一人息子を失った小山田修子(清水美沙)、息子一家全員を失った阪口清一郎(宇津井健)等を誠意を持って相手する。
会社はさっさと金でけりをつけようと書類にハンコを押させようとするが恩地は心のケアをすべきだと反対し衝突する。
社長になっていた堂本は辞任を表明し、行天と共に遺族の家を回っていたが、その誠意の無さにバッシングされまくる。
阪口は数年前に妻を亡くし今回は息子一家を亡くし天涯孤独になった為金はいらない、もうすぐお遍路に出ると言う。
娘の純子(戸田恵梨香)は結婚間近だったが恩地のせいで相手の家族が煙たがる。
総理はナショナルフラッグの国民航空を早く立て直さなければと関西で有能な国見正之(石坂浩二)に取締役会長を依頼する。
会長になった国見は会長室と言う新たな部門を設け、恩地を部長として二人で再建を目指す。
二人は頻繁に現場に足を運び安全の為の精度を導入する。
行天は当然煙たがる。
娘の婚約者の両親は急に身分が良くなった恩地の媚びて結婚を歓迎し、国見会長にスピーチして欲しいなどと言い出すので恩地は怒る。
国航の子会社の社長になっていた八馬はあちこちのホテルを買収していたが裏では不正な金が動いていた。
国見は恩地をアメリカに派遣してそれを調査させた。
行天はそんな恩地に三井を尾行させる。
しかし三井は恩地に行天を止めてくれと頼む。
三井はずっと行天の愛人とスパイをしており、自分の代わりに123便に乗った桶田恭子(松下奈緒)の母親を騙し遺族会の名簿を手に入れたりして心を痛めていた。
日本に戻った恩地は息子の克己(柏原崇)とご飯を食べ、波に乗ってるやつの方が波に逆らって生きるより大変なのかも知れない。
辞めちゃえば、という息子に辞めないと答える。
行天や八馬等は副総理や運輸大臣と癒着しており、国見の邪魔ばかりする。
行天は八木に命じて金を運ばせ多額の横領をしていた。
それを苦にした八木は恩地に挨拶した後、今まで密かにつけていた全ての証拠を東京地検に送って自殺する。
国会で八馬の会社の裏金が問題となり、このまま関わると総理まで疑いが来ると副総理が仕向け、総理は国見を会長職から下ろす。
志半ばで無念の辞職をする国見だが、最後の役員会議で八馬の解任を提案する。
逆上する八馬だが真っ先に行天が解任に賛成する。
国見の最後の命で恩地は大阪で遺族の世話に戻る予定だったが、行天がそれを覆し再びケニアに行けと命ずる。
何処までも寂しい男になったな、と言う恩地に、勝ったのは俺だ、と行天は言う。
直後行天は東京地検に逮捕される。
娘はケニア行きを反対するが妻と息子は恩地の好きなようにすれば良いと言う。
そして恩地は今回はアフリカ行きが嬉しい、アフリカに行きたいと言う。
そして再びケニアへ。
恩地は阪口に宛て手紙を書く。
私は長い間会社から不当な扱いをされ、己の境遇を憎んできたが、そんなものを100倍してもあなたの絶望の足元にも及ばない、的な。
わたしはなんて些細な事に悲しみ、怒り、憎んできたのかと今思う。
あなたの旅の終わりには是非アフリカを訪ねてください。
遮るもののない悠久の大地が広がり、その端っこでは生き物達の厳かな生命の営みが繰り広げられている。
大地に光の矢を放つ夕日は沈まぬ太陽だ、的な。
(評価)
とても素晴らしい名画でした。
見事に重厚で、迫真な3時間の物語とラストのアフリカの美しい映像と、手紙を語る渡辺謙のシーンの開放感。
その手紙の文章のあまりの素晴らしさと美しさにとても深い感動をしてしまいました。
息子とご飯を食べるシーンの嬉しそうな父親の感じでも泣きそうになってしまいました。
あまりに理不尽で過酷な人生。
しかし最後にはちゃんと悟りの様な境地に辿り着く。
行天をはじめ不正ばかりしている連中が途中から憎くて憎くてたまらん心境になってしまいます。
凄いフラストレーションです。
頼むバチ当れと思って見てました。
しかしラストは彼らの転落ではなく己自身の心の持ちようを変える事だったので、ホント素晴らしかったです。
社会的に非常に難しい原作であり映画化も色々問題があるようですが、こんなに素晴らしい作品に仕上げたのは賞賛します。
3時間22分と言う上映時間もむしろ足りなく感じさせるような見事な出来でした。
かなりの豪華キャストでかなり贅沢な役者の使い方でした。
123便には松下奈緒、小日向文世、東幹久などの役者が乗っていたのに僅かな出演シーンであっさり墜落してしまいました。
僕は個人的興味で日本航空123便の墜落事故の事はよく調べたり関連物を読んだりテレビで見たりしますが、あらためて恐るべき惨劇だったなと思います。
この映画を観てそれが会社の無茶苦茶な利益主義のせいで起こったのかもと思わされ、何だかやり切れない気持ちになりました。
競争社会だと権力欲に溺れてしまうものが絶対でてきてしまうもんですね。
そんなこんなで10点です。
まーこれは完璧な映画と言って良いでしょう。
間違いなく日本映画史に名を刻んだと思います。
この映画に関わって完成させた人達は素晴らしいですね。
ところで政治の世界や大企業の上の方の世界は、必ず嫌な奴だらけで、必ず悪い奴ばかりで、こんな感じに描かれる事が多いです。
このお話は結構現実に忠実に書かれてると勝手に思っていますが、こんな世界は嫌だなぁと思ってしまいました。
選挙なんて立候補するような奴は全員落選すればいいのかもしれないとか思っちゃいます。
山崎豊子原作。
30年間企業の不条理に翻弄されても絶対に諦めなかった男の話です。
日本映画史に残るような名画でした。
長時間の大作で上映途中に10分間の休憩がありました。
かなりの数の映画を観てきましたが、初めての体験でした。
なんか非日常で楽しかったです。
日本航空がモデルになった同名小説が原作です。
(お話)
国民航空は巨大な企業で社内政治がドロドロしている。
創立パーティの席で恩地元(渡辺謙)露骨にひどい扱いをされている。
国民航空の旅客機123便が群馬の御巣鷹山に墜落し乗員、乗客524人中520人が死亡する。
国民航空は非難の的となり、社内政治は揺れる。
恩地は遺族の世話係の任を担当する。
20年ほど前-
恩地は労働組合委員長を務めていた。
副委員長に行天四郎(三浦友和)。
他メンバーに三井美樹(松雪泰子)、八木和夫(香川照之)、沢泉徹(風間トオル)等。
恩地と行天はそのリーダーシップとカリスマ性でメンバーを率いて職場環境の改善を求め戦っていた。
行天はいざとなると引け腰になるが恩地はひるまず、会社の為、空の安全の為、信念を曲げず、総理のフライトの日だろうが構わずストを決行すると発表。
遂に折れた会社側に手当ての見直しの要求が通る。
組合員達は大喜びで恩地と行天を称えるが、行天はそんな恩地にコンプレックスを抱いていた。
そして三井と不倫する。
小暮社長(横内正)、八馬取締役(西村雅彦)、堂本取締役(柴俊夫)等はそんな恩地を危険とみなしパキスタンのカラチへと左遷する。
明らかな懲罰人事だった。
恩地は他の組合員には一切懲罰人事しないなら受け入れると約束させ、2年だけと甘んじて受け入れる。
行天は昇進をエサに八馬、堂本達に取り込まれて行く。
そんな恩地と行天中心の長い長い波乱の物語。
(ネタバレ)
家族と共にパキスタンへ行くが長男克己はその環境を呪い日本に帰りたがる。
八馬が訪れ詫び状を書けば日本に帰してやる、家族を巻き込むなと勧めるが恩地はどうしても詫び状が書けない。
そして2年経ったが、日本には帰れず今度はイランのテヘランへと異動を命じられる。
約束と違うと憤るが通らず、流石に今回はもう家族を巻き込めないと単身赴任する。
妻のりつ子(鈴木京香)には家族の事ももっと大事にして欲しいと言われる。
そして次はケニアのナイロビへ。
そんな中、息子想いだった母の危篤の知らせが届き急いで帰宅するが間に合わず母の死に目に会えず。
行天に詫び状を書いて日本に戻って来いと勧められるが断る。
組合は分断され別の組合が力をつけており、かつての組合員は劣悪な環境で働かされていた。
特に恩地が左遷された後恩地の為にデモ行為を率先していた八木はひどい懲罰人事を受けていた。
この組合分断を裏で画策していたのが行天。
行天は既に過去の行天では無く、自身の野望の為に手段を選ばない男になっていた。
恩地は約束が違うと社長に掛け合うが聞いてもらえず。
ナイロビに戻った恩地は精神を病みおかしくなる。
日本に戻った恩地だがまもなく123便の墜落事故が起こる。
恩地は遺族の世話係に任命される。
愛する夫を失った鈴木夏子(木村多江)、かわいい一人息子を失った小山田修子(清水美沙)、息子一家全員を失った阪口清一郎(宇津井健)等を誠意を持って相手する。
会社はさっさと金でけりをつけようと書類にハンコを押させようとするが恩地は心のケアをすべきだと反対し衝突する。
社長になっていた堂本は辞任を表明し、行天と共に遺族の家を回っていたが、その誠意の無さにバッシングされまくる。
阪口は数年前に妻を亡くし今回は息子一家を亡くし天涯孤独になった為金はいらない、もうすぐお遍路に出ると言う。
娘の純子(戸田恵梨香)は結婚間近だったが恩地のせいで相手の家族が煙たがる。
総理はナショナルフラッグの国民航空を早く立て直さなければと関西で有能な国見正之(石坂浩二)に取締役会長を依頼する。
会長になった国見は会長室と言う新たな部門を設け、恩地を部長として二人で再建を目指す。
二人は頻繁に現場に足を運び安全の為の精度を導入する。
行天は当然煙たがる。
娘の婚約者の両親は急に身分が良くなった恩地の媚びて結婚を歓迎し、国見会長にスピーチして欲しいなどと言い出すので恩地は怒る。
国航の子会社の社長になっていた八馬はあちこちのホテルを買収していたが裏では不正な金が動いていた。
国見は恩地をアメリカに派遣してそれを調査させた。
行天はそんな恩地に三井を尾行させる。
しかし三井は恩地に行天を止めてくれと頼む。
三井はずっと行天の愛人とスパイをしており、自分の代わりに123便に乗った桶田恭子(松下奈緒)の母親を騙し遺族会の名簿を手に入れたりして心を痛めていた。
日本に戻った恩地は息子の克己(柏原崇)とご飯を食べ、波に乗ってるやつの方が波に逆らって生きるより大変なのかも知れない。
辞めちゃえば、という息子に辞めないと答える。
行天や八馬等は副総理や運輸大臣と癒着しており、国見の邪魔ばかりする。
行天は八木に命じて金を運ばせ多額の横領をしていた。
それを苦にした八木は恩地に挨拶した後、今まで密かにつけていた全ての証拠を東京地検に送って自殺する。
国会で八馬の会社の裏金が問題となり、このまま関わると総理まで疑いが来ると副総理が仕向け、総理は国見を会長職から下ろす。
志半ばで無念の辞職をする国見だが、最後の役員会議で八馬の解任を提案する。
逆上する八馬だが真っ先に行天が解任に賛成する。
国見の最後の命で恩地は大阪で遺族の世話に戻る予定だったが、行天がそれを覆し再びケニアに行けと命ずる。
何処までも寂しい男になったな、と言う恩地に、勝ったのは俺だ、と行天は言う。
直後行天は東京地検に逮捕される。
娘はケニア行きを反対するが妻と息子は恩地の好きなようにすれば良いと言う。
そして恩地は今回はアフリカ行きが嬉しい、アフリカに行きたいと言う。
そして再びケニアへ。
恩地は阪口に宛て手紙を書く。
私は長い間会社から不当な扱いをされ、己の境遇を憎んできたが、そんなものを100倍してもあなたの絶望の足元にも及ばない、的な。
わたしはなんて些細な事に悲しみ、怒り、憎んできたのかと今思う。
あなたの旅の終わりには是非アフリカを訪ねてください。
遮るもののない悠久の大地が広がり、その端っこでは生き物達の厳かな生命の営みが繰り広げられている。
大地に光の矢を放つ夕日は沈まぬ太陽だ、的な。
(評価)
とても素晴らしい名画でした。
見事に重厚で、迫真な3時間の物語とラストのアフリカの美しい映像と、手紙を語る渡辺謙のシーンの開放感。
その手紙の文章のあまりの素晴らしさと美しさにとても深い感動をしてしまいました。
息子とご飯を食べるシーンの嬉しそうな父親の感じでも泣きそうになってしまいました。
あまりに理不尽で過酷な人生。
しかし最後にはちゃんと悟りの様な境地に辿り着く。
行天をはじめ不正ばかりしている連中が途中から憎くて憎くてたまらん心境になってしまいます。
凄いフラストレーションです。
頼むバチ当れと思って見てました。
しかしラストは彼らの転落ではなく己自身の心の持ちようを変える事だったので、ホント素晴らしかったです。
社会的に非常に難しい原作であり映画化も色々問題があるようですが、こんなに素晴らしい作品に仕上げたのは賞賛します。
3時間22分と言う上映時間もむしろ足りなく感じさせるような見事な出来でした。
かなりの豪華キャストでかなり贅沢な役者の使い方でした。
123便には松下奈緒、小日向文世、東幹久などの役者が乗っていたのに僅かな出演シーンであっさり墜落してしまいました。
僕は個人的興味で日本航空123便の墜落事故の事はよく調べたり関連物を読んだりテレビで見たりしますが、あらためて恐るべき惨劇だったなと思います。
この映画を観てそれが会社の無茶苦茶な利益主義のせいで起こったのかもと思わされ、何だかやり切れない気持ちになりました。
競争社会だと権力欲に溺れてしまうものが絶対でてきてしまうもんですね。
そんなこんなで10点です。
まーこれは完璧な映画と言って良いでしょう。
間違いなく日本映画史に名を刻んだと思います。
この映画に関わって完成させた人達は素晴らしいですね。
ところで政治の世界や大企業の上の方の世界は、必ず嫌な奴だらけで、必ず悪い奴ばかりで、こんな感じに描かれる事が多いです。
このお話は結構現実に忠実に書かれてると勝手に思っていますが、こんな世界は嫌だなぁと思ってしまいました。
選挙なんて立候補するような奴は全員落選すればいいのかもしれないとか思っちゃいます。
沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD] | |
クリエーター情報なし | |
東宝 |