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地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

ビューティフル・ボーイ

2019年04月14日 | 映画
ビューティフル・ボーイ
を観ました。


成績優秀でスポーツ万能、将来を期待されていた学生ニックは、ふとしたきっかけで手を出したドラッグに次第にのめり込んでいく。
更生施設を抜け出したり、再発を繰り返すニックを、大きな愛と献身で見守り包み込む父親デヴィッド。
何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だから。
父と息子、それぞれの視点で書いた2冊のベストセラー回顧録を原作とした
実話に基づく愛と再生の物語。


フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督です。
はじめましての監督ですがハイセンスな雰囲気は感じました。

今や最も旬な俳優の一人ティモシー・シャラメが出ている時点で期待値が高いです。
ことごとく高評価な作品に出ている印象です。

予告を見た限りちょっと掴みどころがない作品に思いましたが、いざ本編を見てもやっぱり掴みどころがない感じでした。
ただやはり予想通りかなりハイセンスな映画で非常に素晴らしい映画でした。

ただただ仲良しの父子、幼い弟と妹と義母。
幸せな家族の描写にちょっとドラッグが混ざって来る。

誰よりも仲良しの父子で最初は笑いながら葉っぱをやっていたが父は穏やかに制する。
それが徐々に息子は隠れてドラッグをやるようになり、嘘もつくようになり、だんだん手に追えなくなっていきます。
ただ、家族で過ごしている時間はいい青年で弟、妹の面倒見も良い。
ドラッグ文化が低い日本では伝わりにくいですが、タバコくらい気軽なものなのでしょうか?
なので抜け出せなくなる人が多いのかな?なんて感覚で見ていました。
時事的にもちょっとタイムリーな話題だし。

わかり易く一方的に悪くなるわけでは無く、ちょいちょい幸せな時間が差し込まれる複雑さ。
もとより家族だし一般的より仲良しだった父子だけに、完全にコントロールできなくなった息子を救おうと全力の父。
それでも救えない息子への複雑な感情、同じく悪いとわかっていてもドラッグをやめられない息子の葛藤。
お互いに激しく衝突してもお互いを憎めない複雑さが辛かったです。

時々はドラッグをやめている時期もあるのに実にナチュラルに再び手を出す感じ。
見てるこちら側としては「えー?またやっちゃうの??」な残念な気分でした。

どんどん破滅的になっていく息子、いよいよ取り返しがつかない感じの息子に遂に決断をする父。
かなり辛くて泣けました。

演出としては全体的にハイセンスなのに、予兆みたいなシーンにわざとらしいBGMや効果音がなったり。
あえてローセンスなダサいBGMを使うことで何かが破綻した感じが良く伝わりました。
冒頭からずっとおしゃれでハイセンスな音楽がかかっていたのでそのコントラストは見事でした。

大したシーンでも無いところに深刻な雰囲気をだして、めちゃくちゃ深刻っぽいシーンを実に平坦に描こうとする感じが強かったです。
え?マジで?なシーンを予兆なしでサラッと描く感じでその感情が倍増しました。

とかく登場人物たちの心理をわかり易く表現するシーンも大幅にカットしている感じです。
全体的に結果を先に提示して、その行動から「ああ、登場人物はそういう心理だったのだな」って思わされる手法です。
言葉にはなっていないので結局登場人物たちが何を思っていたのか?どういう決断だったのか?の明確な答えはありません。
でもそこまで難しくはないので軽く想像しやすい感じです。

そういう描写が全体的に非常にハイセンスでした。
答えのない終わり方はこの手の作品にはあるあるですが、実に効果的でした。

そしてエンドロールはこれだけ映画を見ている自分でも相当斬新な、印象深いモノでした。
エンドロールは音楽が9割以上でしょう、NG集やらオフショットもあるでしょう、無音もちょいちょいあります。
今作はエッセイの朗読でした。

そしてそのクセの強い文体の朗読を聞いている時に、あれ?なんか自分が触れたことあるやつかも、、、と思っていましたが。
自分が若い頃、苦悩していた頃に良く読んでいたチャールズ・ブコウスキーの作品でした。
一人で勝手に興奮してしまいました。
そしてそのアナーキーな朗読はこの作品に非常にマッチしていると思いました。

主演はスティーブ・カレルでした。
昨年、自分が超高評価した30年後の同窓会が非常に印象的ですが、今作もそれと近い感じのキャラでした。
雰囲気素晴らしいし演技は上手いし。
ちょっと感情的でヒステリックになる面がありますが基本的には寡黙な方の男で、らしかったです。

息子役のティモシー・シャラメは今やトップクラスですね。
雰囲気ある真のお洒落な感じのルックス、漂わせる独特の雰囲気、演技の本気さが今作も見事です。
世界的には非常に評価されていると思いますが、日本でももっと評価されていいと思います。
絶頂期のディカプリオくらいの扱いで良いと思いますけどね。
来世はこのルックスに生まれたいです。

義母を演じたモーラ・ティアニーも良かったです。
非常に問題がある義理の息子を一枚隔てた立場から救わなければいけない複雑さが良く出ていました。
自分の子供達がいるが、義理の息子もちゃんと愛しているが、ここまで深刻な状況にどこまで介入すべきか?
難しいポジションをうまく表現していました。
途中、無言で涙を流しながら息子を追いかけるシーンは泣けました。

弟と妹役がとても可愛くてこのブラックな作品には逆にいびつな要素として存在していました。

非常にハイセンスな映画で見る価値充分でした。


そんなわけで8点。
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