メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

異端の鳥

2020年10月26日 | 映画
異端の鳥
を観ました。


東欧のどこか。
ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの老婆が病死した上に火事で家が消失したことで、身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。
行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける―。


ヴァーツラフ・マルホウル監督・脚本・製作です。
自分は行きつけの映画館でやってる映画を漠然と片っ端から見るスタイルなので事前に情報を集めたり強い興味をいだいて映画を見に行くことはあまりないのですが。
コレはなんとなく知ってから非常に気になっていた映画で観たいと思っていました。

相変わらず事前情報は全然入れないのですがなんか凄い映画っぽいというくらいの感覚で観に行きました。
なので自分の中では久々に高い期待値を抱いて劇場に行ったのですが。
予想通り、期待した通りの凄い映画でした。

3時間という最近では珍しい長尺の映画です。
先日見た”ある画家の数奇な運命”も長かったですが、こういう作品たちがしっかり評価されて欲しいものです。
ストーリーは少年が転々と環境を変えながら都度都度世話してくれる人がいて。
その人々がチャプターになっているような映画の構造です。

事前情報入れずに見に行ったので時代も舞台もわからず。
説明描写はほぼ皆無で状況はさっぱりわからいのですが常に何か追い詰めれられているような緊張感に満ちていて。
セリフも全然無ければBGM的音楽も無いので自然音や生活音でサバイバルしている少年を見る感じです。
でもちょいちょい少年の一人称視点になったりするので作品世界への没入感もあります。
とにかく臨場感と緊張感ですね。

そして非常に民度が低い人々の中で異物として扱われる少年。
不吉だから殺せとか虐待を受けたり。
いい人と思った人が悪い人だったりその逆だったり。
そのどちらなのかはっきりわからない人も沢山いて。
全然悪い状況とも思えないような流れで一気に絶体絶命のピンチになったり。
そんな展開が沢山です。
冒頭にひどい暴力、虐待を受けた少年におばさんが言う
「外に出たお前が悪い」
がずっとこびりつく映画です。

時代的背景やその土地の文化レベルだからでしょうが登場人物がホームレス的なこ汚い人物ばかりで。
性描写も正直美人じゃないスタイルが良くない人がやってるので実に生々しくて。
基本的に登場人物全員が何をしだすかわからない空気感に満ちていました。
そういう点で全然娯楽性などを排除していて作家性の強さが伺えました。

子供の性描写や動物虐待やバイオレンスやら。
動物のシーンなどは技術で上手く見せてるのだとは思いますが。
R15+だけあって目を背けたいシーンがちょいちょいありましたね。
ただそれは作品の説得力や迫力や真実味みたいなものを非常に強めますね。
この規模、このクオリティでのこの描写は日本では絶対に作れない気持ちになるのは何故でしょう。
文化やコンプライアンス意識などの影響でしょうが日本の映画の成長には大きな壁がある気がしますね。
おしんを超過激にした感じですが、子供が暴力される作品は日本では難しいでしょうね。
子役にこんな汚れな役をやらせたら問題になるでしょうね。

語学が趣味の自分ですがそれでも劇中の言語がわからず、それが謎を深めてましたが。
キリル文字みたいのが見えたりドイツ語っぽいのが見えたりが少ないヒントでしたが。
途中で兵隊が出てきてそこで初めて時代感や舞台感がつかめてきました。
ただいくつかの集団が出てくるので敵味方もわかりにくいのでやっぱりドキドキしました。

淡々と物語は進みますが常に過酷だしちょいちょい衝撃的だったりするので。
気がつくと非常に壮大な冒険になってました。

主演のペトル・コトラールはあまりに凄い作品にいきなり使われて。
プロフィールを調べるとチェスキー・クルムロフから来た普通の少年らしく。
自分がヨーロッパを放浪してる時に訪れた忘れがたき美しいど田舎の街でしたが。
あそこ出身というだけで非常に親近感を感じてしまいました。
セリフが殆ど無いのでたまに喋る言葉の重みは凄かったです。
こんなに体を張ったのは凄いですね。
本人のメンタルが心配になるくらいの過激さでした。

全く知らない役者が多いですが時々ハリウッドでも活躍してる俳優も出てました。

ウド・キアーは序盤に出てくる凄まじいDV男でした。
この人が序盤に出てきたせいで登場人物全員が何をするかわからないと緊張感増しました。

ステラン・スカルスガルドが兵士役でした。
謎めいていて心理描写も無く何を考えているのかわからずでした。

ハーヴェイ・カイテルも司祭役で出てましたが。
この大物キャストでさえ普通の人物な演技をしていました。

バリー・ペッパーは多分ドイツ兵役で。
スナイパーなキャラクターだったので誰もが彼の出世作を思い出させましたね。
このキャスティングだけが唯一この映画の娯楽性だったかも知れません。

トラウマとして記憶に残りそうな、でも決して後味が悪いわけでもない不思議な映画でした。
とにかく凄かった。


そんなわけで8店。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 | トップ | とんかつDJアゲ太郎 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。