元警官が「萌え」で福島県の復興

2012-11-28 21:48:15 | 原発

東日本大震災で行方不明者の捜索にあたった福島県警の元警察官が、故郷の会津若松市でネット販売会社を設立した。
 
 来年のNHK大河ドラマの主人公で、同市出身の新島八重をモチーフにした「萌(も)えキャラ」を考案。酒やストラップなどの商品にあしらい、福島の復興に一役買おうと張り切っている。

 
 この元警察官は、「アレック」代表の佐藤哲也さん(33)。2003年に県警に採用された。震災当時は郡山署に勤務していたが、沿岸部の捜索に携わり、津波で家やビルが流され、東京電力福島第一原発事故の影響で住民がいなくなった様子を目の当たりにした。福島の将来に胸を痛め、その後も被災現場のことが忘れられなかった。

 
 「復興のために何かしたい」。1か月ほど悩み抜いて出した答えが、地域の特産品を販売する会社を起こすことだった。昨年7月に退職し、会津若松市の実家に戻った。

 
 真っ先に行ったのは市場調査。全国各地を車で回り、街頭などで福島のイメージを尋ねたが、案の定、放射線を不安視する声が多かった。「風評被害は、福島の現状がよく知られていないからだ。関心を引き寄せる仕掛けが必要」と痛感した。

 
 そこで目をつけたのが、萌えキャラだ。佐藤さんは実は、漫画や美少女キャラが大好きな「根っからのオタク」。八重の萌えキャラを作ろうと、自身もファンで、県内在住の漫画家荒井チェリーさんにデザインを依頼し、荒井さんも快く引き受けてくれた。

 
 「八重」はおてんば娘で、13歳と花嫁修業時代、戊辰戦争を戦う男装の3パターンがある。かけっこと木登りは誰にも負けず、砲術師の娘であることから「銃マニア」という設定だ。

 
 佐藤さんは今年7月に起業し、八重をあしらった商品開発を本格化。地元の職人や酒蔵の協力を得て、ろうそくやリキュールを手がけたほか、宮城県利府町のガラス工芸職人にストラップを作ってもらった。大河ドラマ「八重の桜」にちなんで「萌えの桜」シリーズと名付けて、ネットショップで販売している。

 
 東京・秋葉原を始め全国で開かれる萌えキャラのイベントにも持ち込み、好評を博した。売り上げの一部は同市に寄付するといい、佐藤さんは「地域に貢献したいという気持ちは、警察官の時と変わらない。八重と商品を通して福島に興味を持ってもらえれば」と話している。問い合わせはアレック(0242・23・4005)。
 
(2012年11月28日  読売新聞)