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巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
【連絡先】
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少年の涙

2020-04-11 10:38:46 | 
薄桃の花びらがはらはらと舞い降り
風は空っぽの心の細道を吹き抜ける
少年はちっちゃな手指を差し出して
白灰色に沈積した路上の塵芥を拭う

道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス
限りなく白に近い薄桃に誰かが色を付ける

少年が開け放った白い扉の向こうには
モノクロームの日常が群れをなして待つ

少年よ、少年よ

もはや涙すら涸れ果てた私
朽ち果てて黒の亡骸になるのを待つほかない
その間ただひたすら祈るのだ
君が憂い、流す涙の一粒一粒に
世界のあらゆる黒が閉じ込められるよう

涙は真実でできていると知ったあの日から
誰かがついてきた優しい嘘をすべて許そう
そしてすべての罪と罰に色をつけよう、春色を
口づけのようなやわらかなタッチで



「モノクロームキッス」(推敲中)

2020-03-29 13:10:05 | 


「モノクロームキッス」

薄桃の花びらがはらはらと舞い降り
風は空っぽの心の細道を吹き抜ける
少年はちっちゃな手指を差し出して
白灰色に沈積した路上の塵芥を拭った

道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス
限りなく白に近い薄桃に誰かが色を付ける

少年が開け放った扉の向こうには
モノクロームの日常が群れをなして待つ
視線の遥か先にある空に泳ぐ虹が
黒から白へ七色のグラデーションを描く

もはや涙も涸れ果てた老人は
黒ずんだ自らの躯を抱きしめるほかない
そしてただひたすら祈るのだ
少年が流す涙の一粒一粒にあらゆる黒が封じ込められるよう

涙は真実でできていると信じたあの日から
誰かがついてきた優しい嘘をすべて許そう
そしてすべての罪と罰に色をつけよう、春色を
口づけのようなやわらかなタッチで

「モノクロームキッス」(草稿)

2020-03-23 00:07:07 | 


薄桃の花びらが足早に舞い散り
空っぽの心の細道を吹き抜ける
少年は小さな手指を差し出して
白灰色に沈積した路上の塵芥を拭った

道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス
誰か色を付けて、誰か

アナタは何でできていますか?
私はコンビニの総菜コーナーに並ぶカレーパスタ
チープな食材でできています

町を一回りして帰ってきた飼い猫
我が家の軒先に寝転ぶ日日是好日
視界の遥か先にある空に泳ぐ虹よ
黒から白へ七色のグラデーションを描け

少年が開け放った扉の向こうには
モノクロームの日常が群れをなして待つ

老人はもはや涙も涸れ果てた
黒ずんだ自らの躯を抱きしめるほかない
そしてただ祈るのだ、
少年が流す涙の一粒一粒にすべての黒が封じ込められるよう

涙は真実でできていると知った夜(=君がそう教えてくれた)
誰かががついてきた優しい嘘をすべて許そう
そしてすべての罪と罰に色をつけよう、春色を
口づけのようなやわらかなタッチで


永遠も半ばを過ぎて

2020-01-13 11:21:28 | 
永遠も半ばを過ぎて

すっかり冬籠りした白髪の山々に囲まれた古都は
新たな一年を迎えても変わらぬ落ち着きを見せる
町を埋め尽くす群衆、立ち込める人いきれ
振り向けば道すがら辻説法
そんなのも粋じゃあないか
かつて生きた町、とても好きな町
湧き上がる水を手で汲み口に運ぶ
満ちわたるやわらかな空気を全身にまとい
いつか見た人魚の幻影を追う
この地に存在するすべてが常に変わらず古より残り
そして、当然の所作が如く後世へ語り継がれていく

あゝ、なんと逞しき生命のリレー

変わらないことの重さを認識し
残すべき血筋を確かに受け継ぎ
伝えるべき何かを綴り、語る
かつての若者はいつしかこの町の顔役に
その生き様、それは思うに
あるべきものをあらしめる覚悟と決意

永遠も半ばを過ぎて
万里の歩みの末に見出すものはきっと
光の眩さと暖かさ
古都を包むように照らし始めた朝日を浴びる
恍惚とした表情は未来への活力を得たかのよう
誰かが衝いた鐘の音が北山から鳴り響く
全力で生きる皆を鼓舞する空気の鳴動
我が瞳は確かに人魚の姿をとらえた
その遥か向こうまで続く道を見据え
再び訪れる誓いを立て、平凡を良しとする日々を刻みゆく
この足で踏みしめる大地が此の地と彼の地をつなぐ
昨日紡いだ絆は常に永遠に胸の中

ほんの一瞬のこと

2019-12-15 23:30:56 | 
「ほんの一瞬のこと」

この広い大地にひとり立ちすくむ
何度も見たはずの青がいつしか赤に染まる
その連続性を追いきれぬまま迎えた夕闇の到来
暮れなずむ街の風景

託されたのだ
託されたのだよ
ついに、私しかいなくなった

震える冬の日に道端で天を仰ぎふと思い出す
細長く白い煙がたなびく青空を見上げたあの夏の日
一筋の陽光が私の吐息を溶かす
遠のきゆく存在に誰もが思いを馳せた
記憶であり、憧れであり、懐かしさであり、憤りであり、そして、雄姿であった
今去りゆく無数の時間の断片

主役は姿を、そして言葉を失ってしまった
数限りない満足と悔恨を残して
こみ上げる感情はどこへ持っていけばよい
たとえ拳を振り上げたとしても行き場なく地に堕ちるだけ

大切なものはかくも容易に失いゆく
私を現世へ誘ったあの太陽は草葉の陰で眠る
託されたのだ
託されたのだよ
生きること、笑うこと、語ること、すべてを

成功も失敗も
過去も未来も
栄光も衰退も
それは数万光年の一瞬のことだから
怯える必要などないというのだろう

あなたが笑みを湛えて歩み寄ってくる姿
自信に満ちあふれたその大き目の歩幅を私は忘れない
期待と現実は裏腹に、その狭間は思いのほか広く深い
思い切り走りたい、あなたの分まで

帰らぬ人
大海の向こうで、遥か頭上の雲を越えて
何の根拠もなくあなたに守られている気がする

明日も東京は晴れるらしい
一日という一瞬がまた終わった