”玲瓏”管理人のつぶやき

"玲瓏:羽生善治(棋士)データベース"管理人たいがーの独り言(HP更新情報含む)

K-1 WORLD GP 2007 決勝戦

2007年12月13日 | 桜庭和志
 決勝トーナメント抽選会において、チェ・ホンマンが初戦の相手にリベンジを誓うジェロム・レ・バンナを指名したとき、この二人は潰しあいにしかならない、それならばセーム・シュルトが優勝してしまうだろうなあと何とはなしに頭をよぎった。まさにそれが現実となった。しかし、その現実はあまりにもつまらない、あっけない結末だったことも付け加えられよう。

 戦いは真剣勝負であり、殺るか殺られるかの殺伐とした風景にこそ緊張感が生まれるのであり、見るものに武者奮いを伝播させる。そんな真剣勝負の場でその実力差から一方的な試合展開には、その圧倒的な場の空気に驚愕こそ見るものに与えることはできても、心の底から湧き上がる感動は与えることはできない。真剣勝負に感動を覚えるためには、見るものの予想を上回る展開であることが必要不可欠である。もうだめだと感じさせる精神的・肉体的限界から蘇生して逆転することが名勝負につながる。

 K-1は真剣勝負でありながら、観客を動員し公共の電波を通じてお茶の間に配送されることから紛れもない”ショー”である。もちろん、プロレス的な八百長はないが”ショー”である。プロレス的八百長とは、プロレスは敢えて技を受ける、相手の得意な技のパターンのアドリブを競い合うことを指す。しかしショーとしてのプロレスはファンを裏切らないことを基本としており、ファンの支持を受けている方が勝ちやすく、ファンの後押しがあって初めてチャンピオンになるものである。”ショー”でありながら、K-1は真剣勝負であるが故にファンを無視した結果になることもある。

 全体を通してイチバン熱くなった試合は、シェロム・レ・バンナvsチェ・ホンマンだ。二人の潰しあいにこそ戦いの浪漫を感じた。K-1サイトの対戦投票でもこの試合、そしてMVPにファンが選んだのはジェロム・レ・バンナだ。優勝したセーム・シュルトではないのだ。チェ・ホンマンに対峙したジェロム・レ・バンナは、体格差を感じさせない正攻法の攻撃で終始圧倒して見せた。自分よりも30センチも身長が高く、40キロも体重が重たい、言わば大人と子供、その体力差を克服してあまりある戦いぶりだった。

 結果論でしかないが、いっそのことチェ・ホンマンvsセーム・シュルトを初戦にもっていって欲しかった。巨人対決の方がまだ面白かっただろう。この面子ではそれ以外にも若き王者バダ・ハリに期待したかったが、最近少しまとまってきた感じがして冴えない。初戦判定で敗退。ピーター・アーツの決勝戦、澤屋敷の初戦は気持ちの空回りであるし、レミー・ボンヤスキーや武蔵の試合は単調すぎて面白くない。

 そもそも前人未到の3連覇を成し遂げたセーム・シュルトは、PRIDEにおいてエメリヤーエンコ・ヒョードルとは引き分けたものの、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラには関節技で一本負けしているし、何よりセルゲイ・ハリトーノフに顔面血だるまにされTKOされた試合を見ているだけに、どうも諸手をあげてチャンピオンとして認められないのだ。セーム・シュルトが王者として君臨している限りK-1人気は盛り上がりの少ないもののままである。ファンの期待を裏切らないファイトを続けるジェロム・レ・バンナの悲願の優勝をなんとか見届けてみたい、つくづく思う今日この頃である。

最新の画像もっと見る