”玲瓏”管理人のつぶやき

"玲瓏:羽生善治(棋士)データベース"管理人たいがーの独り言(HP更新情報含む)

上智大学講演「決断力」

2006年07月31日 | 羽生善治
 行ってきました、上智大学。どうやら来週号の「週刊将棋」でも本講演をとりあげるそうですが、ひとあし早くこちらでは報告します。写真はたくさん撮りましたが肖像権保護のため割愛します。お見せしたいのはやまやまですが

 上智大学法科大学院特別講演「決断力」羽生善治三冠 10号館講堂 16:15~17:15

 講堂は扇型すりばち状でざっと500、いや600人以上の収容能力があったでしょうか?ほぼ満席(後日およそ700人と発表あり)。中央の島前から3列目右端をゲット。定刻開始。まず滝澤正上智大学法科大学院長からごあいさつ、さすが院長で笑いを誘い場を和ませる。ゲスト登場の前に場を暖めるのは基本だがなかなかできないこと。何気ないところに感心。

 そして紹介を受け、濃紺のスーツに白いワイシャツ、青地に柄模様のネクタイをつけた羽生さん登場で万来の拍手とカメラフラッシュ。さあ、講演開始です。

「普段黙って対局しているのが棋士ですが、今日はずっと喋り続けるということで緊張しています。」場内笑いでつかみはOKですよ、羽生さん。

「棋士が何を考えているのか今日のテーマである”決断力”になぞらえてお話できたらと思います。」テーマを冒頭に。さすが羽生さん、いつもながらわかりやすい始まり。

「”棋士の方は何手読まれるのですか?”とよく聞かれます。よくある質問ですが、答える方は簡単なようで実は難しいんです。1つの局面での読みは100手にはすぐなります。確率論では10の30乗ほどとも言われます。すべてを読むことは不可能と言ってもいいでしょう。そこで違うアプローチ”大局観”をもって読むことになります。自分が最近よく頼るのは直感です。80通りあると言われる1つの局面で2つか3つに絞ります。ただ、この”読み”と”大局観”を論理的に使いわけているかというとそうではありません。」ふむふむ、冒頭はいつぞやも聞いた滑り出しですねぇ・・・。

「1つの場面でわからない場合は自分は2つの方法を使います。まず先にゴールを設定します。自分で最後にこうなりたいをイメージしてそこにどうやってつなぎ合わせるかを考えるのです。また流れに沿っているかと考えることもあります。」イメージの話は聞いてことある、でも2つ目の流れに沿っているかは初耳。

「将棋ファンの方は将棋のプロは何でも見通していると思われている方が多いかもしれません。実は10手先はプロでも無理なんです。それではプロの実戦ではどうするのか?想定していない手の場合は1から考え直しなんです。つまりアドリブで考えるというか、五里霧中でやっているんです。でもアマとプロの違いがここにあると思っています。羅針盤の精度というか大体の正しい方向性を選択できるかだと思うんです。」内容は前に聞いたことがあるけど羽生さん新手、表現が新しい。

「対局では1時間、2時間考えることがあるとご存知かと思います。でも、30分考えると実は考えることって飽和状態なんです。あとは、ためらっている、迷っている、ひるんでいるんです。自分の場合、こんな時は直感に戻るよう心がけています。直感とはこれまで自分が培ってきたものが集約されていると思うんです。」いや、そうですよね、直感と一言で言っても当て勘のことでなくて、経験の重さで全然変わってくる感覚だと自分も思うんです。

「年齢によってアプローチの仕方も変わってくると思うんです。自分が10代のときは経験もなかったのでひたすらたくさん読んでいました。20代30代になると記憶力も衰えてくるので、大局観に重点を置くようになり、如何に捨てるか、たくさん読まないか、に変わってきました。」ふむふむ。

「ただ直感に頼ると当たるのは7割くらいなんです。あとの3割ははずれなんです。3割はずれると対局では勝てません。このギャップを埋めるのはやはりきめ細かく読むことになると思います。定跡はそのまま使えればそのまま使い、そうでない場合をどうするかが勝負なのです。」これは新しい内容ですね。

「重要な場面ですが、若いときはどう指すかの決断が早かったんです。しかし、年齢を重ねる、経験を積むことで、あの時うまく行ったけどあの時は失敗したと悩むことになります。決断を要する比重が増えてきたとも言えます。ある意味、若いときというのは知らぬが仏、勢いでやっていたと言えますが、その勢いで流れを呼び込んでいたかもしれません。年齢を重ね経験を積むとそれが足かせとなり平均点をとる指し方、すなわち、勢いがない、一貫性がない、流れを読んでいない手になりがちです。選択肢が多い場合少し危ない橋を渡るくらいがいいかもしれません。」なるほど。

「大先輩に大山康晴十五世名人がいました。大山十五世は手を読んでいないんです。大先輩、大名人に向かってこんなことを言っては失礼かもしれませんが、盤面を見てさっと急所に指しているんですね。カルチャーショックでした。こんな指し方があるんだと思いました。自分はまだまだそういう指し方はできないので、そうなれればと思います。」

「プロ同士の対局は相手の手を封じている、間合いをつぶしていることが多いんです。剣豪同士の対決と言ったらおわかりでしょうか?間合いをつめると危ないけど、怖いからと言って下がると相手が前に出てきて何もいいことがない。つまりひるまない気持ちが大事だと思うんです。」そうですよね、剣豪同士、いい表現だ、思わず唸る、うーーん。

「プレッシャーとは自分の器だと思うんです。どう言ったらいいんでしょう。走り高飛びのバーに例えるといいかもしれません。150センチを飛べる人にはそのバーはプレッシャーにはあまり感じないかもしれません。でも、飛べない人には物凄くプレッシャーに感じるのではないでしょうか?しかしこの真剣さの度合い、思考の密度こそが成長に大きく影響するんだと思っています。」そうだよなあ、度量ですよねぇ、度量。

「同じ場面でも、真剣勝負の実戦の場ではあれこれ悩んでいても、練習将棋ではこの場面はこの一手だよなあ、と簡単に指せることがあります。」ああ、やっぱり羽生さんでもそうなんだあ。

「不安な場面では、あえて単純化しないようにしています。思考の幅が広がることにつながり、考えるゆとりが出てくる。練習将棋の気楽さが必要とも考えられるし、真剣勝負でのプレッシャーの中での思考の密度がある一方で加減が大事と思えるのです。」いい加減なんではなく、良い加減が大事なんですよね。

「好調・不調の波ですが自分にもバイオリズムがあると思います。不調のとき、運がないかそれとも実力がないのか考え込んでしまいます。ま、不調も3年続けば実力と言いますが、実力がなければ簡単で実力を向上させるよう頑張るしかありません。運がないときは難しいです。そういうときはやり方を変える様にしています。つきと運、考えると楽しいです。自分も頼りたいしそれにあやかりたい。しかし、総合的に実力がつけば悪い波を乗り越えやすいと思うんです。好調のとき、実はそちらの方が難しい、好調を維持するのは難しいんです。できるだけやり方を変えないようにはしますがそれも良し悪し。結局は加減の問題だと思います。プロ10年目になりますが、山あり谷ありで短期的には調子の波が激しくても5年10年の長いスパンではそれほど差が出ないのではというのが持論です。」実力をつけるのが一番、これが難しい。イチローもそう、基本を忠実にこなすことから始まるんでしょうかね。

「ちょっとずつ立ち位置を変え、2~3年経ってみたら違うものになっていればいいと思うんです。でも、また2~3年経ったら違うことを言っているかもしれません。それではお時間になったようですのでここまでにしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。」常に変化していようというアプローチ。これが天才羽生の所以なんでしょうね。

ここから質疑応答、途中エールがありましたが合計14個の質問。

①対局の相手が誰かはどれくらい意味があるものか?

 狭い世界で何十年も対戦するのであまり意味がない。ただ、棋風があってこの場面ではこの人ならこう指すなという予想は立てやすいことはあります。

②思いもよらない手を指されたときはどう対処されますか?

 お茶でも飲みます(笑)時間がないときは気合いです(場内爆笑)

③ビジュアルな盤ではなく符号のようなもので考えられるようになったとお聞きしましたがいつからでしょうか?

 初段になってからです。子供の頃土曜日に席主に先週あったことを報告することになっていましたが、そのとき棋譜を覚えて・・・席主には迷惑だったかもしれません(笑)

④専門的になると他人に理解してもらえないことがありますが?

 「この手は良かった」とか自分で言うのはどうでしょう(笑)でも、対局している二人しかわからないことが実際は確かにありますね。

⑤チェス、オセロのプログラムで乱数を発生させるかゴールを決めてそれにつなぎ合わせるかで悩みますがどちらがいいでしょう?

 うーん、直観ということであれば、もっとあいまいで、わかりやすく説明できないものであると思います。(わかりました。いい加減に作ってみます。と質問者が答え、場内爆笑)

⑥リスクのある手はいつ頃から指されたのでしょう?

 正直三段までは結果だけ追い求めていました。プロと言われる四段からですね。

⑦ネットワーク対局と対面対局の違いはどう思われますか?

 うっかり指した手は対面でしか感じられないと思います。対面して指していると”しまった”と思ったことは同じ空気が相手に伝わるんですよね。

⑧コンピュータ将棋の発展はどう思われますか?

 端的に言うと強くなるプロセスが全然違うと思います。人間は直観・判断で、詰め将棋のような計算が生かせるのがコンピュータだと思います。

⑨トップ棋士と言われる人はどのような練習をされているのか?

 自分は、棋譜ならべ・詰め将棋・考えの実戦というくらいです。ある特化した局面においては自分より知っている人はたくさんいます。

※質問というよりはエールを送りたいという初老の男性がマイクを持つ
 森内先生も名人在位4期目で羽生先生に並んだ。しかし、羽生先生にこそ十八世名人になってほしい。(場内から割れんばかりの拍手、もちろん自分も

⑩進路を決めた理由はナンですか?

 12歳で奨励会に入ったので正直将来の進路とか職業という意識はなかったんです。ただ、自分の親は将棋を知らなかった。親が介入する余地がなかったので、あまのじゃくの自分にとってもよかったかもしれません。

⑪プロ棋士として成長とは何かと思われますか?

 とっても難しい質問ですね。本当の意味で進歩しているか?だと思います。10年前の自分と戦って絶対勝てるかと言われると勝負なのでやってみないとわかりません。ただ、時代や年齢に沿って順応・適応していくことかなと思っています。
 
⑫土壇場に弱いのですがどのように対処されてこられましたか?

 切羽詰まって時間がないときは何も考えていません。運がないだけなら過去を忘れること、これからいい目が出ると思います。

⑬棋士は長丁場の対局、最後は体力勝負だといいますが気をつけられていることは?

 集中力を発揮するにはメリハリが大事で、休むときは何も考えずぼーっと休みます。はたから見ていると異様だと思います(笑)

⑭10歳小学校4年生ですがどうやったら将棋が強くなりますか?

 まずは簡単な詰め将棋を毎日毎日解くこと、次に自分よりもちょっと強い人と対局すること、最後にあまり考えないでたくさん対局する、これが早く強くなる方法だと思います。

 まだまだ質問し足りない雰囲気でしたが、時間を定刻5分超過で打ち切りとなりました。羽生さん、いろいろ参考になりました。ありがとうございました。

 いや~、それにしても文章長くなった~。ご精読ありがとうございました。

K-1 World GP 2006 札幌大会

2006年07月30日 | 桜庭和志
 2000年35歳の若さで急逝したアンディ・フグの追悼大会となった本大会は、角田サブプロデューサの語るとおり本当の意味でこれまでK-1のリングでリベンジを果たしたアンディになぞらえて”リベンジ”マッチ4試合が組まれた。しかし結果はボンヤスキー以外返り討ちであった。

 自分の見所は、1年半ぶりに復活する天田ヒロミ、アンディの後継者ビヨン・ブレギー、そして最強の素人ボビー・オロゴンでそれぞれ期待とおりの結果だったが、期待していなかった曙戦での崔洪万の技術には目を見張るものがあった。

 スカパー721は、フレッシュマンファイト、オープニングファイトが終わったオープニングセレモニーから放映だったのでその後全8試合を観戦した。それでは各戦ごと感想を。

第一試合:フレディ・ケマイヨvs天田ヒロミ
 ヨーロッパで黒アゲハと言われ20戦以上して負けナシのフレディ、対して1年半ぶりに復活の天田。戦前は天田のかませ犬的な声が大きかった。ただ、もともとボクシングテクニックの高い天田が蹴りを覚えて戦いの幅が増えた。ブランクがハンディとなったかスタミナが切れた天田だったがあのフレディにあわやというところまで追い詰めての判定勝ちは今後に期待を抱かせる。

第二試合:ビヨン・ブレギーvs中迫強
 厳しいことを言うと中迫はホントに勉強しないな。でも、今回は通常の選手と圧力がまったく違ったと思う。予選大会でも層の厚いアムステルダム大会を制したブレギーだ。文字とおり何にもさせてもらえなかった。この悔しさを糧にして次頑張ってほしい。ブレギーは今年のK-1GPの戦いが楽しみだ。セコンドにあのハンス・ナイマンがついていた。

第三試合:ボール・スロウィンスキーvs富平辰文
 初回の殴り合いでカットさせた富平はあそこが勝負だったか?ムエタイをベースにして大会を席巻しているスロウィンスキーだがあのカットでペースを崩したものの最後は帳尻を合わせた形か?ただ、ブレギーほどの防御テクニックはなさそうかな。

第四試合:藤本祐介vsボビー・オレゴン
 最強の素人ボビーにどう対峙するか藤本。結果は判定で藤本。内容は総合格闘技。しかし今回もボビーの非凡さが随所に見られた。至近距離からのとび膝蹴りは唸った。並の身体能力でない。またあの藤本のメガトンパンチがほとんど効いていないのは首をひねった。パンチの見切り方も素人じゃない。何より戦う気持ちが凄まじい。残念なのはあれほど平仲ジムでならったパンチのコンビネーションが出なかったことか・・・。ま、難しい注文だ。戦前のトレーニングについて、曙とボビーが特集されていた。素人のボビーの方がよっぽど厳しいトレーニングだった。言わずもがな・・・。そうそう、K-1だったけどセコンドはグラバカ菊田早苗でしたな。

第五試合:ビーターアーツvsゲーリー・グッドリッジ
 よくグッドリッジは耐えた。ピーターは一時腰痛が慢性化していたようだが、それも最近はよくなり得意のハイキックが出るようになった。内容ではピーターだったが、判定までもったのはゲーリーのこの試合に対する気持ちがそうさせたのだろう。ピーターの復調は大会を盛り上げる。

第六試合:レミーボンヤスキーvsマイティモー
 唯一リベンジなった試合。でもレミーの試合はつまらない。マイティモーも爆発しない。マイティはどうしてもマークハントをかぶせてしまうが、センスが一段違うのだろう。マイティのサモアンフックをことごとく封じてみせたレミーを褒めるべきだろう。しかしレミー、離婚していたとは・・・。

第七試合:崔洪万vs曙
 前から言っているが曙の考え方では総合格闘技、K-1は無理だろう。崔洪万はこの1年でボクシングテクニックが格段に成長した。これは目を見張る。体重を絞ったつもりの曙だが本人も自覚しているとおりテクニックを磨かなくては話にならない。仕留めるのにはそれほど時間はかからなかった。成長しない曙、急成長の崔、勝敗は明らかだった。

第八試合:グラウベフェイトーザvs武蔵
 武蔵の意気込みは強く伝わってきた。アンディスピリットが一番伝わってきたと谷川プロデューサーも語っていたがそうかもしれない。しかし武蔵の攻撃はもうひとつ鋭さがない。最終ラウンド、フェイトーザのラッシュに一発いいのをもらう、ゴング寸前ストレートがカウターで決まる。現在の二人の勢いを示しているようだった。

暑中お見舞いお久しぶりです

2006年07月29日 | 更新情報
 日刊ゲンダイが主催していた「オールスター勝ち抜き戦」の観戦記情報を調査中です。~1991年分がほぼ完了で、来週は1992年の第14回から4~5年分調査できたらなと思っています。あと雑誌情報もちょくちょく触っておりますです

 で、気がついたらこのブログ、ナント7月1日から公私ともにドタバタしていてカキコしていなかったので、書きたかった内容をその日に戻して書いてみますのでヨロシクです

 

今年度GT初優勝

2006年07月24日 | 高木虎之介
 7月23日はSuperGT第5戦菅生だった。そして嬉しい嬉しい、高木組の今年初優勝

 GTはドライバ2人1組で戦う箱のレース。昨年までスープラだったトヨタ勢は今年からレクサスになり、ここまではちょっと勝手が違うようだった。

 予選はハーフウェット。しかし相棒立川祐路がタイムアタックで3番手タイムを叩き出し、午後のスーパーラップへの進出を決める。そのスーパーラップ、相棒でありGT最速と言われる立川がタイムアタック、ZENTレクサスはポールポジションを獲得した。

 決勝はドライ路面。高木虎之介がスタートを担当、スタートから前半トップを守るも何度もタイヤをロック、他チームより若干早いピットに見えたがタイヤがバースト寸前で万事休すだったところで、立川祐路に交代。しかしピット作業にもたつく。その間、ライバルの本山組がトップとなり、立川は2番手でコース復帰となる。立川は鬼神の追い上げであっという間にライバル23号車の後ろにつく。そして終盤、周回遅れに一瞬手間取った隙をついてトップに。そのままトップでチェッカーを受けた。

 高木でないのは残念だったが、立川と本山の行き詰るデッドヒートは手に汗握る好バトルだった。高木ファンとしては、最強の男:本山、最速の男:立川との激闘、と高木が蚊帳の外に置かれた言い方はちょっと複雑だが、それでも初優勝してポイントランク2位となったのは嬉しい。

英語でのインタービュー

2006年07月20日 | 羽生善治
 2006年7月フィラデルフィアで開催された第34回ワールドオープントーナメントに参加した羽生さんは、国際マスターノーム(IM norm)を獲得した。現在ファイドマスター(FM)の羽生さんがまたnormを獲得すればIMに昇格する。

 ここで羽生さんが英語のインタビューに応えているんで通訳してみたい。
http://www.thechessdrum.net/
~/tournaments/WorldOpen2006/interviews/Yoshiru_Habu.mp3

インタビュア(以降I):
ダアイム・シャバスです。ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催中のワールドオープンチェストーナメントの会場にいます。第8ラウンドがちょうど終了し、最後のラウンドを残すのみです。今回のインタビューでは、日本から参加されている羽生善治さんに来ていただきました。羽生さんは将棋のプロ棋士で、過去何回か、このワールドオープントーナメントに参加されています。それでは彼に、いくつか質問してみたいと思います。では始めに、ワールドオープントーナメントに参加されているわけですが、プロの将棋棋士でもあるのですよね。

羽生さん(以降H):はい。

I:将棋とチェスの似ているところを教えてもらえますか?

H:共通している点は3つのピース(駒)で、キング(王将)、ルーク(飛車)、ビショップ(角)です。これらのピース(駒)はまったく同じ動きです。最も異なる部分はピース(駒)の使い方です。最も異なるというのは、ピース(駒)を取ったらもう一度盤上で使えるからです。

I:つまりピース(駒)を取ったら、もう一度自分のピース(駒)として使えるわけですね。

H:クレイジーハウスのようなと言えばいいでしょうか。

I:うん?ああ、バグハウスのことですね?

H:あ、そうです、そうです、バグハウスです。

I:チェスを始めて何年になりますか?

H:6年くらい前にシカゴオープンに参加しました。それが最初の国際トーナメントです。一年に1~2回、外国のトーナメントに参加しています。

I:このワールドオープンには何年前から参加されていますか?

H:今回で二回目です。最初は3年前で、今回が2回目です。

I:前回羽生さんが参加されたときのことを覚えていますよ。そのときの大会記事を書きまして、羽生さんの写真と記事を載せました。羽生さんが有名な棋士だということを知っている人はたくさんいました。羽生さんは最高の将棋棋士だと評されています。将棋のチャンピオン(名人?)をどうやって決めるか説明してもらえますか?

H:ちょっと聞き取れませんでした。もう一度お願いできますか?

I:将棋のチャンピオン(名人?)にはどうすればなれるのですか?

H:ああ、わかりました。まず10代のうちに将棋の養成所である奨励会に入るんです。そこには年齢制限があって、26歳までにプロである四段にならないといけません。将棋連盟にプロとして認めてもらうのです。そこから昇級といいますか、5つのクラスがあって、C2から始まって、C1、B2、B1、A級と進みます。A級は10人で、最終的にA級の勝者と名人が戦って、チャンピオン(名人)を決めます。

I:最初にチャンピオン(名人)になったのは、何歳の時ですか?

H:23歳のときになりました。

I:それまでの最年少のチャンピオン(名人)でしたか?

H:いえ、20年ほど前に違う人が21歳でチャンピオン(名人)になっています。

I:わかりました。ところで、チェスは将棋に役立ちますか?

H:始めたときは何か将棋の役に立つと思っていました。今は全く違うゲームだと思っています。でもこの2つのゲーム、将棋とチェスを比べるのは面白いです。戦略とか、何て言うんですかね、習慣とか、プロの世界とか、何が違うのかいつも比べていますね。

I:日本では、チェスは人気のあるゲームですか?

H:競技人口は1万人くらいだと思います。でも本当によく対局している人は100人以下だと思います。

I:100人以下ですか?

H:少ないです、ホント少ないですね。

I:チェスに関して何か抱負はありますか?例えば目的だとか、達成したい目標などはありますか?

H:トーナメントはいつも楽しむようにしています。チェスにはプロとアマの境がないので、うまく行けば私でもかなり高いレベルにあるグランドマスターと対戦できますからね。これはオープントーナメントで楽しみなことなんです。

I:日本にはたくさんのファンがいるので……サインをお願いされたりしますよね?

H:そうですね。

I:ここでは落ち着いていられると思いますがいかがでしょう。それともこのトーナメントでたくさんの人が会いに来たりしますか?

H:そんなに多くはありません。でも何といいましょうか、外国で将棋をする人は大抵チェスもします。ごく稀に自分を見つけて「羽生さんですよね、私も将棋が好きなんです」と声をかけられます。でも稀ですね。

I:ローレンス・カウフマンという方をご存知ですか、IM(国際マスター)で将棋も指します。彼と日本で対戦したことはありますか?

H:ええ、10年ほど前駒落ちで対戦したことがあります。カウフマンさんは日本以外ではトッププレイヤーですよ。

I:それは凄い。さて、将棋を習おうと思ったら、一番良い方法はなんでしょう。

H:そうですね、何て言いましょう、最初は基本的な戦術を勉強することでしょうか、後は囲いを作るとか、駒を犠牲にすることを恐れないことでしょうか?ポーン(歩)は最も重要ですね。その後はたくさん対局することです。それが上手くなるのに最も良い方法だと思います。

I:アメリカにはこのトーナメントのためだけに来られたのですか?

H:ええ、これだけです。

I:をを、そうなんですか(ちょっとびっくりって感じ)。米国滞在中に他にインタビューの予定はありますか?

H:いえ、これが最初ですね。でも今までに5~6回はアメリカのインターナショナルトーナメントに参加しています。

I:質問は以上です。お時間ありがとうございました。このインタビューは thechessdrum.net で公開されます。きれいに編集しておきます。名刺をいただきましたので、サイトへのリンクを後でお送りします。それでは気をつけて日本へお帰りください。ありがとうございました。

MLB オールスター

2006年07月12日 | イチロー
 イチローは2年ぶりにファン投票での出場で先発メンバーだったが、3打数でヒットなしという結果に終わったがそれ以上に気持ちが奮い立ったことかもしれない。MLB最高年俸のAロドリゲスが、イチローにぺったりつきっきりだったという。

 ヤンキースの主砲ともなるとそのプレッシャーは並ではない。しかも、ゴジラ松井、ジオンビー、シェフィールドとシーズン当初からケガでチームの主軸が戦線離脱だった。そんな中でAロッドはもがき苦しみ、何年かぶりの4打席4三振も喫してしまう。

 イチローがオリックス時代にチームが業務提携したマリナーズの春季キャンプに参加したことがある。Aロッドは当時マリナーズに在籍していて、イチローのバッティングを見てすばやく素質を見抜き評価していた。MLBに来ても誰よりも変わらず結果を出し続けるイチローのゲームへの入り方。そんなところに着目するAロッドも非凡な選手なんだろう。

 イチローが、Aロッドに「試合前の調整方法を一緒につき合わせてほしい」という申し出を素直に受け止めたこと、そして超一流となった今でも少しでもいいところがあれば素直な姿勢を持ち続けること、に純粋に感動した。そのイチローもそうした姿勢を持ち続けるからこそ、そうした行為に感動するのだろう。

ドラマ:2006/7-9

2006年07月09日 | TVドラマ
今タームは以下に絞りました。

「サプリ」主演:伊東美咲
毎週月曜日午後9時フジテレビ系列
http://www.fujitv.co.jp/suppli/index2.html

「結婚できない男」主演:阿部寛
毎週火曜日午後10時フジテレビ系列
http://www.ktv.co.jp/shinsuke/

「マイボスマイヒーロー」主演:長瀬智也(TOKIO)
毎週土曜日午後9時日本テレビ系列
http://www.ntv.co.jp/boss/

サプリは伊東美咲主演、相沢紗世ちゃんも出演ということで何となく、
阿部寛は中学時代親友の従兄弟(これホント!)、
マイボスマイヒーローは韓流ドラマのリメイク版だけど、
第一話から痛快キテレツで、主人公がバカだけど一本気で面白すぎです。

ドラマ:2006/4-6

2006年07月02日 | TVドラマ
TVドラマレビューです。

今期はビッグコミックスペリオールで連載中の「医龍」がドラマ部門の視聴率No.1だったようですね。2回くらいしか見れなかったのは残念です。何でもあの屋上シーンは自分も仕事柄よく行く某社の屋上だとか・・・ってその会社の取締役から聞いたんで嘘じゃないけですけどね。道理で見た風景でした。

・月曜日21時フジテレビ系列「トップキャスター」
http://wwwz.fujitv.co.jp/topcaster/index2.html

 何といっても椿木春香役を務めた主演の天海祐希でしょう。アシスタント飛鳥望美役の矢田亜希子、元恋人で取締役、最後は社長に就任する結城雅人役の谷原章介との掛け合いや、 飛鳥望美の幼馴染でおっちょこちょい蟹原健介役の最近売り出し中玉木宏の三枚目さ、 現場を取り仕切りもどこか頼りない石場小吉役の生瀬勝久、椿木春香を海外から連れ戻しいつもキー的な役割をする柴田勝俊役の児玉清と、久々楽しめたドラマでした。

 シリアスな中にも笑いがふんだんに取り込まれている。難しい顔をしてメモ用紙を渡す児玉清、メモ用紙に夕方の買出し項目を見て思わず声に出して読む椿木春香、あわててメモ用紙を取り返す児玉清・・・などなど。

 宝塚女優は長年の舞台で染み付いたくどさを感じることが多いのですが、天海祐希はいい意味で振り切っていて、視聴者を惹き付けるモノがありますね。また、谷原章介もいい感じでシリアスとお笑い両方メリハリをつけて演じられる。劇団☆新感線出身の渡辺いっけい、古田新太、羽野晶紀らと読売テレビの深夜のコント番組「週刊テレビ広辞苑」に出演した生瀬勝久(当時:槍魔栗三助(やりまくりさんすけ))もあの頃から何かと追っかけています

・日曜日21時TBS系列「おいしいプロポーズ」
http://www.tbs.co.jp/oishii-propose/

 ストーリーはあのジュリア・ロパーツが主演して話題となった「プリティ・ウーマン」というかシンデレラストーリー系で、町の一介のシェフ白石鈴子役の長谷川京子がちょっとイワクつきの大企業御曹司である葛城春樹役の小出恵介と出会って紆余曲折最後はハッピーエンド。

 ハセキョンは強気だけどそれでいて控えめなところもある一本筋の通った大和撫子を演じさせるとハマりますね。また、人気ドラマ”ゴクセン”にも出演した小出恵介君は、もこみちには男前さでは負けるけど演技ではきっと上でしょう。あと、大河内対決の、西村雅彦vsアリトキリギリス石井ちゃんとの演技派対決は見物だったし、葛城社長役の橋爪功はしぶい演技だった。けど、天野っち、小林麻央、小池栄子、小澤征悦など存在感はあったけど、ドラマとしては何か足りない感は否めなかった。

 ハセキョンはいいけど、次のドラマ選びは勝負ですね。どう選択するかは事務所絡みでのプロデュース力ですが注目です。

PRIDE無差別級GP2006 2回戦

2006年07月01日 | 桜庭和志
 終わってみれば、第6試合ノゲイラvsヴェイドゥム、第7試合藤田vsヴァンダレイの試合以外は対戦者の差がありすぎた。第一試合から振り返ってみよう。

第一試合:エジソン・ドラゴvsパウエル・ナツラ
ナツラは柔道メダリストで地力があるものの結果が出ていなかった。この試合ではドラゴからうまく腕ひしぎ十字をとって一本勝ち。後につなげることができた。

第二試合:中尾芳弘vsイ・ウンス
韓国総合格闘技の覇者ウンスもアマレスオリンピック代表の中尾のタックルとパウウンド力には圧倒された感じだ。中尾と藤田というのも見たくなった。

第三試合:高橋義生vsヴィクトー・ベイフォート
あのヴァンダレイを秒殺したことのある実力者ヴェイフォート。桜庭は彼を圧倒してスターダムにのし上がった。片やUFC日本人初勝利をあげた高橋。しかし彼は打ち合いに行ってあごにもらうケースが多い。秒殺だった。

第四試合:アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラvsアリスター・オーフレイム
ミドル級GPの前哨戦で一度対戦したことのある両者。そのときはノゲイラが勝っている。しかし今回は成長著しいアリスターが試合の主導権を握っていた。ただ、試合開始から気になっていた絆創膏。2R攻め込まれたところでアリスター陣営がタオル投入で幕。アリスターが万全のときにもう一度見てみたいカードだ。

第五試合:中村和裕vsエヴァンゲリスタ・サイボーグ
シュート・ボクセが送り込んで来たサイボーグ。見るからにヴァンダレイの構えにそっくり。しかし試合はいきなり決まる。カズがすぐテイクダウンをとり、体勢を整えてからアームロック。何もさせずに一本だ。

第六試合:アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラvsファヴリシオ・ヴェイドゥム
総合格闘技としての寝技師同士の対決は実に見ごたえがあった。まず打撃戦ではノゲイラが圧倒してしまうのでは?という予想を覆しヴェイドゥムのパンチが的確にノゲイラの顔面をとらえ目じりをカット。さすがミルコと練習しているだけある。グランドではノゲイラが肩固めにとらえられそうな他の戦いでは見られそうにないシーンがあったのは印象的。しかしノゲイラの体の入れ方や反転の仕方が秀逸でかつ流れるような攻防には見入ってしまった。判定は3-0でノゲイラ。それほど大差ではないがマストシステムではそうなるかな。

第七試合:藤田和之vsヴァンダレイ・シウバ
野獣・藤田のパンチがどれだけあたるか?はたまたヴァンダレイの攻撃が藤田に効くか?に注目したが、結果は藤田のパンチあたらず、ヴァンダレイの波状攻撃に藤田が撃沈だった。しかし、この試合の緊張感はホントファンとしてはたまらなかった。もうひとつ、シウバにKOされたら大概相手はノビテイルものだが、藤田はヴァンダレイの右手をあげて相手を称えていたのは違う意味で印象に残った。やはり化け物藤田、その藤田を崩れ落ちさせて怪物シウバだ。

第八試合:マーク・ハントvsジョシュ・バーネット
ハントは2年でK-1王者になった天才、ジョシュは史上最年少でUFCの王者になった天才。二人の天才の対決、そして親友の対決だ。バーネットの体の入れ方が秀逸。ハントやミルコに対しても相手がパンチをうってきたときに体を中に入れる。相手の攻撃が怖くてなかなかできないもの。すぐテイクダウンをとって、腕絡みで一本。グランドでも反撃できるようになってきたハントも為す術なしとはジョシュの地力を再認識だ。

第九試合:吉田秀彦vsミルコ・クロコップ
負けん気の強い吉田が痛みに耐え切れずKOは印象的だった。ローを狙われたときの柔道家には前々から懸念していた。それが現実になった。柔道では下半身を踏ん張って相手の間合いに入ろうとするので、ローをもらったときダメージを蓄積しやすい。特にミルコのローは膝の横から後ろを蹴る靭帯にダメージを狙うものだ。猪木が極真空手でならった”アリキック”と同じ原理だ。特に左ハイを警戒していてもらいすぎてしまった。残念だが、やはり吉田はヘビー級のトップファイター相手には辛い。よく頑張った。

無差別級GPベスト4は、ノゲイラ、シウバ、ジョシュ、ミルコ。ミルコが唯一他の3人とあたったことがある。結果は×ノゲイラ、△シウバ、○×ジョシュだ。自分としては、ノゲイラvsシウバを見てみたい。優勝候補筆頭はズバリ言うと、ジョシュかな。