羽生善治名人のデータサイトを管理・運用しているとたまにはありがたい話が舞い込んでくるものです。100冊の本委員会の吉川さんから、玲瓏管理人を本講演会にお招きいただきました。最近は羽生さんの講演会に行く機会がなかったので、ちょうど良いタイミング、と言ってはなんですが、これは行く一手でしょう、ということで行ってきました。
会場の三宅坂ホールは、東京はど真ん中、国会図書館の隣にある、社民党本部の建屋5階にある、由緒・歴史のあるホールです。国会図書館は、玲瓏データの特に棋戦結果や観戦記情報を集めるのに足しげく通っている場所で馴染みはあります。しかし、そのお隣の社民党建屋に入るのは初めてでした。うーん、エレベータに歴史を感じる(^^;、そう思いながら5階会場に向かいます。
5階に着くと長蛇の列。当日支払いの受付待ち行列。自分は招待いただいた身なので「ごめんなさい」と行列を横目で見ながらごぼう抜きで招待客受付に向かいます。もらった札がA席、前方にはVIP席とS席がありますが、羽生さんが立つだろう位置と程よい近さで満足な距離、羽生さんの登場を心待ちにします。ぐるっと見回すと500人は集まったでしょうか。600人収容できるホールですので8割の入り、思った以上に人が集まりました((^^;吉川さん、ご苦労様でした)
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【写真提供】100冊の本委員会)吉川正弘氏
講演開始のアナウンスでは羽生さんたっての希望で今回の入場料の一部をホームレス支援金に充当させるとのことでした。すばらしい。3人の男性、2人の女性、若者5人が壇上にあがっていきます。アカペラで「Stand by me」を熱唱。なかなか斬新な始まりです。早稲田大学の合唱サークルの学生さんとのことでした。その後、スライドショーで羽生さんのプロフィール紹介。メンデルスゾーンの「歌の翼に」をBGMに生い立ちが語られていきます。そして漸くグレーのスーツと白いワイシャツ緑のネクタイの出で立ちの羽生さんが登場します。
「皆さん、こんにちはー」とお決まりの挨拶。しかしこの日はそれに対し「こんにちはー」と会場後方から元気のよい若者の声。それを聞いた羽生さんはすかさず「皆さん、元気ですねー」と笑みを交えながら返します。和やかなムードで講演開始です。「例えば100キロのバーベルをあげるような無茶なことを言うつもりはありません。」羽生さんの言葉は万人にわかりやすい。今回の話題は3点。1.つき・運、2.プレッシャー・緊張感、3.ミス。実はこのブログを読まれている方には馴染みの内容です。
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【写真提供】100冊の本委員会)吉川正弘氏
ここからは”たいがーメモ”。
1.つき・運
時代の流れでもあるし変化し続けるもの。ひとをひきつけてやまない。ギャンブル。しかし深くかかわりすぎないのが得策。
指し手を考えるときには3つのプロセス:「直感」「読み」「大局観」から形勢される。
脳科学者:池谷裕二氏に拠れば「直感」と「閃き」は異なるもの。「直感」は論理的に説明できるが「閃き」は何だかわからないもの。
調子のバロメータはひとえに勝負どころで見切って決断できるかにつきる。不調のときは生活習慣を変えたりするといい方向に向かうことが多い。
2.プレッシャー・緊張感
先日のサッカーW杯の代表選手でも「楽しんでプレイしたい」というひとが増えてきた。ゾーンというかいい意味で集中できれば全力が出せる。
3つの場合わけ:①楽しんでやる②プレッシャー・晴れ舞台③やる気がない
例えば高飛びで150cm飛べるひとから見た100cm、200cm、155cm。155cmにプレッシャーがかかる。いい緊張感があればよい結果も得ることができる。
いろいろな手を考えると言っても普段よりは公式戦で一番深く考える。追い込まれて切羽詰まったときにひとに依るかもしれないが一番力が出る。
3.ミス
ノーミスの対局は1年に1回あるかないか。一番大変なミスは一手詰めを見逃したこと:血が逆流するかのような感じだった。
将棋には感想戦と言って対局の反省を対局者同士が行う。「反省はするけど後悔はしない」
ミスは起きるものとして捉える。「ミスにミスを重ねる」ことは極力なくす。
順調なとき=良いサイクル→ミスをする=いい流れが断ち切られる→難易度の高い状況
ミスの対処法:自分を強くもつ、諦めない、ついて行く方が実は精神的に楽、微差で勝っているときの方が辛いもの
リスク:
若いうちは知らない→思い切ったことができる
経験を積むといろいろ見えてくる→知らないうちにブレーキをかけている
最近はアクセルを意識的に踏んでいる
メンタル面:
年齢とともに上昇している。ものごとに動じない。
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【写真提供】100冊の本委員会)吉川正弘氏
その他
6次の隔たり=世界中の人は6人仲介すればつながっている
ひとりひとりのもつ影響力というのは実は大きい
理由1:ターミナルみたいなひとがいる
理由2:遠くのひとと知り合いがいる
タテのつながり社会からヨコのつながり社会への変遷か=新たな価値の創出
自分としてはこれまでにすでにお話を聞いてきた内容でしたが、羽生さんの言葉がより洗練されてきていることを実感しながら聞いていました。最後の6次の隔たりについては、タテ社会からヨコ社会になり新たな価値の創出へのつながりという展開が以前よりも明確になって今更ながら”ををを、なるほど”と納得したりしていました。
休憩時間にメールだけのやりとりだった100冊の本委員会の吉川さんを見つけてご挨拶。「玲瓏さんのリンクからコンスタントに申し込みいただきました。ありがとうございました。」とがっちり握手。玲瓏クンのリンクが役立ってたんですね。「もしよければ写真分けていただけますか?」と無理な注文を承ってもらいました(^^;
では質問タイムは次回・・・