”玲瓏”管理人のつぶやき

"玲瓏:羽生善治(棋士)データベース"管理人たいがーの独り言(HP更新情報含む)

"私には夢がある”講演会:質問編 前半

2007年02月27日 | 羽生善治
質問① 勝負の日、体調が悪いときどうすれば良いですか?

特に2日制では出足で調子が少し悪いときの方が結果がいいこともあります。「棋は対話なり」と言うように相手の調子に引っ張られて調子が上向くこともあります。

質問② 「決断力」の中で、真似をする、学ぶ、理解すると出てきますがもう少し詳しく教えてください。

他人の話を聞いたり、本から得た知識から”真似”をします。関連する”真似”を積み重ねて”学んで”いきます。それでは一歩進んでこうすればこうなると”理解”します。例えば棋譜。PCの画面だけではすぐ忘れがちです。自分でどうなのか?と思うときは必ず盤と駒をもって手を動かします。五感を使った方が身につくと思うのです。

質問③ 勝負事、無謀とチャンレンジの違いを教えてください

新しい手を試してうまく行くのは感覚的に3割です。ああ、やめておけばよかったと思うこともしばしばです。そこでこの手は3回までやろうとか勝手な基準を設けます。この新しい手は不調な時ほどチャレンジできます。調子がいい時は流れを止めるかもしれないからです。

質問④ 升田将棋との違いについて教えてください。

升田将棋は、”新手一生”を標榜し、今から30年も前でありながら現代のスピード感を備えた将棋でした。ただ、相手が呼応してくれないところっと負けたり、はまったときには切れ味鋭く勝ったりと、アンバランスな将棋でもありました。風貌は写真を見たことがある方はご存知のように”仙人”みたいな人でした。

質問⑤ 現状自分より上だと思う人と対戦する場合はどうしますか?

大きな差があるときは思い切った作戦をとります。わずかな差しかない場合には、普通に指します。

質問⑥ ”月下の棋士”の氷室将介は羽生さんがモデルですか?

違います(笑)”月下の棋士”は業界では誰がモデルか皆だいたいわかっています。作家能條純一さんともお話したことがありますが、登場人物の名前には必ずモデルの人の名前が入っているんです。6~7年前にテレビ放映がありました。そのときは将棋会館へ来る子供達は一様に帽子を被っていたりしましたが、明らかに氷室将介の真似だったですね。

質問⑦ 営業ですが2位にはなれてもなかなか1位になれません。佐藤棋聖に気持ちがよくわかります。ちょっとした違いだと思いますが・・・

時代とのマッチングというのもあると思います。そのときの流行が棋風にあっていれば少し有利になります。盛んに研究されている局面では他の人がすでに思いついていることが多いのです。結論が出ていない局面においてどう対処するか?が肝心です。でも、最後は”気合”でしょうか?(^^)

質問⑧ 羽生さんは凄く普通に見えます。将棋以外で他に趣味などありますか?

棋士に対して偏見を持たれているのではないかと(場内笑)今の20代の棋士の人たちはホントごくふつうの若者です。ふつうというよりは皆しっかりしているのではないでしょうか?プロの棋士への養成機関でもある奨励会も師匠が教えてくれることは稀で自分で勉強するしかありません。早くから負けたときは自己責任と意識づけられています。

一日中将棋盤を見てそれを1ヶ月続けたら気が狂いそうです。息抜きとしては、何も考えずぼーっとしたり散歩をするのが趣味ですね。

質問⑨ 重要な対局でどうやって迷いを断ってこられましたか?

対局で何が厳しいかと言えば"時間に追われる”ことです。皆さんも〆切りがあるかと思いますが時間に追われる事ほど辛いものはありません。勝敗では、10代の時の方が3~4日落ち込むこともありましたが、時間が解決してくれました。

質問⑩ ”決断力”で直観の7割が正しいとありますがもっと比率が高いと思うのですが・・・

厳密に統計をとった訳ではないのでわかりませんが、将棋の場合、感覚的に直観のまま指すと3割は負けます。直観は過去の知識の積み重ねによって生まれるもので、迷ったときは再度直観に戻ることもあります。

質問⑪ 羽生さんはご自分では”ふつう”と思われますか?

自分ではごく標準の日本人だと思っています。もっとも何をもって”ふつう”か”ふつうじゃない”かわかりませんのでよくわかりません。

質問⑫ 深い思考に行くにはどうすればいいですか?

深い思考にはいきなり行けないので”助走”が必要です。ただ、当日の体調も影響しますし、考えがいがある場面かというのも重要です。これらが整えば車のギアが入るように深く考えられます。

質問⑬ 羽生さんにとって人生の価値観を聞かせてください

日々発見することですね。例えばおいしいラーメン屋さんが見つかった、とか、些細なことでも何でもいいと思います。

質問⑭ 結婚を考えています。結婚感について教えてください。

棋士は一人で受け止めることが多いです。独身のときはまさに一人で責任を背負っていました。家族ができて子供に癒されることもありますし、独身時代より気持ちが安定していますね。

質問15 羽生さんの棋士としてのゴールは何ですか?

こういうものになりたいというのはありません。さきほども述べましたが、日々の発見を重視しています。

質問16 夫婦ゲンカはしますか?

子供が学校へ行くようになってから奥さんは忙しく夫婦喧嘩どころではないようです。ま、対局日前日などは気を遣ってもらっているんだと思います。

※後半につづく

”私には夢がある”講演会:講演編

2007年02月24日 | 羽生善治
 行ってきましたとも、羽生さんの講演会。最近は土日もない状態ですが、たまには息抜きしないと死んじゃいます(^^;;

「勝負どころで迷いを断つには?」講師:将棋棋士 羽生善治氏
日時:2007年2月24日(土) 14時~16時半(13時半:開場)
(14時~15時:講演/15時~16時:質問タイム/16時~16時半:サイン会等)
場所:渋谷フォーラムエイト 7階 707会議室
主催:有限会社 私には夢がある
費用:5,000円(税込)
定員:120名 (満員御礼締切)

 開場直後に現地に到着し、茶々丸さんと最前列を陣取ることに成功。最前列、講師席と1メートルも離れていない!のはこちらがどぎまぎ状態に。羽生さんも登場するなり「こんなに聴講者と近い距離な講演会は初めて」とのことでした。120名の内訳は20代の若い人が中心で、将棋をそれほど知らない方も過半数だったような感じでした。

 「仕事がら黙っていることが多いですが(場内笑)今日は喋り続けるということで」と掴みはOK。「題目はこうですが、普段から感じていることを中心にお話していきたいと思います」ということで講演スタート。それではダイジェストで振り返りましょう。

 「インタビューで棋士の方は何手読まれるか?という質問をよく受けます。それは実際には困る質問なんです。確率論的には10の130乗の組合せと言われ膨大な数です。ではどうするか?直観によって2~3手に絞りそこを掘り下げていくのです。カメラでいうとピントを合わせるようなものでしょうか?また大局観も重要です。攻める時か?守るべき時か?それとも手を渡すべきか?相手の側に立って見る、もしくは中立的第三者となって見れるように冷静な判断が必要です。終盤によくするのですが、終局模様を想定し自然な手の選択をして辻褄を合わせることもします。元に戻って何手読むか?プロ棋士同士で議論しましたが、10手先でも難しい、という結論でした。3手に絞っても3の10乗で59000以上通りにもなるのです。したがって対局中に常にピントを修正していくことになります。個人個人方向性を決める羅針盤が違いますがそこに正確さが求められるのです。」

 「つき、運は確かにあると思います。だからギャンプルとか占いにはまる人がいると思います。人間にはバイオリズム、波があると思うんです。将棋は結果がはっきりしている、つまり因果応報もはっきりしています。時間に追われて指した手が正解だった、よく指運という言葉を使いますがそういったものはあります。半歩リードされているとき相手の小さなミスがあり逆に半歩リードしたとき、それも実感として得ることがあります。」

 「情報化の時代についてお話しましょう。将棋界、昔はのんびりしていました。対局開始直後の午前中はお互いの近況を話たりしていたのです。今では序盤の研究が進み決着がつくこともあるので朝から真剣です。水泳のバサロスタート、潜って距離をかせぐ泳法です。将棋界もルールは不変だが求められるものが変わったと言えるでしょう。自分なりに考えて対応していくことが重要なんです。」

 「将棋界はその昔家元制度でした。保守的な部分もありますが、対局の始めと終わりに礼を尽くすなどいいところはあります。ただ手筋については足かせだったかもしれません。その手は王道ではない、その手は本筋ではない、など形式にこだわることが大半でした。ここ10年はいろいろ試すようになってきたので戦法の可能性は広がりました。ただ、見たこともない手は拒絶感はあります。勝負に雑念は禁物なので出来る限り白紙の気持ちを持てるよう心がけるようにしています。」

 「棋士生活20年、経験を重ねるということには良い点、悪い点があります。良い点は、うまくリスクを避けるようになりました。若い時はせいぜい1手か2手しか選択肢がありませんでした。しかし悪い点は、楽しようではないが平凡な手をさすことでしょうか?また多くの手が見えるようになるので選択肢が増え迷いが生じることもあります。振り返ると、若い時は選択肢がなかった分危険もわからず指していますが、勢いとなって流れを呼び込むことも実際あったと思います。現状では、アクセルを踏み込みすぎているのが丁度いいくらいだと思うようにしています。」

 「30代も半ばを過ぎるとホント忘れることが多いです。自分のインタビュー記事の内容すら忘れていたりします。しかしちゃんと理解したものは覚えています。つまり情報、知識として得たものを吸収し自分の血肉になって初めて生きるのです。そしてひとつひとつの理解が有機的につながって”あ、そういうことか?”とわかることも出てきます。一方、若い時に研究したことは今実際役に立っていることは悲しいかな、何ひとつありません。しかし無駄なようだけど無駄ではありません。問題へのアプローチ、プロセスが重要だからです。新しい問題にぶつかったとき、そのアプローチやプロセスは今も生きています。」

 「”玲瓏”とは澄み切った気持ちで先々まで見通すことを言います。この心境が理想です。しかしそれを妨げるのがプレッシャーです。プレッシャーは自分ができるかできないか、その境目にあるとき受けます。それはその人の器量に依存するものだと思うんです。プレッシャーをひとつ乗り越えればその人にとって大きなブレークスルーになるとも考えます。また、違う視点で見ることも大事です。大きな勝負のかかった対局、しかし将棋を知らない人からすればどうでもいいことなんです。」

 「人は元来怠け者だと思うんです。誰でも楽したい。でも本当のピンチを経験するとき、潜在的な力を発揮すると思うんです。また安定することはないんだとも思っています。調子はその日にならないとわからない。なので、じたばたしても始まらないと根拠のない楽観をしています。」

 「ファンの方からよく”頑張ってください”と声をかけられます。調子がいいときは平常心で聞けますが、調子が悪いときはカチンときます(苦笑)”頑張っているんだよ~”と思いつつも”あ、どうも”と応えたりします。”キレる”というのも自分にはよくわかる気がします。集中し過ぎて考えられなくなる。内に詰め込みすぎると”キレる”気持ちは起き易くなります。処方箋としては健全に発散することでしょうか?」

 この後、Q&Aの時間となりました。つづく。

走り屋ばか

2007年02月17日 | よもやま
 その事件は第三京浜で起きた。

 うちの奥さんが実家のある千葉に帰っていた。ケンカしたわけではない。お義父さんが入院されたため看病に行っていたのだ。しばし家に戻れるということで横浜駅に車で迎えに行くことになった。

 バタバタしていると時間が迫ってきた。このままだと時間に遅れる、時間にうるさい奥さんにどやされる、と思い急いだ。

 自宅から第三京浜都筑インターへ向う道でアルファロメオがちんたら走って通せんぼじじぃ状態、気持ちが急いているので知らず知らず後ろにピッタリくっついた。いや、あおっているつもりはなかったが…(^^;

 アルファロメオはETCがない。こちらは涼しい顔でETCだ。よしと思った。発券から第三京浜への合流時、ふとバックミラーを見ると、前後逆転したそのアルファロメオが後ろからあおっている!

 「ああ、ばかがきた!(^^;;」

しかし同時に、

 「真っ赤なセリカでぶりぶりだったオレさまを誰だと思っている」

と導火線に火がついた。

 3車線の本線合流すると左車線、中車線の前方に遅い車集団、中車線には中途半端なスピードの車が来ている。作戦開始だ。そろっと、左車線に入る。アルファロメオは本線に入るなり、急加速して中車線、右車線に移動し、また中車線を経由して左車線自分の前にかぶせてきた。

 「やはり、そうきたか?」

 と思った瞬間、中途半端なスピードの車を利用して、エンジンブレーキを使い急減速、かぶせてきた瞬間、中車線、右車線と車線変更だ。案の定、アルファロメオは袋小路になった。

 「へんっ、ざまあみろだ」

 しかしこちらは東名高速道路上でのスピード違反でおまわりさんにお世話になった身だ。時速100キロ(ちょっと)しか出さない(^^;こととしている。袋小路をなんとか脱したそのアルファロメオが急スピードで後ろに接近してきた。

 「お前よぉ、スピード違反だろが(--;;」

 とは思ったものの、おまわりさんは周りにいなそうだ。追い越し用右車線にいる自分の前にかぶせようと何度も中車線から仕掛けてくるが、こちらも入らせないように前のバンの後ろにぴったりくっつく。バンは後ろに気づいていないかのごとく平然だ。そのうち保土ヶ谷料金所に着きカーチェイス?もジエンド。こちらはETC、アルファロメオ君はETCなしだから。

 「走り屋としてはイマイチだな。」

と思ったが、ふと気づいた。

 「そういう自分が”ばか”だったか…」(爆)