発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

「博士と彼女のセオリー」

2015年03月21日 | 映画
 この映画の物語は1963年に始まる。
 同じ空気を吸ってたんだね。 
 この時代のイギリスといえばビートルズだけど、それとは別の世界である。
 ケンブリッジへようこそ。美しく古式ゆかしきキャンパスでの最先端の学問。物理教授がスーツの上にガウン着てる。ガウンを着る大学は日本にもあるだろうが、式典だけのものじゃないの? 若い大学院生、スティーブン・ホーキングも、蝶ネクタイで登場する。
 同級生と自転車で競争し、漕艇部ではコックスを務めていた彼が、少しの違和感にはじまり、やがて歩くのに遅れるようになる。歩きにくさからある日ひどく転んでしまい、搬送された病院で検査され、医者にALSであることを宣告されてしまう。知性は損なわれないまま、これから身体が少しずついうことをきかなくなり、余命は2年であると。同じ大学で文学を学ぶジェーンと交際しはじめたというのに。
 メジャーリーグの名選手が罹ったことで世に広く知られた「ルー・ゲーリッグ病」(ゲーリッグを主人公にした「打撃王」というアメリカ映画を見たことがある。ゲーリッグはゲイリー・クーパーが演じ、本物のベーブ・ルースが、ベーブ・ルースとして出演してた。病気を発症して引退するときのスピーチが印象的だった)が、よりによって自身に降り掛かってこようとは。
 絶望(ホーキング博士は存命で、余命は書き換えられていることをすでに知っているから、安心して鑑賞できたわけですが)。
 でも、ジェーンは彼と結婚して支えていくことを選ぶ。困難な道である。時間の経過とともに、学問の成功と子供たちの誕生と成長と、そして症状の進行が並行していく。観客は、不可逆な進行をする疾患の残酷さを目の当たりにする。スティーブンは杖をつく。杖は2本になりそのうち車椅子となり、車椅子は電動車椅子となり、息ができなくなり生きるために気管を切開する、そして電子音声で話すようになる。
 子育てと介護と学問への協力で、ジェーンがへとへととなることは想像にかたくあるまい。そこで手助けしてくれる人が家庭に入ってくる。それが2人の関係に軋みを生む。悪い人、いやな人は出て来ないから世間的「不貞」というのとは様相を異にしている。さて、どうなるかは劇場で。
 自転車競争のスティーブンは、ジップアップのベストを着てる。あまり見かけないタイプだけど、あのころ出回ってたんだろうか。それから、チルデンベストだかセーターもでてくる。これは今年の流行でもあるよね。若いジェーンの服も素敵。バーティードレスとか、縞模様のワンピースにカーディガン、シンプルなプリントワンピース。深いグリーンのニットもいいね。あと、ジェーンのお母さんの着てた襟付きのカーディガン。あれはとてもイギリスっぽいと思う。ともかく衣装が見てて楽しい。
 

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