発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

芸能人自死のニュースにまつわるエトセトラ

2022年05月12日 | 日記
◆芸能人自死のニュースが相次ぐ
 渡辺裕之死去。お昼のドラマの、高木美保演じる美しい華族令嬢の相手の帝国軍人だか刑事だかの役が印象深いが、映画「魁、クロマティ高校」で、無口な謎の男、フレディを演じたのが忘れられない。上島竜兵死去。もちろんお笑いの人だが、映画では「銀の匙」で、北海道の農業高校の心優しい校長を演じていた。

◆テレビの国とわたくし
 私の学生時代は、テレビの視聴者参加番組花盛りで、友人と誘い合わせてオーディションに遊びに行くというのが休みの過ごし方のひとつだった。そのうち二度、団体戦一回、個人戦一回ほど実際にテレビに出た。日当のほかに、ポラロイドカメラや腕時計やお菓子の詰め合わせや可愛いオルゴールや番組の名入りバッグや、なんだかんだお土産がたくさんもらえたし、伝説の漫才師と話もできたし、もちろん楽しい思い出なのだが、まあ採用もないだろうが、その向こう側で働いてみたいなど考えもしなかった。視聴者ゲストでさえあんなに疲れるのに、いわんや中の人をや。

◆単なる遠距離恋愛の歌ではなく
 甲斐よしひろが「東京の一夜」(1976)で歌うのは、「木綿のハンカチーフ」(1975)の対立軸である単なる地方対東京ではなく、地方一般人ワールド対東京芸能界ショウビズ界レコード産業界のことだと私は読んだ。一般人の一年分を一夜で体験する世界であり、そこに参入した恋人からほほ笑みを消してしまうのだ。芸能人の死因に自死が多いのは、半端ないストレスのせいだと思う。SMAP解散未遂公開処刑的会見を見てジャニーズ角兵衛獅子説を思いついた自分である。たぶん解散しないと、誰かが失われていた。

◆かくして若者はユーチューバーを目指す
 学生時代に読んだ『労働と余暇』という本に「自律性ある労働こそが余暇時間を充実させる」と書いてあり、読みようによっては、とても残酷な話に思えたのだが、芸能界は「自律性ある労働」から離れた最たる世界ではないかと思うのだ。歌手や俳優やタレントと呼ばれる人は、大きなお金の絡むシステムの商品の一部であり、個人の裁量や自由が利かない。
 裁量や自由と芸能活動を両立させるには、やっぱりユーチューバーになるしかないかな、と思うのである。小中学生のなりたい職業の上位にユーチューバーが出てくるのは当然だ。
 あがり症であろうが、コネがなかろうが、たとえば考えたコントを発信できる仕事ではないか。これからは、YouTubeなどの動画配信を足掛かりにリアルの世界に出ていくというのではなく、リアルの世界に出ないでやっていく人々が増えるのではないかと思う。どうせ不安定なら、裁量の利く活動を、ということだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする