発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

 恋に恋するお年頃?または乙女の暴走する妄想

2012年03月06日 | 映画
「僕等がいた(前篇)」試写会。明治安田生命ホール。

 なんといっても「最愛を信じた永遠の純愛ストーリー」ですよ。行こうじゃありませんか。セブンティーンに戻って胸キュンしようじゃありませんか。
 でも、生田斗真27歳の高校生は、はっきり言って無理があった。ダブりにダブった大先輩にしか見えない。
 吉高由里子23歳は、舌足らずな感じが高校生っぽいといえばそうなのだが。
 自分をめぐって、クラスで人気を二分する男前の男子が争う。80年代、河井奈保子の歌っていた「けんかをやめて」の世界である。こういうシチュエーションは、真のアイドル(偶像として愛される無傷の美少女という意味でのアイドル。同じ時代の松田聖子、中森明菜には絶対に歌えない歌だ)にだけ可能な世界である。この話の主人公高橋(吉高)に感情移入した時点で恋に恋する乙女の妄想爆走状態といえる。
 どう見ても竹内(←中の人=高岡蒼甫=宮崎あおいの元夫=はともかくとして)の方がうちの娘(そんなものはいないけど)と交際するに好ましいと思われるのに、元カレとドライブしてて事故死した年上彼女のことをイジイジ思っているダメダメな矢野(生田)の方がどうしても好きな高橋(吉高)なのであった。結構竹内に対しても思わせぶりだし。

 それにしても、だ。別々の学校ならともかく、相手男子も同じ学校同じ学年同じクラスなのに、クラスメイトが大勢いる教室で、誕生日デート予定についての詳細を友人女子に自慢したり、彼氏に買ってもらった3万5千円の指環を見せびらかしたりして大丈夫なのか? 黙っていられないのか? 友人女子に話すのなら、せめて教室ではないとこで話さないのか? 主人公高橋の口は存在の耐えられない軽さがある。デート内容がすぐ学校全体に筒抜けになりそう。

 元のマンガはどうだったんだろう。ターゲットが小学6年生なら納得だが、いまどきのリアル女子高校生は、こんな話に感情移入できるのだろうか? 恋に恋するお年頃というのかしら? 
 ともかく、まったく胸キュンしないで鑑賞するオバハンなのでありました。だからオバハンなのだと言われても仕方ないです。
 まだ、赤いシリーズ60年代版「コクリコ坂」の方がドキドキした。今回の話も実写よりもアニメにした方が良かったかも。

 ところでこの映画には、矢野の恋人(故人)の妹役で、本仮屋ユイカが出て来る。
 メガネでセーラー服を着た本仮屋ユイカといえば、「スウィングガールズ」の、トロンボーン奏者=天然ボケ関口なのだが、この映画では、ひたすら怖い。ほとんどギャグではないかと思えるくらい怖い。「リング」山村貞子を彷彿とさせるロングヘア。「ククク……本当は私はお笑い好きなんだよ」と、ちびまる子ちゃんの野口の台詞をいつ言い出すのか期待させたが、それはなく、ともかく怖くて暗い。あらゆる光を吸収し尽くす人間ブラックホールとでもたとえるべき暗さである。そんな本仮屋を見に行く、という楽しみ方もある。

 もうちょっと釧路の街を見せてほしかったな。

 永遠の愛については、
「続かないということは、お互いの思いの方向が違っているか、熱意不足かのどちらかである。逆からいえば、熱意もなく、思いの方向もちぐはぐなのに続けようとするのは滑稽であるばかりか、人生の浪費である。大概の男女が別れるときは別れるべくして別れるのである。」
 これ、小娘の頃から知っていても悪くはない言葉ではないか。
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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2012年02月07日 | 映画
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」試写会。ユナイテッドシネマキャナルシティ。

 2001年9月11日。
 あの日のことはよく覚えている。
 夜、テレビを見ていたら、飛行機がビルに突っ込んだニュースが入った。「人間の証明」にも出てくるマンハッタン島のワールドトレードセンターのビルから煙が出ていて、見ているうちに、生中継で2台目の飛行機がビルに突っ込んだのだ。
 ダイハードの新シリーズってあったっけ。でも、ブルース・ウィリスは出て来ないし、何より、どのチャンネルも同じことやってる。
 臨時ニュースで、どのチャンネルも同じことやってるなんて、ろくなことではない。でも真実なのだ。
 テロは同時多発で、合計3000人を超える人が亡くなった。

 空から落ちて来る男の映像、それから、空っぽの棺を埋めるための葬儀からこの映画は始まる。
 宝石商をしているオスカーのお父さんは、オスカーのいい友達でもあった。その日のその時間、商談で、よりによってワールドトレードセンターのビルにいた。 
 オスカーは、 テロ事件のために授業とりやめになった学校から帰宅、ひとりの家で父からの留守番電話を聞き、何が起こっているかを知る。
 やがて家に帰ってきたのは悲しむ母と祖母。
 父からの留守番電話を誰にも聞かせないために、オスカーは、同型の電話を買って、密かに家のものと取り替える。(9歳児が!! ありえないほど賢い!!)

 遺体は見つからなかった。

 オスカーは、父の死から1年後、父のクロゼットに、やっと入ることができた。そこで見つけた青い花瓶の中にあった封筒には、Blackと書いてあり、鍵が1個入っていた。これは父からのメッセージに違いない。ニューヨーク中のブラックさんを探して会いに行き、鍵について聞いてまわり、この鍵の鍵穴を探し出すことを決めた。
 電話帳からリストアップし、地図に印をつけ、綿密な計画を立てた。
 まだ子供で、もともと繊細な上に、事件から怖いものが増えている。9.11を連想させるものいろいろ。救急車やパトカーのサイレン、飛行機の音、叫び声、泣き声、エレベーター、あらゆる閉所。想像にかたくない。
 トラウマで満身創痍な少年が「泣きそうだったけど、僕は絶対やりぬくんだ」と、始めた大冒険。または喪の仕事。
 オスカーは、父からのメッセージをどういうかたちで受け取るのか。
 何が起こるかは、本編で。

 これまでの試写会で、観客が泣く率が一番多かった映画です。
 でも、あと味が良いので、安心してご鑑賞くださいませ。


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人間の証明

2012年02月06日 | 映画
「人間の証明」DVD。

 読んでから観るか、観てから読むか。懐かしの角川映画です。

 ママ~♪といっても、もちろんパスタの話ではなく(大舞家の息子が、ママ~なんて言うもんじゃありません!!てのもあった)1970年代の日本に生きていた人々なら、ボヘミアン・ラプソディーよりも先に、ジョー山中の歌が脳内再生されるはずである。

 ハレルヤ! と叫んで、口笛吹いて、本当にスキップするように日本へと旅立った青年が、なぜ殺されなければならなかったのか。
 美しい人妻が、なぜ雨の夜に突然姿を消したのか。
 群馬の山奥の温泉地でなぜ老婆が殺されたのか。
 西条八十の詩が、謎をとく鍵となる。
 大物政治家の妻であり高名なファッションデザイナーである八杉恭子(岡田茉莉子)にも、彼女を執拗に追う棟居刑事(松田優作)にも、戦後の辛い記憶があった。

 これもまた終わらない戦争の話である。
 70年代半ばにして終わっていない戦争の続きである。

「あの頃は誰も行きてくのに精一杯だったから」

 栄光を得た人間が、過去の自分を知る者を殺す。相手は、まったくの懐かしさで会いに来ていて、お金をゆするなどの気持ちは露ほどもない。そんなことはわかっている。だけど殺す。「砂の器」なら、年老いた善良な元警察官しかも恩人。「人間の証明」では、20年ぶりに母に会いに来た実の息子を、である。

  松田優作、ハナ肇、ジョー山中、鶴田浩二、三船敏郎、笵文雀、長門裕之、北林谷栄、峯岸徹、伴淳三郎、鈴木ヒロミツ、E.H.エリック、と、35年も経つものだから、すでに向こうの世界に行かれた出演者が多い。
 当然だが、生きている人たちも若い。岩城滉一がドラ息子な若造の役をしている。地井武男刑事が若い。だが、大滝秀治は昔からおじいさんである。
 
 岡田茉莉子のゴーヂャスマダムぶりにも注目である。
 昭和のニホヒも味わい深い。
 刑事さんたちは、細身のスリーピースにぶっとい衿のジャケットとシャツにぶっといネクタイ。黄色い公衆電話。OLの制服がミニスカート。
 でかいテレビカメラ。喫煙率高っ。ハナ肇刑事のタバコ、チェリーだし。
 ステキな古いパトカー。
 で、松田優作はニューヨークに。
 カーチェイスが地味っ!!  今の映画と違って、ほかの車を何十台も巻き込んだりしない。でも、そのほうが却ってリアルだわね。
 崖っぷちでの犯人の追い詰め方が、その後の2時間サスペンスドラマに踏襲されていったんじゃないかと。
 そして、映画の最後の最後で、なぜ日本から来た刑事が最後まで自分に心を開かなかったか。自分のことを憎んでさえいるように思えたのはなぜか、その疑問を抱えたまま、ニューヨーク市警の老刑事にも落とし前がつくときがくる。

 うーん、名作である。

 竹野内豊テレビ版「人間の証明」は、最終回だけ見た。
 魂の救済といった感じで、竹野内=棟居刑事が松坂慶子=八杉恭子から自供を引き出す長い場面も良かった。
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日本列島いきものたちの物語

2012年01月22日 | 映画
「日本列島いきものたちの物語」 試写会、都久志会館。

 どうぶつだいすき、というわけでもないけれど、ネイチャー系の映画は、機会があれば見る。ひたすらペンギンを追いかける「皇帝ペンギン」とか、北極から地球の緯線を下っていく「アース」とか、海洋特集「オーシャンズ」とか。
 今回はタイトルの通り、日本列島に特化したどうぶつ映画である。

 野生である。
野生という言葉を聞くと、つい「おとうさん、こわいよ」と、昔の薬師丸ひろ子の物真似を始めてしまう私は古い。

 北海道の熊がサーモンをつかまえるところとか、六甲のかわいいイノシシなどを鑑賞。
 屋久島では、母ザルに抱かれていても、大雨のあと、子ザルがよく死んだりするのだ。
(その子ザルの血縁のサルたちが順番に死んだ子ザルの毛づくろいなどをしている様子が、まるで「喪の仕事」をしているかのようにみえた。)
 もっとも高温多湿の屋久島では、小さな動物は、一週間程度で骨になってしまうそうである。

 気圧などが急変すると、天候が悪くなる前でも、交通事故を複数見たりする。事故や犯罪、そして気分障害などのこころの病気は気候に左右されるという研究もある。
 たぶん、ちょっとした天候の変化が生死に直結していた遠い祖先たちのDNAが残っていたりするんじゃないかと思う。

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ALWAYS 三丁目の夕日'64

2012年01月13日 | 映画
「ALWAYS 三丁目の夕日'64」 試写会。都久志会館。
 東京オリンピックの頃の日本の話。
 
 「コクリコ坂から」や、 「青春デンデケデケデケ」と、時代がかぶる。横浜の高校生が、赤いシリーズな恋をし、四国観音寺の高校生がエレキバンドにうつつを抜かしていたころ、東京下町の鈴木家、茶川家でも、子供が高校生となり、住み込み整備工もお年頃。次の世代の自立、がテーマといえばテーマなのである。
 安心して見てていい。これはもう、基本善人しか出て来ない映画である。
 堤真一の鈴木オート社長も、相変わらず、CGを使って怒っていて、爆笑させてくれる。

 この映画では、恋する60年代乙女にして自動車整備工を演じる堀北真希に注目である。最高にかわいい。堀北を見に行くだけでもこの映画を見る価値はある。乙女に戻って一緒にドキドキしませう。
 単なる、昔は良かった的なノスタルジーに終始していない。公害も問題になってきている時代だ。高度成長時代を背景にしながら、上ばかりを見ない生きかたも提案している。価値は自分が決めることであり、好きな事ならがんばれる、という変わらない真実もきちんと伝えている。

 日本を不幸にしたのは80年代後半だと思っている。バブル崩壊からを「失われた10年」とか「20年」とか、よく言っているが、バブル期に幸福をお金でしか換算できない傾向が蔓延したために、余計な喪失感を味わうことになったに過ぎないのだ。去年さらにいろいろなものを失い、それまでの「失われた年間」が、いかに幸福であったかを思い知っているのではないか。
 でも、まだ持っているものはたくさんあるのだ。
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ゴーイン、マイウェイでした。

2012年01月12日 | 映画
 「マイウェイ」 試写会。

 予告でやってた「僕達特急A列車で行こう」が見に行けるといいな。予告で女の子にキスしようとした鉄道オタクの男(=平清盛またはデスノートのL、松山ケンイチだ!!)が、聞こえてきた列車の音に「あっ、キハ125の音だっ」と、思わず言ってしまう。ありそうあるかも、と、微量鉄道マニアの私は思う。
 キハ125とは、JR九州、唐津線とか久大本線で、ひょっとすると一両編成で運行されているワンマンディーゼルカーである。デザインは水戸岡鋭治。以前は筑豊本線原田・桂川間を運行していた。黄色い車体で、田園の中を走る姿の可憐さといったら。そのキハ125に注目するとは。さすがだ。それだけでも見に行く価値はある、と思う。
 って、マイウェイはどうした?

 超大作だ。
 韓国俳優では群を抜く男前、チャン・ドンゴン様も出ることだし。
 相変わらずステキである。こども、少年、青年(チャン・ドンゴン様)と、三人の俳優が演じていたが、少年時代は、高良健吾ふうの美少年が出ていた。

 CGで航空機や戦車や軍艦が大増量されているところは、レッドクリフさながら。でも、それはいいと思う。
 軍事考証だとか法律考証だとか医学考証だとか衣装考証とか。高い予算の割には、考証が甘いような気がする。それが、リアリティの薄さをもたらしている。
 レッドクリフのような1800年前の物語ならまだしも、まだ同じ時代の人はたくさん生きているわけで。

 と、素人は思う。とりあえず、司法史とか戦史に詳しい方に教えて欲しいと思う。

 裁判所が、争乱を起こした人々を、懲罰として団体で徴兵して前線に送る、なんてありうるのか。
 あんな派手な刺繍のある裁判長の法冠は見たことないのだけど、あれは実在したのか。
 被告不在の軍法会議や、結構簡単にハラキリさせる、なんてありうるのか。
 陸軍刑法は考証したのか、運用はどうだったのか。
 ノモンハンの時点で、日の丸ハチマキで団体で陸地を走って、夥しい数のソ連戦車に突撃、なんてあったのか。
 冬のシベリアで一晩?宙づりにされて、それで重大な凍傷にもかからず無事に生還してるし。
 
 普通に徴兵する(実際の徴兵は1943年からだったんだけどね、まあそれくらいは史実からはずれるにしても)、ノモンハンで普通に負ける、普通な懲罰。たんたんと話を進めたほうがよかったんじゃあないかと思う。

 戦闘は、ワイルド7どころじゃない分量の爆薬を使って、手持ちカメラをブレされまくって、主人公ふたりの目線にしての臨場感。
 2人が雪山を助け合って越えるところや、捕虜たちがノルマンディーの海辺でサッカーをする。美しい画面。
 をを、と思っていたが、最後の最後で、感動がぶっ飛ぶほどの「それは無理でしょ」がある。
 感動的な映画になり得たのに、ショーアップの方法がちょっと違うような気がする。説得力のある考証がほしかった。惜しいと思う。

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新年から「東京原発」鑑賞なのだ

2012年01月07日 | 映画
 福岡に戻り、日常生活となり、郵便局近くのDVDレンタル。
 何を借りようか迷っていると時間がかかって仕事にならないので、1本見つけたら、さっさと借りて帰ることにしている。いまいちならさっさと返却して次を借りる。
 運動つきビデオ・オン・デマンドというか、ペイ・パー・ビューというか。年が明けても旧作7泊8日50円。いつまでやってくれるのかわからないが、10本見たところで500円である。

 さて、「東京原発」。2002年の映画。
 東京新宿副都心に原発を誘致する!! と、都知事(役所広司だっ!!)が宣言する。
 消費地の近くで電力を生産するのは効率的だ。何より都の財政難を救う。メリットはいっぱいだ、と。
 時を同じくしてMOX燃料を搭載したトレーラーが、少年にジャックされてしまう。トラックには時限爆破装置がセットされた。このままでは、あと1時間で東京にプルトニウムを含む死の灰がばらまかれてしまう。

 たぶん制作費の大部分が俳優のギャラといったかんじの低予算映画だ。都庁、港、電車での撮影、トレーラー、核廃棄物とMOX燃料のレプリカ。

 MOX燃料や、高レベル核廃棄物がどのように輸送されているのか。
(ドライバーが飲酒しながら輸送する、というのは、フィクションだろうが)
 そのほか、日本の原発の現状がよくわかる。
 映画のなかで、福島という地名がよく出て来るのでドキっとする。
 想定外の大津波がまだ起きていない日本の原発とはどういうものだったのか。

 都知事の真の意図も最後のほうでわかる。

 80年代半ばだったと思う。郷里、山口県宇部市、化学工場が立ち並び、豪州炭が野積みされる埋め立て地のさらに沖に原発を作ろう、というチラシが新聞に折り込まれた。
 美しい未来都市のようなイラスト。
 そのチラシを撒いた人の素性は明らかではない。連絡先は郵便局私書箱だった。地元紙にいちど取り上げられたが、フェイドアウトした。
 問題提起したかったのか、本気で原発を誘致するつもりだったのか。

 なぜ福島浜通りならよくて、東京新宿じゃまずいのか。福島ならよい理由はどこにあるのか。
 東京新宿であっては良くない理由のかなりの部分は、福島にもあてはまる。
 それを原発事故の9年前から問題提起する映画があったのである。

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クリスマスイブは……オーケストラ!

2011年12月24日 | 映画
◆今年のクリスマスイブは
 クリスマスイブとは、多くの家庭では、家族忘年会ケーキつき、という日ではありますまいか。
 今年は何かと忙しかったため、手作りケーキはあきらめ、ケーニヒスクローネの、チョコレートの熊さんがついたホールケーキを購入。
 子供が小さい頃は、ディズニーなんかのクリスマス関連いろいろ、とか、「ポーラーエクスプレス」とかの、クリスマス的アニメを見ていたものだけど、今年は「オーケストラ!」というフランス映画。
 全然クリスマスじゃあないし。
 なにしろ、いつも行く郵便局の近く、スーパーが撤退したあとに、DVDレンタルのお店が入ったものだから、俄然、生活は文化的(当社比)になるわけです。
 ソラリアシネマで見損ねてたこの映画。DVDにはヒューマンコメディと書いてある。

 ブレジネフの時代、ちょうどモスクワオリンピックが西側諸国にボイコットされたころ、ソ連ではユダヤ人が弾圧されていた。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に取り憑かれた天才指揮者がいた。
 彼が見つけた素晴らしいソリストはユダヤ人で、のちにシベリアに送られ、じきに死んでしまう。
 その30年後の物語である。その件で、指揮者の職を失い、今は劇場で清掃員をしている男が、その昔辞めさせられたオーケストラに、パリの一流劇場から急な出演依頼が来たのを知る。コンサートは2週間後。それまでに昔の仲間を集めて、オファーの来たオーケストラになりすまし、パリの一流劇場で演奏しようと画策する。その荒唐無稽な計画の遂行には、真の目的があった。
 
 全体的にお笑い映画のテイストだが、楽しくて音楽も良くて感動。
 最後のコンサートの場面は、ほとんど台詞なし。
 ソリストが演奏を始めたところで、全員の音が整うのはなぜか。
 指揮棒がテープで補修してあるのはなぜか。
 音と表情の中に答えがあります。
 音楽が好きな方なら、一家で鑑賞できる楽しい映画でございます。
 クリスマス的なことばは、楽団のマネジャーを引き受けた男のつぶやき。
「驚いた。(神様は)本当にいたんだね」

 演奏者が曲に取り憑かれるというのは、演奏はしない私でもわかる。
 今年春、福岡シンフォニーホールであった九州山口高校生オーケストラフェスタで、高校選抜合同オーケストラ(2年生チームはシベリウスのフィンランディア=ダイハード2で使われてた曲、3年生はドヴォルザークの8番)を、世界的指揮者のチョン・ミョンフンが振ったとき、指揮でこうも音が変わるのかと驚いたと同時に、演奏する生徒たちが自分の音に驚いて、それでどんどん演奏が良くなってくるのが伝わってきた。ほぼ全員「向こうの世界」に連れて行かれてた。
 おそらくそのうち何人かは帰れなくなって、人生が変わってしまったはず。

 映画の、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
 いいよね。私はこの曲に「勇気りんりんヴァイオリン」という副題を勝手につけている。テレビの「のだめカンタービレ」で、千秋真一も好きだと言っていたこの曲は、最近は福岡近辺では、遊技場のコマーシャルになってしまっている。「パチンコプラザの歌、じゃないのよ、これは」
 著作権が切れるとはそういうことである。
 
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リアル・スティール 試写会

2011年12月02日 | 映画
ホームページ ←クリックすると、図書出版のぶ工房のページに飛びます。

『ぼくらの想い』発刊。←クリックすると、『ぼくらの想い』のページに飛びます。
『ぼくらの想い』紀伊國屋BookWebで発売中。←クリックすると、紀伊國屋BookWeb『ぼくらの想い』注文のページに飛びます。
『ぼくらの想い』丸善&ジュンク堂ネットストアHONで発売中。←クリックすると、丸善&ジュンク堂ネットストアHON『ぼくらの想い』注文のページに飛びます。
『ぼくらの想い』セブンネットショッピングで発売中。←クリックすると、セブンネットショッピング『ぼくらの想い』注文のページに飛びます。

リアル・スティール試写会 Tジョイ博多。
 物語の核心には触れませんから安心して読んでね。

 ヒュー・ジャックマンは「X-MEN」シリーズの超人とはうってかわって、情けないダメ父として登場する。実際、この映画のボスターやチラシに使われているヒュー・ジャックマンの写真は、もちろん男前さんなのだが、どこか、古谷三敏描くところの「ダメおやじ」に似ている、と思うのは私だけでしょうか。
 ともかく、その男は、元ボクサーで、今は、格闘技用のロボットを持ち、トラックでイベント場に持ち込んでは試合するのを仕事にしてるけど、飲んだくれて借金まみれ。
 しかも、商売道具のロボットが壊れてしまった。 
 ちょうどそのとき、別れた妻が死に、子どもがいない元妻の姉夫婦が、息子の親権を欲しがっているのを知り、元妻の姉の夫(お金持ち)に「金をくれたら親権を放棄する」ことを持ちかけ、了承を得る。そして、夫婦のイタリア旅行の間、息子を預かり一緒に暮らすことになるのだ。
再会した息子に言われてしまう。
「僕を売ったね」
 その通り。サイテーである。
 そのサイテー親父と、ひねくれ息子が、親子の絆を取り戻す、感動のヒューマンドラマなのであります。


 舞台は近未来2020年のアメリカ。人間が行う格闘技は廃れてしまった。格闘技はロボット同士の死闘となっている世界である。
 そのショーは、一大産業となっていて、場末から、移動遊園地、豪華な大スタジアムまで、様々な規模で興行が行われ、ファイトマネーが飛び交い、賭けの対象になり、ときにロボットの持ち主同士で勝敗にお金を賭けることもあるという設定。
 格闘技ロボットといえば、「プルートウ」に出てくるロボットたちを思い出すわけなのだが、作者は手塚治虫とか浦沢直樹とかをリスペクトしてるんだろうなあ。   
 なにしろ、ごみ置き場で主人公親子の拾うロボットの名前は、アトムなのだ。

 1985年つくば科学万博でロボットたちを見て、21世紀になれば、ロボットに生まれたことを悲しく思ったりするロボットが出て来るかしら、と、思っていたけど、まだそこまでは進歩していないみたい。
 映画の世界は、今からまだ10年経たない時代なので、格闘技ロボットは、美しい2足交差パターン歩行など、今のロボットよりさらに洗練された動作を行うが、「プルートウ」(ロボットに人権が!!)や、「アイ,ロボット」(2035年の設定)のような自分で考えて行動する能力はない。遠隔制御の、いってみれば「鉄人28号」型のロボットたちである。だから、ドラマはあくまで人間の物語で、ロボットものの作品についてまわる滅亡の匂いや、もの悲しい感じはしないのである。
 画面がきれい。2時間ちょっとがあっと言う間に終わります。

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ワイルド7 試写会

2011年12月01日 | 映画
ワイルド7試写会。 都久志会館。
 原作は望月三起也のコミック。あまり読んだことはないというか、脳内で、御厨さと美と少しかぶっている。

 ワイルド7。
 それは、警察庁の命令があれば出動して、「たくさんの人を殺した上、今まさに多数の市民を犠牲にしようとしている」レベルの凶悪犯罪者を成敗する、いってみれば非公式の特殊部隊である。
 その名のとおり7人で構成される彼らは殺人許可を得ている。悪人を「逮捕」じゃなくて「退治」する。彼らは、それぞれ暗い過去を持ち、ほぼ天涯孤独の身で、しかも極刑レベルの犯罪者。罪を免除するかわりに、命知らずの任務を引き受けているのだ。
 彼らの戦いは公にはされない。「凶悪犯たちが逃亡途中、謎の事故死を遂げた」と報道されるのみ。

 この荒唐無稽な設定。バイクと火器を操り、胸のすくアクション。
ズドン、ドンパチ、ドッカーン、ガッシャーンな映画ですが、映倫がR15だのPG12だのをつけなかっただけあって、それほど残虐に見えるような仕立てではない。
 画面をコマ割してみせたり、スタイリッシュな編集。一瞬たりとも画面から目が離せない。
 ファッションは、お揃いの、黒い革のライダースジャケットに赤いマフラーという、昭和のニホヒ漂うもの。金髪と、赤毛の人がいなければ、1950年代と言っても通用しそうな感じ。
 でも、ともかく皆さん、かっちょいいっ!!のです。あまり笑わない瑛太。高倉健の枠を狙ってほしいものです。
 話はこみいってきますが、勧善懲悪には変わりなく、素直に楽しめます。

 九州ロケが多く、そういう意味でも楽しめます。福岡市営地下鉄空港線赤坂駅で、ドアが閉まるたびに「さよなら、レイ=ペンバー」(出典:デスノート)と心の中でつぶやき、JR電車から九大のレトロな建物が見えるたびに、脳内に「K20怪人二十面相伝」のテーマ曲が再生される私といたしましては。
 この映画では、福岡市博物館が大変なことになってしまいます。詳細は本編にて。


 


 

 
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