発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

クリスマスイブは……オーケストラ!

2011年12月24日 | 映画
◆今年のクリスマスイブは
 クリスマスイブとは、多くの家庭では、家族忘年会ケーキつき、という日ではありますまいか。
 今年は何かと忙しかったため、手作りケーキはあきらめ、ケーニヒスクローネの、チョコレートの熊さんがついたホールケーキを購入。
 子供が小さい頃は、ディズニーなんかのクリスマス関連いろいろ、とか、「ポーラーエクスプレス」とかの、クリスマス的アニメを見ていたものだけど、今年は「オーケストラ!」というフランス映画。
 全然クリスマスじゃあないし。
 なにしろ、いつも行く郵便局の近く、スーパーが撤退したあとに、DVDレンタルのお店が入ったものだから、俄然、生活は文化的(当社比)になるわけです。
 ソラリアシネマで見損ねてたこの映画。DVDにはヒューマンコメディと書いてある。

 ブレジネフの時代、ちょうどモスクワオリンピックが西側諸国にボイコットされたころ、ソ連ではユダヤ人が弾圧されていた。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に取り憑かれた天才指揮者がいた。
 彼が見つけた素晴らしいソリストはユダヤ人で、のちにシベリアに送られ、じきに死んでしまう。
 その30年後の物語である。その件で、指揮者の職を失い、今は劇場で清掃員をしている男が、その昔辞めさせられたオーケストラに、パリの一流劇場から急な出演依頼が来たのを知る。コンサートは2週間後。それまでに昔の仲間を集めて、オファーの来たオーケストラになりすまし、パリの一流劇場で演奏しようと画策する。その荒唐無稽な計画の遂行には、真の目的があった。
 
 全体的にお笑い映画のテイストだが、楽しくて音楽も良くて感動。
 最後のコンサートの場面は、ほとんど台詞なし。
 ソリストが演奏を始めたところで、全員の音が整うのはなぜか。
 指揮棒がテープで補修してあるのはなぜか。
 音と表情の中に答えがあります。
 音楽が好きな方なら、一家で鑑賞できる楽しい映画でございます。
 クリスマス的なことばは、楽団のマネジャーを引き受けた男のつぶやき。
「驚いた。(神様は)本当にいたんだね」

 演奏者が曲に取り憑かれるというのは、演奏はしない私でもわかる。
 今年春、福岡シンフォニーホールであった九州山口高校生オーケストラフェスタで、高校選抜合同オーケストラ(2年生チームはシベリウスのフィンランディア=ダイハード2で使われてた曲、3年生はドヴォルザークの8番)を、世界的指揮者のチョン・ミョンフンが振ったとき、指揮でこうも音が変わるのかと驚いたと同時に、演奏する生徒たちが自分の音に驚いて、それでどんどん演奏が良くなってくるのが伝わってきた。ほぼ全員「向こうの世界」に連れて行かれてた。
 おそらくそのうち何人かは帰れなくなって、人生が変わってしまったはず。

 映画の、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
 いいよね。私はこの曲に「勇気りんりんヴァイオリン」という副題を勝手につけている。テレビの「のだめカンタービレ」で、千秋真一も好きだと言っていたこの曲は、最近は福岡近辺では、遊技場のコマーシャルになってしまっている。「パチンコプラザの歌、じゃないのよ、これは」
 著作権が切れるとはそういうことである。
 


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