うまくは言えないけど

日々思う事をとりとめもなく書いています

嫌われ松子の一生

2006年06月15日 | 日記
スゴいものを見ました。日本のトップクリエイターがあんなにスゴいなんて衝撃的です。

映画館で映画を見るのもものすごく久々で多分「ピンポン」以来だと思います。昔は映画が好きでした。ハリウッド映画が好きで、デニーロやロビン・ウィリアムスのような名優の映画をよく見ていました。特にアル・パチーノが大好きで彼が出るというだけで見ていました。

それがいつの頃からかマニアの人に比べればたいした数も見ていないのに評論家気取りでもなっていたのか、無意識でストーリーを先読みしたり裏読みしようとしたりして純粋に楽しめなくなっていました。それであまり映画を見なくなりました。それでもたまにどうしても気になる映画は見に行っていたのですが、それもほんとごくたまになっていました。

多分、「嫌われ松子の一生」も何も知らなければちょっと狙った色物映画と思って見に行く事はなかったと思います。実際に中島監督の前作「下妻物語」はまさにアイドルを使った色物映画だと思って見に行こうなんて全く考えませんでした。

それが、この映画のポスターを担当している箭内道彦さんのエッセイにこの映画の事が書いてあって興味がわきました。このエッセイは映画というよりも監督に対する話ではあったのですが、とにかく悲惨なストーリー、しかも邦画でミュージカル、そしてものすごい映像と事でした。

それから本屋で原作やコミックを少し立ち読みしたりして、あまりの話にやっぱりちょっとなという気持ちと、でもどうにも気になる気持ちで見るかどうするかかなり迷っていました。結局箭内さん勧める日本のトップクリエータの映画という事とボニーピンクが出演するという事でとりあえず見てみることにしました。

見てみればストーリーはほんとに悲惨で、話だけ聞くと全く救いがありません。でも感動して涙がでました。松子は要領が悪くて浅はかでちょっと性格が悪かったりします。でもあきれるほど正直でまっすぐで単純で、欠点だらけでどうしようもなく人間的です。愛されている事に気づかずただひたすら愛を求めたり、とことんタイミングが悪かったり、信じられないほど悲惨なのに驚くほどポジティブだったりします。

ボクは今まで中谷美紀という女優にほとんど興味がなく、なんとなくおとなしめのいい女性風の女優さんだろうくらいに思っていました。でもこの映画でイメージが大きく変わりました。女優生命にかかるのではと思うような顔をしたり、歌って踊ったり、一つの映画の中で様々に変化する松子という一人のキャラクターを演じていて、想像を超えるがんばりだなと思いました。中島監督はそれはそれは恐ろしい監督だそうで、中谷美紀さんもかなり大変だったようですが、その苦労の甲斐があったと思います。個人的にはきれいな役より生活に疲れた感のする役がはまり役に感じました。

以前、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」という映画を見ましたが、本当に気分が落ち込みました。「松子」もこの映画に負けないくらい悲惨なストーリーでしかもミュージカルなのですが、こちらはもっとユーモラスに描かれています。人によって違うのかもしれませんが、ボクは松子をかわいそうとは思いませんでした。

この映画や松子に対しては人によって見方が全然違うと思います。多分良かったという人は多いと思いますが、それもどこが良かったかどのシーンが良かったはそれぞれで大きく違うと思います。箭内さんが見る人の間口を広げたかったという意味が見て分かりました。人間のダメな所やいい所がギュッと詰まった松子というキャラクターをどう感じるかは見る側に委ねられていると思います。

悲劇と喜劇は紙一重だと思います。同じように幸せと不幸せも紙一重でしかもそれは本人の感じ方によるところが大きいと思います。端から見ればどう考えても不幸な松子が自分の事を不幸だと思っていたかどうかは分かりません。でも少なくとも好きな男性にまっしぐらな時の松子はほんとに幸せそうでした。ほんと人の価値や人の幸せって何なのだろうと考えさせられました。

妥協のない素晴らしい映像、様々な時代風の音楽、とんでもなく悲惨なストーリー、そして魅力的な登場人物と見所が満載です。こんな邦画は見た事がありません。中島哲也というクリエイターのスゴさを感じました。そしてなにより人間くささを存分に感じられる映画だと思います。

LOVE IS BUBBLE
BONNIE PINK, Youichi Murata
ワーナーミュージック・ジャパン

このアイテムの詳細を見る


嫌われ松子の歌たち
サントラ, 木村カエラ, ch feat.B-BANDJ, BONNIE PINK, 及川リン, AI & 及川リン, Joe Himeji feat.J.
ワーナーミュージック・ジャパン

このアイテムの詳細を見る