きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

「触られる」・・・治癒のメカニズム(1)

2008年07月10日 | 日々の暮らし
 傳田光洋の「皮膚は考える」と「第三の脳」の2冊がおもしろい。生体と環境との物理的境界としての皮膚には、バリアー機能や感覚受容体が存在するのみではなく、なんらかの情報処理システムが形成されている。その役割を担っているのが表皮(皮膚は表面から角層、表皮、真皮からなる)を作っているケラチノサイト(細胞・・・その死骸が角質)であるとして、その様々な機能・役割を最新の研究結果をベースに解説したものである。

 温熱覚、触圧覚、振動覚、痛覚などの感覚受容器は真皮と皮下組織に存在し、表皮は角層を作るバリアー機能がメインと思っていた私の浅はかな認識は見事にひっくり返った。真皮の厚さが1~4mmに対して、表皮の厚さは0.06から0.2mm。この薄い表皮の中に恐ろしいと言うか、素晴らしいというか、未知の機能が隠されている、ということが近年少しずつ科学的に解明されてきているらしい。脳も皮膚も共に外胚葉から出来たものであるから、「第三の脳」的機能を持ち合わせても当然かもしれないと思わせる内容で、解説に説得力がある。

 自律分散型の制御システムは機械工学の世界では当たり前であるが、ヒトの場合「脳」が全てで、脳による集中制御という考えに偏よりすぎていたように思われる。脳がコンピュータ、筋肉がアクチュエータ、感覚受容器がセンサーなどと簡単な構成では語れないものがある。最近は各臓器にも何らかの情報処理機能があると言われだしており、この前見たTVでも心臓移植した人の人格が変わってしまう・・・つまり心臓だけでなくドナーの人格も移植されてしまう(心臓にメモリー機能がある)といった事例が紹介されていたが、脳の2倍の重さの皮膚にもそんなことが起こりうることは当然と思える。

 正統派医学(西洋現代医学)では、内臓、血管、神経、骨、筋肉・・・等は部品として扱われるため、簡単に破壊したり、切除したり、移植したり、人工物で置き換えたりしているが、もし臓器に情報処理機能やメモリー機能があるとしたらどうなのだろうか。東洋医学をはじめとした世界の伝統医学や、現代医学の前期に盛んであり、今でもある意味勢力をもっているホメオパシー医学では心身一元はあたりまえの考えであるのだが、科学的解明が進んでいない現在は未だ異端扱いされているのが残念だ。

 東洋医学の思想としては「皮膚も人体の情報ネットワークの一部を構成する」というのは当たり前の考えであり、経絡、経穴を基盤として、お灸や鍼、その他様々な方法で刺激(入力情報)を身体に加えることにより、痛みを和らげたり、傷の回復を早めたり、臓器の働きを高めたり、免疫力を高めたり、自律神経を調整したり・・・を、当たり前のように行ってるわけであり、接触鍼、散鍼、超浅刺、など皮膚を対象にした鍼法も数多く存在している。ただし、未だ科学的に解明されていない部分が多いのが実情で、そんな効果は眉唾と思っている人も多いのではないかと思う。

 日本の医学の分野では「東洋医学の研究」といっただけで異端者扱いされるようで、それに関連する研究に研究費を出してくれるところは無いらしく、鍼灸の研究分野でも欧米に差をつけられてしまうのは残念である。

<鍼灸マッサージサロン・セラピット>

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