孤高のメス―外科医当麻鉄彦〈第6巻〉 (幻冬舎文庫) | |
大鐘 稔彦 | |
幻冬舎 |
孤高のメス、第6巻を読み終えました。
満足感で満たされるシリーズでした。
脳死間肝移植を成功させた当麻医師。完璧な手術で
患者とドナーの親から感謝され、この上ない成功の時を
迎えてもおかしくない状況であるが、周辺に悪い影響を
出さない為に、極秘で進めたことが、よく思わない連中から
バッシングを浴びる。
合理的に考えると、成功と感謝の気運が高まるべきところであるが
そうで無い苦境の状況に陥る。
日本人が大好きな権威、利害、名誉というものが、成立しないと
成功者を敵視し、純粋な進歩を止める流れに誘導する。
この巻は、そういう人間の浅はかさを描写し、本質的に必要な
命を救う行為を是としない、実際にも起こりそうな現実を如実に
描いている。その向かい風の中、主人公の医師は、最後まで目指す
医療行為と信念にブレがなく、その凜とした姿が己もそうあるべき、
そうありたいと、切に思わせる。
日本で、その功績を認めないという状況とは、相反し合理的に判断し
良いことは、良いこととして認め、どんどん進められる環境にある台湾。
当麻医師の親へ恩を返すため、自分の所へ招聘する王氏。
存分に当麻医師が活躍できる局面が多発しそうな
病院。ここを次の場所として選ぶ当麻医師。
本質的に命救う行為を、数多くこなしてきて
その技量と救命という本来の医者の持つべき
魂を当麻医師を通し表現している。
人が持つ、強さと弱さというものを考えさせられる
良書でしす。