“スーパーの果物売り場はすっかり秋めいてきました。ブドウや梨、桃に交じってイチジクが並ぶようになりました。イチジクといえば私が小学生のとき、同居していた父方の祖母が夕食後に皮をむいてくれ一緒に食べました。見た目は地味ですが、口に広がるあの甘さは今も大好きです。
先日、イチジク十五個を買い求めて職場に持って行きました。二十~三十代の部下にはイチジクをそのまま食べるのが初めてという人もいて、かつての祖母みたいに部下のために皮をむいてあげました。ふんわりとした赤い実を恐る恐る口にした部下は「甘い」「おいしい」と言いながら次々と食べていました。
イチジクは食物繊維やミネラルが豊富に合まれていて、日本では昔から不老長寿になるための果物の一つと言われています。三年前に九十二歳で逝った祖母をしのびつつ、今年も秋の夜長にイチジクを存分に食したいと思っています。”(9月17日付け中日新聞)
名古屋市の会社員・山田さん(男・55)の投稿文です。この「話・話」 で、果物についてもいろいろな投稿を取り上げてきた。そして、ボクの体験を語ってきた。息抜きのような話である。今回はイチジクである。
イチジクはどのくらいの人の口に届いているのだろう。苦手な人も多いのではなかろうか。ボクも子供の頃は苦手であった。あのくちゃくちゃした中身や舌触りもあまり良くなかったと思う。ボクの家は果物など買う家庭ではなかった。と言って、農家でありながら果物の木はほとんどなかった。畑になるところはすべて畑にしていたからである。それでもイチジクはあった。だからイチジクの感触を覚えていたのである。
そして、ボクの時代になった。もう専業農家ではない。畑に果物を次々植えた。今はその畑もかなり減り、果物も減った。今あるのは柿、ミカン、キウイ、ブドウ、レモン、ビワ、そして、イチジクくらいであろうか。今年はよくイチジクは採れている。毎食のように食卓上がる。そのまま食べることもあるし、切り刻んでヨーグルトに入れて食べることもある。今ではボクの好物である。