寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第2715話) 朝令暮改

2018年12月14日 | 活動

 “「教育界から消えます」。五年前、定年退職した際の職員室での私のあいさつだ。小中学校で三十八年間、子ども、保護者、上司、同僚に恵まれ、充実した教員生活を過ごせた。残りの人生をのんびり過ごそうと思い、冒頭の言い回しになったのだ。
 時間に束縛される生活から、自由気ままな生活へと激変した。それが災いしたのだろうか、体調を崩してしまい入院。二度の手術という羽目に陥ってしまった。退院後、散歩コースが近所の小中学校になった。運動場で先生が子どもたちを指導する姿を見て、もう一度あの舞台へ戻りたい、教職に復帰したいと思うようになった。一度は決別した教職ではあったが、精神面でも健康面でも、自分にはかけがえのないものであることを再認識したのだった。
 国の働き方改革のおかげか、非常勤講師として中学校に再就職できた。上司や同僚に温かい声をかけていただきながら四年目に入った。本年度は定年退職した中学に赴任。当時の教え子や保護者から声をかけられるとうれしくてたまらない。復帰してよかったと、心から思う。全身老化の一途ではあるが、あと数年は「教育界から消えたくありません」。たとえ朝令暮改と言われても。”(11月23日付け中日新聞)

 名古屋市の中学校非常勤講師・佐野さん(男・65)の投稿文です。これも一つの生き方と思って紹介した。60歳定年でそのまま仕事から退く。やっとのんびりできる、のんびり過ごそうと思ってが、意外に満足できるものでもなかった。再び教職の仕事にありつく。11月21日の「話・話」第2704話でも同じような話を紹介した。健康寿命80年の時代、50歳、60歳で完全引退は早過ぎるようだ。その次に何をするか、しっかり見据えている人なら良かろうが・・・。それまでに得た知識を生かしながら、仕事の割合を少しずつ減らしていく。減らした分、今までできなかったことに費やしていく。余程好きな仕事なら生涯現役もあろう。この見極めは50代前半から模索する必要がある。ただ考えても、そのようになるかというと、これはまた別物だ。でも、考えねば始まらない。先日エジソンの言葉を知った。「失敗は存在しない。その方法が違うと分かっただけで、それは成功なのだ」。もっともだと思ったが、高齢者にはそぐわない気もする。挑戦はいつまでも必要だ。でも、何度もやり直す時間はない。ここは今までの知識、体験を生かした計画だろう。
 幸いボクの定年後は、描いた過ごし方に近い過ごし方でここまでこれた。いや、上回っているかも知れない。これも挑戦の結果だろうか。問題はこれからだ。


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