a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

Aランクの芝居

2008-04-01 17:35:16 | 東京公演
1960年代なかば、
劇団では『日本の気象』の上演を考えていた。
その当時の作品の著作権者は、
養女のMさんと、
物理学者のT氏だった。
Mさんは上海での事業を成功させ、
ほぼ日本にはいない。
そこでタリさんは、
上演許可をもらいに、
T氏に会いに行った。

初対面だったT氏は、
タリさんにこう言ったという。

「一言一句変えてはならないし、
カットもダメ。・・・
・・・ところで、君たちの劇団は、
A、B、Cの何ランクだい? 」

だいたい、
ノーカットの上演だと4時間を越える芝居。
(今回も4時間弱ですが・・・)
まして、
時代の情勢を描いた作品。
一言一句変えずに上演なんてできるはずがなかった。

そして、
何より腹立たしかったのは、
ランクで人を判断しようということが気に入らなかったらしい。

タリさんは、
「もちろん、 Aランクです」
と答えて帰ってきたらしい。

その結果、
『グスコーブドリの伝記』を書き上げたのは、
皮肉な話だ。
テクノクラートの生き方が問われる作品。
上演を妨げたのがテクノクラートといのも、
重ねて皮肉な感じだ。

それから約40年後の2004年、
T氏はすでに亡くなり、
Mさんから上演が許可された。
タリさんの永年の夢が叶ったのだ。
公演は成功と言えただろう。
Mさんからは次の作品『林檎園日記』の上演が約束された。
これもまたお陰様で好評でした。

久保栄とタリさん。
Mさんの話を聞くと、
二人が生きているうちに出会っていても、
仲良くやれたかなぁ・・・。

いま、 一つの戯曲を通して、
二人の演劇人と出会える。

久保栄が最後の夢を託したとも言える戯曲。
再び権力が人間の可能性を押し潰し始めた時代。
若きテクノクラートたちは、
自らの足で立とうとしていた。
若き日のタリさんが憧れた作品。

Aランクって難しいけど、
自分たちが、Aランクだって言える芝居には、
近づきたいと思っている。

ブレヒトの芝居小屋での上演を終え、
今週末4日から、両国・シアターXでの公演となります。
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