青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

変わらぬ味をいつまでも。

2024年01月10日 22時00分00秒 | 東武鉄道

(ひだまりトレイン大宮行き@東武8111F)

この日一日、夜までは運用が確定している8111F。柏の駅でお出迎えを済ませた後は、撮ろうか乗ろうか逡巡しているうちに、車掌さんが発車の合図を出した。瞬間、脊髄反射で飛び乗った各駅停車の大宮行き。三連休の中日、まだ正月明けの雰囲気が残る朝の電車に冬の陽射しが注ぐ。11年ぶりに営業運転に充当されることも含め、現役復帰にはそれなりのリフォームが必要だったと見え、床張りなんかは新しくなってます。それでも、鋼鉄の塗りドアってのも今となっては珍しいですね・・・とても大手私鉄の令和の風景とは思えないのですが。そもそも、鉄道記念物的に保存されていた車両が11年も経って復帰すること。蒸気機関車とかではあるのかもしれないけど、大手私鉄の通勤電車でそんなことやった事例なんて聞いたことがない。鉄道の長い歴史の中でも、それだけ珍しく異例なことで。

柏を出ると、つくばエクスプレスとの接続駅として躍進目覚ましい流山おおたかの森で大きな乗客の入れ替わり。運河を過ぎて野田市に入ると、野田市駅周辺が一部高架線になっていて驚く。そう言えば昔、清水公園にみんなで我孫子からお花見に来たことがあるなあ・・・なんて思い出したりしながら、電車は江戸川の鉄橋を渡って行く。千葉と埼玉の県境で、電車の中はロングシートに一人、二人程度の閑散とした空気になった。はす向かいの赤ん坊を抱えた若いご夫婦、お父さんがお好きなようで手持ちのスマホで8111Fと我が子をパチリ、パチリ。こんな濃いいデンシャに乗せられて記念撮影なんて、親の溢れる思いを受け継ぐ赤ちゃんが今後どういう風に育つのだろうか。同じ鉄道好きな息子を持つ親として微笑ましく思う。

柏から40分、伊勢崎線との接続駅である春日部駅に到着。ここで大宮行きの電車は運転間隔の調整で10分弱の小休止。春日部と言えば言わずと知れた「クレヨンしんちゃん」の街ですよね・・・発車ベルに使われているクレヨンしんちゃんのテーマソングがホームに響く。東武アーバンパークラインとスカイツリーラインの接続駅なのだが、何のこたあない、伊勢崎線と野田線の駅である。伊勢崎線と野田線を合わせて3面6線に副本線や側線が多数。東武の中でも大きな敷地を持つ重要な拠点駅ですが、最近になって高架化工事が始まっている。この3面6線を高架に引き上げるというのだから相当な大工事だ。総事業費に650億円を投下し、伊勢崎線・野田線含めて駅の前後を含めた一帯を高架化。10ヶ所の踏切の解消による街の一体化を図るそうです。完成は2031年とのこと。

さて、春日部の野田線ホームと言えば、多くの東武ファンが愛してやまない「東武らーめん」。あっさり醤油スープに細打ちの縮れ麺。巻きバラの薄いチャーシューとナルトにメンマ、青味代わりのネギとワカメ。いかにもシンプルな東京の醤油ラーメンといういでたちは、長年の野田線ユーザーのお腹を満たしています。この日も午前中からお客さんが引きも切らずラーメンを啜っていたのだけど、私もここのラーメンの隠れファン。ちなみに、同じ「東武らーめん」は西新井にもあるんだけど、西新井は同じ醤油スープでも中太麺に脂気の少な目のモモチャーシューとゆで卵が乗っていたりして微妙にデザインが違う。個人的に、食べた感じの「中華そば」感が好きで春日部を贔屓にしているのだけど、まあ、ここら辺は好みの問題かなと。春日部の東武ラーメン、ホームが高架になっても残るのかどうか、そこが心配だったりする。変に高架下のイートインみたいに小洒落た感じに化けてほしくないんですよねえ。正直、ここより美味い醤油ラーメンのお店なんて、探せばいくらだってあると思うんだけど、そうじゃねえんだよなあ。ホームの真ん中で風に吹かれながら、迫る電車の時間の合間にズスズスッと掻き込むことに美味さがあるのであって・・・


すっきりシンプルな醤油スープに、細めの縮れ麺。飾り気のない、いたって普通の佇まい。変わらぬ電車と、変わらぬ味をいつまでも。

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