青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

輸送力列車は、地方私鉄の輝き。

2023年10月01日 10時00分00秒 | 一畑電車

(地方発・高規格の無料道路@大田・朝山道路)

泉薬湯で朝湯を使い、荷物をまとめて短かった温泉津の一夜を辞す。本当であれば、温泉津温泉繁栄の礎ともなった石見銀山の観光だったり、それこそ足を延ばして三瓶山や有福温泉なんかにも行ってみたかったのだけど、ひとまずあれこれやろうとすると焦点がボケるので一畑電車の沿線へ戻ることに。行きは国道9号線をのんびりと走って来ましたが、戻りは山陰道の無料区間として開放されている仁摩・温泉津道路と大田・朝山道路を使ってみました。リアス式海岸の入江に続く漁港集落を丹念に回る山陰本線や国道9号線と違い、海岸線から離れた山間部を長大トンネルと高架橋でスイスイと越えて行く地方高規格道路。地方にこんな立派な道が必要なのか・・・という議論はさておき、鉄道側の視点から見ればこれだけのインフラを無料で提供されたらそりゃ鉄道なんか誰も乗らないよね、と恨み節の一つも出そう。この土木技術に投じられた資金の何割かでも鉄道振興に向けられたら・・・と考えてはいけないものでしょうか。鉄道が投資に見合うだけの将来性のないインフラだというなら、そうなのかもしれませんが。

さて、今日は月曜日の平日。地方私鉄を巡るにあたっての鉄則は、「運用数ピークで車庫総ざらえになる平日の朝ラッシュを撮らなきゃ意味ないっすよ!」というのは、このブログをご覧の数少ない皆様においては十分にご認識いただいているところとは存じますが(笑)、そんな一畑電車の平日の朝ラッシュらしい列車を撮りに、美談のストレートへ。一畑電車の線路沿いで、朝方の光線を東側から受け止める撮影地と言えばこの辺りなのかなと。ちょうど順光側に架線柱がないのもポイント高し。まずは小手調べの5000系電鉄出雲市行き、後追いですが。

そして本命は、平日の朝に一本だけ運行される電鉄出雲市発松江しんじ湖温泉行きの「特急スーパーライナー」。電鉄出雲市から大津町・川跡・雲州平田・布崎・一畑口・津ノ森・秋鹿町・松江イングリッシュガーデン前に停車し、松江しんじ湖温泉まで45分。普通電車だと1時間10分くらいかかりますので、「特急」の名を冠するに相応しいスピードがあります。松江口の通勤通学輸送のピークタイムに走る列車なので、5000系の2連×2=4連運行が基本だったのですが・・・綿密に4連サイズの構図を組んで待ち構えたのに、やって来たのは新型電車7000系の2連。あれ?という感じの肩透かし。夏休み期間中は学生が少ないから、編成もスリム化してるということなのかな?いや、7000系の2連もコンパクトでカッコいいですけど、地方私鉄の輸送力列車、4連が撮りたかったなあ・・・後で聞いたら、どうやら前回のダイヤ改正以降スーパーライナーは2両に減車されちゃったんだって。コロナ禍と利用者減と諸々の理由なんだろうけど、地方私鉄の苦悩は続く。

失意のままの場面転換。武志から大津町にかけての田園区間。出雲市内の県道は朝のラッシュの真っただ中で、各々職場に向かう車の列は引きも切らず。一面の青い穂波の向こう、遠く山並みを望むすっきりとしたロケーション。8月のお盆過ぎとはいえ平日の朝、バタデンの沿線でカメラを構えているもの好きなどいない暑い暑い朝だったのだが、今頃は黄金色の絨毯となっているのであろうか。

立久恵の山並みをバックに、電鉄出雲市から折り返してきた5000系。そういえば、一畑電車にも出雲市から南の立久恵峡に向かう立久恵線って路線があったんですよね。昭和39年に出雲豪雨で路盤が流出し敢え無く廃線となってしまったのだけど、 元々は「大社宮島鉄道(出雲大社と安芸の宮島を結ぶ意)」という壮大な陰陽連絡を目論んだという夢のある路線だったそうで。

「あー、あの山の向こうに一畑電車の支線がまだあったんだよなあ」なんて思いながら、カメラのシャッターを捌く。立久恵線、さすがに写真でも残っているのを見る機会はめったになくて。国鉄から払い下げられた客車に無理やりエンジンをくっつけたような、貧相な気動車での運転だったらしいけど。

コメント
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