先日、王子の流通センターの見学会に行ってきた。版元ドットコムの勉強会。
昨年改修工事が終わったとき、出版社っぽい人がいっぱい詰めかけていたことがあって、警備のおじさんにきいたらお披露目会とのことだった。呼んでもらえなくて悔しかったが、呼ばれなかったことはどうでもよくて、本当に中が見たかったのである。なので今回の勉強会は、何はさておき…という感じで参加した。
普段は、本を納品する受品口(2階)と、納品伝票を買う事務所みたいなところ(2階)と、奥のトイレとそこまでの通路(2階)と、おみくじ封筒を渡すところ(3階)と、そこまで行くとき通過する棚エリアと廊下(3階)くらいしか知らない。他の出版社の人から取次在庫とやらのことを聞いたことがあるが、行ったことはない。
以前、日販コンピュータだったかのセミナーに行ったことがある。売りたいシステムの説明が第一部で、第二部が王子の説明だった。開催者の思惑は逆だと思うが、私にとってシステムの部分はまあおつきあいであった。今回の見学会は、そのセミナーのとき観たのと同じビデオを観て、MS2とかいろんなエリアを歩いて見学、その後質疑応答だった。
もらったパンフレットに、「先進的な物流システムを導入し、正確で迅速な送品体制を構築」とある。確かに「オートメーション化できるとこはしました!」みたいな物流システムだった。どっちがより先進的なのかは知らないが、桶川のビデオで観たのと同じくらい先進っぽかった。
あれこれ口を挟みながら熱心に見入ってしまったが、うちは物流業者ではない。細かい工夫と投資については「ああ、そうですか、ありがとう」としか言いようがない。
つくづく感じたのは、イレギュラーはダメだということである。
例えば客注品。書店から出版社へ直接来た注文の本の情報を入力する、データインという工程がある。挟まれた短冊を見てタイトルや番線などを入力するんだと思うが、これは日販にとってはイレギュラーな工程なのである。客注品でも、VANを経由した注文情報はその時点で日販のシステムに入るし、前もって情報を日販に送っておく仕組みもあるようだ。が、黙って持っていった本は、納品後に「データイン」してもらわなければならない。
MS2にしても、本が1冊ずつ書店ごとの箱まですべて自動で移動していくわけだが、手書き短冊は基本的に捨てられるようだし、複数注文で束ねてあるものも一旦バラバラになる。「5冊も注文もらったから送ろう」と本と一緒に包んだPOPも、おそらく捨てられるか、5冊のうちの1冊に挟まれて「店員には気づかれない」ということになる。手書き短冊には常にお礼のメッセージを書いているが、書店には届いていなかったのである。(とはいえ、データ入力してくれる日販の人にも礼は言うべきで、そういう意味では無駄ではない。)
一括注文やセットは大口検品という工程に回るそうで、確かに採用品とか新規出店は納品場所も違う。(いや、場所が違うわけじゃないんだが、いつものABCDのコンテナじゃなくて別のパレットの上に置く。)ただ、それは30冊以上の本当の大口のための工程で、5冊とか10冊だといつものコンテナに入り、データイン段階でばらされる。
私は本まで書いてしまって、「出版のことがよくわかりました」なんて感想をもらうこともある。が、改めて「いやいや、違いますよ、私がしてるのはイレギュラー出版ですよ」と言いたい。ほとんどの出版社は、あの物流システムに合う・・・、というか、あの物流システムはほとんどの出版社と書店に合うように作られている。
ただ、よく考えてみたら、バイト先の書店は日販帳合じゃないし注文方法も電話だし、ここで言う「ほとんどの」出版流通とは別のところで商売をしている。他の書店も、それぞれ独自のやり方ってものを持っているに違いない。出版社だって、あの受品口のABCDコンテナに入れているのも、五軒町や文京に持っていってるのも、私だけじゃない。
もちろん、効率や「迅速な送品」のためにできることはしたいと思う。でもそれが、「うちがやったら潰れる」ようなことだったら、諦めるしかないと思う。物流倉庫に委託するとか桶川に持っていくなんてのは、今は無理だ。そうじゃなくて、私でもできることをしたい。
とりあえず考えられるのは、書店さんから納品日をきかれたとき、ちょっとサバを読んでおく(実際より遅めの日にちを言っておく)なんてことだろうか? でも、そのへんのシビアさも、店員さんによって違うしな~。かといって、決まりきったやり取り以外のことを電話で話すのも、通信料は向こう持ちだから考えてしまう。
結論。しょうがないんじゃないでしょうか。
どの業界にもメジャーとマイナーってのはあるし、それぞれ解決策を探っていけばいいと思う。この業界は、やたら「業界の・・・」みたいな話が多いけど、業界のために本を作ってるわけではないので。
昨年改修工事が終わったとき、出版社っぽい人がいっぱい詰めかけていたことがあって、警備のおじさんにきいたらお披露目会とのことだった。呼んでもらえなくて悔しかったが、呼ばれなかったことはどうでもよくて、本当に中が見たかったのである。なので今回の勉強会は、何はさておき…という感じで参加した。
普段は、本を納品する受品口(2階)と、納品伝票を買う事務所みたいなところ(2階)と、奥のトイレとそこまでの通路(2階)と、おみくじ封筒を渡すところ(3階)と、そこまで行くとき通過する棚エリアと廊下(3階)くらいしか知らない。他の出版社の人から取次在庫とやらのことを聞いたことがあるが、行ったことはない。
以前、日販コンピュータだったかのセミナーに行ったことがある。売りたいシステムの説明が第一部で、第二部が王子の説明だった。開催者の思惑は逆だと思うが、私にとってシステムの部分はまあおつきあいであった。今回の見学会は、そのセミナーのとき観たのと同じビデオを観て、MS2とかいろんなエリアを歩いて見学、その後質疑応答だった。
もらったパンフレットに、「先進的な物流システムを導入し、正確で迅速な送品体制を構築」とある。確かに「オートメーション化できるとこはしました!」みたいな物流システムだった。どっちがより先進的なのかは知らないが、桶川のビデオで観たのと同じくらい先進っぽかった。
あれこれ口を挟みながら熱心に見入ってしまったが、うちは物流業者ではない。細かい工夫と投資については「ああ、そうですか、ありがとう」としか言いようがない。
つくづく感じたのは、イレギュラーはダメだということである。
例えば客注品。書店から出版社へ直接来た注文の本の情報を入力する、データインという工程がある。挟まれた短冊を見てタイトルや番線などを入力するんだと思うが、これは日販にとってはイレギュラーな工程なのである。客注品でも、VANを経由した注文情報はその時点で日販のシステムに入るし、前もって情報を日販に送っておく仕組みもあるようだ。が、黙って持っていった本は、納品後に「データイン」してもらわなければならない。
MS2にしても、本が1冊ずつ書店ごとの箱まですべて自動で移動していくわけだが、手書き短冊は基本的に捨てられるようだし、複数注文で束ねてあるものも一旦バラバラになる。「5冊も注文もらったから送ろう」と本と一緒に包んだPOPも、おそらく捨てられるか、5冊のうちの1冊に挟まれて「店員には気づかれない」ということになる。手書き短冊には常にお礼のメッセージを書いているが、書店には届いていなかったのである。(とはいえ、データ入力してくれる日販の人にも礼は言うべきで、そういう意味では無駄ではない。)
一括注文やセットは大口検品という工程に回るそうで、確かに採用品とか新規出店は納品場所も違う。(いや、場所が違うわけじゃないんだが、いつものABCDのコンテナじゃなくて別のパレットの上に置く。)ただ、それは30冊以上の本当の大口のための工程で、5冊とか10冊だといつものコンテナに入り、データイン段階でばらされる。
私は本まで書いてしまって、「出版のことがよくわかりました」なんて感想をもらうこともある。が、改めて「いやいや、違いますよ、私がしてるのはイレギュラー出版ですよ」と言いたい。ほとんどの出版社は、あの物流システムに合う・・・、というか、あの物流システムはほとんどの出版社と書店に合うように作られている。
ただ、よく考えてみたら、バイト先の書店は日販帳合じゃないし注文方法も電話だし、ここで言う「ほとんどの」出版流通とは別のところで商売をしている。他の書店も、それぞれ独自のやり方ってものを持っているに違いない。出版社だって、あの受品口のABCDコンテナに入れているのも、五軒町や文京に持っていってるのも、私だけじゃない。
もちろん、効率や「迅速な送品」のためにできることはしたいと思う。でもそれが、「うちがやったら潰れる」ようなことだったら、諦めるしかないと思う。物流倉庫に委託するとか桶川に持っていくなんてのは、今は無理だ。そうじゃなくて、私でもできることをしたい。
とりあえず考えられるのは、書店さんから納品日をきかれたとき、ちょっとサバを読んでおく(実際より遅めの日にちを言っておく)なんてことだろうか? でも、そのへんのシビアさも、店員さんによって違うしな~。かといって、決まりきったやり取り以外のことを電話で話すのも、通信料は向こう持ちだから考えてしまう。
結論。しょうがないんじゃないでしょうか。
どの業界にもメジャーとマイナーってのはあるし、それぞれ解決策を探っていけばいいと思う。この業界は、やたら「業界の・・・」みたいな話が多いけど、業界のために本を作ってるわけではないので。
今回のブログを興味深く読ませていただきました。
私達が書いた手書きの短冊や納品の際に一緒に包んだ
注文書(番線をいただいた)やポップも、書店スタッフの方々の目にはふれていないのですね。なんとなく気付いていましたが・・・
>この業界は、やたら「業界の・・・」みたいな話が多いけど、業界のために本を作ってるわけではないので。
同感です。業界ズレしていない我々のような(我々とくくってしまいました。すいません)ものが、この仕事を変えていけるのかなと思っていますが。
これからも興味深く読ませていただきます。
きっと日販さんの中でも、細かいことは従業員によって違うのではないかと想像します。POPなどは、そのうえで「無駄になるかもしれないけど・・・」、「無駄になってもしょうがない」という気持ちがあります。
すみません。わたしは、自分が業界を変えていけるとは思ってないのです。なんというか、業界の言う発展(私が思うに、「息をつく」程度)のためには、イレギュラーは足引っ張ってるなと思うのです。でも、個人的に斜陽産業だと思っていますので、その中で業界云々とは別にキラリとできたらなと思っています。