MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ある男』

2022-12-08 00:59:08 | goo映画レビュー

原題:『ある男』
監督:石川慶
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
出演:妻夫木聡/安藤サクラ/窪田正孝/清野菜名/眞島秀和/小籔千豊/河合優実/仲野太賀/真木よう子/柄本明
2022年/日本

「複製禁止」の意義について

 本作の冒頭とラストで映し出される絵画はベルギーの画家のルネ・マグリット(René Magritte)の『複製禁止』である。


(『複製禁止(La reproduction interdite)』 1937年)

 本作が問題としているのは主人公で弁護士の城戸章良が自身が在日三世であることを気にして、窓ガラスに自分の顔が映ると酷く気になるということと、キーパーソンとなる「谷口大祐」が自分の父親が殺人者でそんな父親に似ている自分の顔が窓ガラスに映ると怯えるほどで、つまり二人は自分の顔が映らないマグリットの絵画が「理想」なのである。
 ところが『複製禁止』とは裏腹に城戸には香織との間に幼い息子がおり、「谷口大祐」にも里枝との間に花という4歳の娘がいるのである。自分の出自に嫌悪感を持つ者が何の葛藤もなく子供を持つだろうかという素朴な疑問は残る。
 2019年2月に城戸に捜査の依頼をしたのはもちろん妻の里枝で、夫が「谷口大祐」でなかったと知った時に、「私はいったい、誰の人生と一緒に生きてたんでしょうね」と吐露するのであるが、それならば何故5年ほどの結婚生活の中で「谷口大祐」の実家を一度も訪れなかったのかという疑問も残る。そもそも里枝は「谷口大祐」の過去などどうでもよく今の「谷口大祐」を愛していたはずだからである。
 それならばせめてサスペンス的な要素があれば良いのであるが、「谷口大祐」たちの戸籍交換を巡る駆け引きが描かれているわけでもなく、原作は未読なのだが、とにかく雰囲気だけは醸し出すものの頭だけでプロットを練っただけで作者が本当に当事者の気持ちを理解できているのかどうか怪しいと思うが、相変わらず安藤サクラと窪田正孝の演技の上手さで観賞には耐えられる作品ではある。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-142999


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