MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『六月燈の三姉妹』

2014-06-02 22:07:15 | goo映画レビュー

原題:『六月燈の三姉妹』
監督:佐々部清
脚本:水谷龍二
撮影:坂江正明
出演:吹石一恵/吉田羊/徳永えり/津田寛治/市毛良枝/西田聖志郎/井上順/沢村一樹
2013年/日本

松竹が関わらない「松竹大船調」作品について

 旧暦の6月に鹿児島県と宮崎県の一部の神社や寺院において行われているお祭り「六月燈」がフューチャーされていても、本作はあくまでも燈よりも風鈴にこだわっており、例えば、主人公の平川奈美江の夫で、離婚を回避しようと実の母親のことで兄弟と話し合いに回っている平川徹が、兄や姉との話し合いが不調に終わり、実家に帰省している奈美江の元に戻ってきた際に、汗だくの顔を汚れたハンカチで拭こうしていた徹を見かねて、奈美江がタオルを取りに行き、一人取り残された徹が庭の縁側に座った後に、風に吹かれた風鈴が鳴るシーンや、ラストに映し出される写真においても、わざわざ風鈴のアップの映像が挿入されているのだから、風鈴に対する演出のこだわりは想像に難くない。
 5月30日の毎日新聞夕刊の6面において「六月燈の三姉妹」を「六月燈の姉妹」と紹介されるほど注目されていない作品であるが、古き良き「松竹大船調」を想起させる佳作であり、女優、吹石一恵の美しさが十分に堪能できる彼女の代表作と見なされるはずで、水谷龍二の脚本が素晴らしいことは言うまでもないが、個人的には佐々部清監督が手掛けた作品として初めて感心した。どうして「やさしい悪魔」が「暑中お見舞い申し上げます」に変わったのかなどの些末なことはどうでもいいと思う。ラストの奈美江の言葉は栄が開発した新製品に対するのみならず、自身の夫に対する態度にも当てはまるものであろう。


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