MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ハッチング - 孵化 -』

2022-04-21 00:56:11 | goo映画レビュー

原題:『Pahanhautoja』 英題:『Hatching』
監督:ハンナ・ベルイホルム
脚本:イリヤ・ラウツィ
撮影:ジャルッコ・T・ライネ
出演:シーリ・ソラリンナ/ソフィア・ヘイッキラ/ヤニ・ヴォラネン/レイノ・ノルディン
2022年/フィンランド

母親が忘れがちの思春期について

 『TITANE/チタン』(ジュリア・デュクルノー監督 2021年)が娘と父親の葛藤が描かれているとするならば、本作は娘と母親の葛藤が描かれていると言っていいと思う。
 フィンランドに住む12歳のティンヤの母親の母親は「素敵な毎日」というタイトルのブログで毎日家族を撮った映像をSNSにアップしていおり、明らかに自己顕示欲が高く、母親ほどティンヤと父親と息子のマティアスも積極的ではなく、むしろ母親の機嫌が悪くならないように気を使っている感じである。
 だから「素敵な毎日」を邪魔するように家に入って来たカラスは容赦なく首をへし折り、逆に毎日をより素敵にしてくれるテロというボーイフレンドとの交際は黙認されるのである。もちろん母親が「素敵な毎日」を送れるようにティンヤも新体操の練習を怠ることはできず、かつて自身が脚の怪我で挫折したこともあって時に母親はコーチよりもティンヤに厳しく指導するのである。
 しかし子供が思春期には親に対して秘密を持つことは自然なことで、母親の目が届かない部分ができることを母親は忘れている。それがティンヤが隠し持っていた卵で、やがて孵化すると「アッリ(=水鳥)」と呼ぶようになる怪鳥を飼うことになる。
 育つにつれて怪鳥はティンヤに似てきて、それはティンヤが隠している負の部分を引き受けているように見え、それでティンヤは「正常」を保っていられたのであるものの、最終的に母親は「正常」のティンヤを自ら殺してしまうことになり、母親と娘の「似た者同士」が残るというアイロニーは効いている。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-133134


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする