MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『蜩ノ記』

2014-11-05 00:16:44 | goo映画レビュー

原題:『蜩ノ記』
監督:小泉堯史
脚本:小泉堯史/古田求
撮影:上田正治/北澤弘之
出演:役所広司/岡田准一/堀北真希/青木崇高/串田和美/原田美枝子/井川比佐志
2014年/日本

「テキスト」を巡る物語について

 主人公の檀野庄三郎が隣席の水上信吾と刃傷沙汰を起こしてしまった原因は、手紙をしたためていた際に、突風で筆先についていた墨汁が飛び散ったためだった。その後、切腹を免れる代わりに庄三郎が命じられた仕事は、藩主である三浦家の家譜を編纂し完成させるよう命じられている郡奉行の戸田秋谷の監視だった。
 「蜩ノ記」と名づけられた日記なども加わる「テキスト」を巡る物語で、もう一人の主人公である戸田秋谷を役所広司が演じているのであるならば、当然のことながら「記録」に関する物語である『どら平太』(市川崑監督 2000年)のような展開を期待して観ていたのであるが、「テキスト」を巡りはするものの、最後まで「テキスト」そのものを深く考察することがないために、戸田秋谷はお上に逆らえないまま「犬死」に甘んじてしまうのは余りにも悲しすぎるというよりも、芸がなさすぎる。本作の小泉堯史監督は黒澤明監督のみならず市川崑監督とも師弟関係の間柄だっただけに、師匠の作品の「表面」しかなぞれなかったことを残念に思う次第である。


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