MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ふしぎな岬の物語』

2014-11-07 00:44:16 | goo映画レビュー

原題:『ふしぎな岬の物語』
監督:成島出
脚本:加藤正人/安倍照雄
撮影:長沼六男
出演:吉永小百合/阿部寛/竹内結子/笑福亭鶴瓶/笹野高史/小池栄子
2014年/日本

本当に「危険」な人物について

 作品の冒頭は主人公の「岬カフェ」の店主の柏木悦子の夫が岬から見える景色を描いているシーンから始まるのであるが、間もなくそれは悦子の幻想であることが分かる。近所には彼女の亡くなった姉の息子の45歳になる浩司がバラック小屋を建てて住んでおり、発達障害の気があるのか思い込みが激しく喧嘩っ早い。浩司だけではなく、「岬カフェ」の常連客たちはみんな変わっており、柴本孝夫はようやく結婚できて盛大に披露宴を行ったものの、恵利は臭いに耐えられないというだけで翌日に実家に帰ってしまう。あるいは竜崎徳三郎の娘のみどりのように久しぶりに岬に戻ってきた者もいるが、それは親の反対を押し切って駆け落ちしたにも関わらず、失敗して戻って来たのである。間もなく徳三郎は癌を患い帰らぬ人となり、不動産屋のタニさんは事実上の左遷により岬から離れてしまい、突然悦子の店に現れた大沢克彦と彼の娘は、悦子の夫が残した虹のある岬の景色の油絵を持って行ってしまう。このような不思議な人たちに囲まれていた悦子であったが、そのようなおかしな人たちがいなくなってくると、自分の存在自体に疑問を感じだし、店内で発生した火災を消さないまま放置するという行為に至る。実は精神的に一番危うい人物は悦子本人だったのである。
 ラストシーンは悦子が浩司とみどりと共にボートで湧き水を汲みに行くのであるが、これは吉永小百合主演の前作『北のカナリアたち』(阪本順治監督 2012年)と同様に本当の子供ではない子供たちに囲まれるという設定で、実子がいない吉永の願望が反映されているように思う。


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