原題:『日本沈没(Sinking of Japan)』
監督:樋口真嗣
脚本:加藤正人/成島出
撮影:河津太郎
出演:草なぎ剛/柴咲コウ/及川光博/豊川悦司/佐藤江梨子/福田麻由子/加藤武
2006年/日本
日本のヒーローの「純愛志向」について
「3.11」を経験した後に、改めて本作を観ると原発事故に関する描写が全く無いことに違和感を感じるのであるが、それは脚本の問題以前に、TBSなどが電力会社に配慮したように思えてくる。逆に言うならば、原発事故を描いていたならば、その先見性が改めて評価されていたであろう。
ところでもう一つ興味深い点を指摘しておきたい。「N2爆薬」を海底に運ぶ決死のミッションを担う決心をした小野寺俊夫が阿部玲子との別れ際に、玲子から「抱いて」と求められるのであるが、小野寺は再会を約束して何もせずに発ってしまう。それはまるで『風立ちぬ』(若杉光夫監督 1976年)において、山口百恵が演じる水沢節子が、出征する、三浦友和が演じる結城達郎に向かって「抱いて」と求めるものの、結城は再会を約束して何もせずに戦地に向かうシーンとそっくりである。この純愛志向、あるいは禁欲主義が世紀をまたいで30年経っても変わらないところが日本のヒーロー像を面白くしているとは思えないのであるが。