原題:『Trance』
監督:ダニー・ボイル
脚本:ジョー・アヒアナ/ジョン・ホッジ
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
出演:ジェームズ・マカヴォイ/ロザリオ・ドーソン/ヴァンサン・カッセル
2013年/イギリス
「トランス」出来ない程大きすぎる代償について
本作はゴヤの傑作「魔女たちの飛翔(Vuelo de brujas/Witches' Flight)」を巡って起こる窃盗事件をテーマにしたものである。主人公のサイモン・ニュートンとフランクを首謀者としたネイトとリズとドミニクの窃盗団と催眠療法士のエリザベス・ラムを合わせれば、「魔女たちの飛翔」で描かれている人物と同じ人数になる。
ストーリーを勘案するならば、白いマントを被っている人物がサイモンであり、耳を塞いでいる人物がフランクとなり、抱えられている人物が実はエリザベスで、‘魔女’のつもりが実は操られている人物たちが残りのギャングのメンバーと邪推は出来る。
このような巧妙なストーリーの書き換えは悪くはないものの、どうしても納得出来ない展開は、フランクが乗っていたクルマもろとも焼却してしまおうとするサイモンを止めるために、エリザベスがクルマで突っ込んで行き、フランクの乗っていたクルマとサイモンは海に投げ出されるのであるが、次のシーンはフランクがプールの水面から顔を上げるところで、どうやらサイモンは死んだことになっている。しかしサイモンと再会した際に涙を流していたエリザベスが、サイモンの命を犠牲にしてまでゴヤの絵画を奪おうと試みる心情が異常に見えてしまい、そんなに悪い女だったのかと後味の悪さが残るのである。確かにゴヤの絵画も不気味なのだからエリザベスのキャラクターと一致しているとも言えなくもないのであるが、演出において上手く処理しきれていないように感じる。