原題:『陽だまりの彼女』
監督:三木孝浩
脚本:菅野友恵/向井康介
撮影:板倉陽子
出演:松本潤/上野樹里/玉山鉄二/大倉孝二/谷村美月/菅田将暉/夏木マリ
2013年/日本
上野樹里の「明るさ」について
事前に何も情報を得ることなく本作は観られるべきであろうから、レビューとしては主人公の渡来真緒の愛聴盤が1966年にリリースされたザ・ビーチ・ボーイズの傑作アルバム『‘ペット’・サウンズ』ということだけは指摘しておきたい。
『幸福のスイッチ』(安田真奈監督 2006年)や『奈緒子』(古厩智之監督 2008年)などを観て気になることは主人公を演じている上野樹里の「暗さ」であるが、それは役柄という以上に上野がもともと備えている資質のように感じる。だから上野がどのようにして明るいキャラクターを演じることが出来るのかという問題は陰ながら存在していて、『キラー・ヴァージンロード』(岸谷五朗監督 2009年)のようなコメディーはその点でもチャレンジだったと思う。個人的には既に書いたように失敗作だとは思わないが、やはり上野の明るさの引き出しに成功した作品は『のだめカンタービレ 最終楽章』(武内英樹監督/川村泰祐監督 2009年/2010年)であろう。それは上野が明るくなったという意味ではなく、誤解を恐れずに言うならば、上野が演じた野田恵が、一度聴いた曲は楽譜無しでも弾きこなしてしまうという「サヴァン症候群」のような症状を見せるからである。その通常のコミュニケーションの困難さを克服しようとする身振りが上野の「暗さ」を「明るさ」に変えているように見えるのであり、それは本作にも当てはまると思われる。