原題:『Genèse d'un repas』
監督:リュック・ムレ
撮影:リシャール・コパン/ギー=パトリック・サンデリッシャン
出演:リュック・ムレ/クリスティーヌ・エベル
1979年/フランス
「Pêcheur de France」の意味の変容
ストーリーの発端は、あるカップルが毎朝のように食しているツナやバナナやオムレツ(卵)がどこで生産されているのかと疑問に思ったところからである。「Pêcheur de France(フランスの漁師)」と書かれているツナ缶には南フランス人風の笑顔の漁師の顔が描かれているが、生産地はコートジボワールなどのアフリカで、何故かイメージが操作されているのである。調べてみるとバナナもエクアドル産であり卵もセネガル産で、自国の生産物ではなかったことで、実際にリュック・ムレは現地を取材してこのドキュメンタリー映画を撮ることになる。確かに現地の人々を低賃金で雇うことで発展途上国を搾取していることが明るみにされるのであるが、例えば、インタビューを頼む際に、謝礼としてフランスでは120フランを払っているが、現地では50フランしか払わないなど、低予算で制作しているとはいえ、やがて自分たちも映画制作において現地の人々から‘搾取’していることには変わらないという制度の問題が明るみになり、「Pêcheur de France」は「フランスの罪人」という意味を帯びることになるのである。
日本製のツナ缶に「GEISHA」と書かれていたことが印象的だったが、果たしてリュック・ムレ監督はこの‘ギャグ’を理解して撮ったのであろうか?